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映画『ハッチングー孵化ー』
ハンナ・ベルイホルム『ハッチングー孵化ー』(2022、フィンランド 、91分)
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恐ろしき寓話
フィンランドの女性監督が描き切った恐ろしい寓話。
超現実的な出来事は、比喩として読み解くなら、おそらく観た人の多くは大体同じ解釈に落ち着くと思う。
その例え話をどう受け取るかは、人によってかなり異なってくるだろうけれど。
期待し合う母と娘の関係
筋書きや展開を細かく書いてしまうと、せっかくの楽しみや驚きを減らしてしまうような気がして、そこは自重したい。
公式サイトやチラシでも、その点を十分に配慮していることが鑑賞後にはっきりと分かる。
思わせぶりに触れるよりは、前知識なく臨んだ方が、より楽しめる種類の作品かとも思う。
主題としては家族、特に親と子の関係。
この場合、母と娘である。
ここでの二人は、お互いに最も大切な人として、愛を求め合う。
しかし、それはただの自分勝手な期待だろう、とだけ記しておく。
家族、と一口に言っても様々な関係性があると思うが、必ずしも幸せなものだけではないだろう。
当たり前だが生まれてきた以上は全員に親がいるわけで、その意味で誰にとっても「痛い」映画だと思う。
少なくとも私にとってはそうだった。
ホラー映画の手法で語られる御伽噺
演出面では、やはりホラー/恐怖映画の方法に乗っ取ったところが特徴だろう。
そういった「サーヴィス」の数々は好き嫌いあるだろうが、CGに頼らず、造形や特殊メイクで見せる選択をしたそうだ。
最初は稚拙か?とも感じたが、対比させるために意図的にそうしていたのかも、と途中から思い始めていた。
12歳の少女が抱える鬱屈とし抑圧された感情を、卵とそこから生まれてくるものに体現させる。
ここに集中し貫徹したことで、1時間半に凝縮された、見たくない側面をも突きつける御伽噺が誕生した。