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映画『パリ13区』
ジャック・オディアール『パリ13区』(2021、フランス、105分)
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『パリ13区』試写会
4/22(金)〜公開の『パリ13区』、試写会に応募したら当選しました。
ジャック・オディアール監督の作品群は気になっていたものの、今回が初鑑賞。
ほとんどがモノクロの映像。だけど今のモノクロって、『べルファスト』や『エルプラネタ』でも感じたけど本当に綺麗。
終映後はトークショーがあり、なるほどそこまで映画オタクではない人たちは恋愛ものとして観るのか、と逆に新鮮だった。
舞台と登場人物たち
題名となっているパリ13区は、高層マンションが建ち並ぶ地区であり、中華街でも知られるとのこと。
冒頭のゆったりとした俯瞰撮影から、街そのものへの愛着を感じ取った。
主な登場人物は3人。
コールセンターで働く台湾系フランス人。
高校教師を一旦離職して、上級資格を目指すアフリカ系フランス人。
そして、10年以上不動産業界で働いた後、大学へ復学を果たした女性。
この辺りの設定は、人種やジェンダーを分け隔てなく描こうとする視点がある。
共同脚本を、『燃ゆる女の肖像』監督・脚本のセリーヌ・シアマと、さらに一世代若いレア・ミシウスが手がけていることで、安心感というか信頼感があった。
そして、それぞれがまだ若い大人として、職や立場を変わりながら模索を続けていく。
そのことも含め、彼女たちの関係が深くなったり、すれ違っていく様を捉える。
2020年代を生きる、若い大人たち
原作はアメリカ発のグラフィック・ノヴェルで、3つの短編を取り入れたようだ。
目を凝らせば接合部分が見えなくもないが、出会いを緩やかに繋げることで不自然さはなかった。
そもそも、スマートフォンや映像通話などの、2020年代的な人との繋がりが緩くて薄いからこそ、自然に見えたのかもしれない。
出会い系アプリの即席さや、あっという間に画像が拡散されるSNSいじめなど、冷ややかな目線もあった。
私自身がそういった便利なツールの負の側面を強く意識しているから、そう思うのかもしれないが。
一方で、それらとは対照的にも映る、突発的かつ直接的な性愛関係がある。
R18指定にするほど過激ではないと思ったけれど、身体のコミュニケーションも隠さずにしっかりと描写している。
人物造形をもう一歩先まで深く、真剣さゆえにどこか滑稽にすら映るところまで描いている。
開けっ広げで、性に対しても奔放でありながら、認知症が進む祖母には悲しすぎて会いに行けなくなる。
夢を追う妹を軽くあしらってしまったことで、自らの身勝手さに気づき始め、母が亡くなり押し殺していた感情が止められなくなる。
自分の容姿や肉体関係に違和感を持ちながら、心を開ける相手は全く別の人だったりする。
そして、その画面の向こうのポルノ女優は、演じていた人格を脱ぎ捨てるとき、驚くほど柔和で優しい表情を見せる。
恋愛映画として消費するだけではもったいない、複数の読み方ができる意欲溢れる一本。