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映画『メイド・イン・バングラデシュ』

ルバイヤット・ホセイン『メイド・イン・バングラデシュ』(2019、フランス・バングラデシュ・デンマーク・ポルトガル 、95分)

岩波ホール最後から2番目の上映作


初めて(そして恐らく最後)の岩波ホールで鑑賞。

私たちが普段、格安で買える製品は、どのような現場で作られているのか。
何となく気付いていた裏側を丁寧に映し出しながら、権利を守るべく立ち上がった一人の女性を描く。

抑えた演出もあり、生真面目とも言える作品。


ダッカ縫製工場の現実


舞台は、バングラデシュの首都ダッカ。
それほど広くない縫製工場の内部には、足踏み式ミシンがずらりと並ぶ。
ひしめき合う従業員たちは、全員が若い女性。
アイロン部門は、さらに暑そうだ。

冒頭の場面で火災があり、作業員が亡くなる。
そこから、悲惨とも言える労働環境が次第に明らかになってくる。

超長時間労働なのに、何かと口実をつけられ残業代がもらえない。
ときに泊まり込みになることさえあるが、雑魚寝のうえ、扇風機さえケチって止められそうになる。
そこまで働いても、夫が仕事にあぶれていることもあり、家賃すら滞納している。

力ずくで押さえてくる上司たちは、皆が中高年の男性。
彼らの意に沿わなければ、即日解雇させられたりもする。
あまりに不利な力関係がある。

労働者権利団体を知ることになった主人公は、労働法の本を読み進めながら、唯一の抵抗手段として労働組合の発足を目指す。


貫き通そうとする意志


どこからどう見ても過酷な状況なのだが、不思議と陰鬱な感じはしない。
それは主人公がわきまえず、言うべきことをはっきり言うからなのかもしれない。

家父長制という社会通念だからか、仲睦まじい夫ですら強く反対してくる。
より事態を悪化させかねない彼女の行動を、良く思わない仲間もいる。

それでも、彼女の闘いは最初から自分だけのものではなく、いつしか同僚たち皆んなの代弁者となっていく。
それにしても、個人がここまで背負わなければならないのか、とヒヤヒヤする場面もあった。

自分が着てきたTシャツの中にも、バングラデシュ製のものがある。
安価な衣服を通して、彼女たちと私の生活は繋がっている。

舗装されていない町は、ぬかるみだらけ。
規則があるようでないのか、常に交通渋滞を起こしている。
それらと対比しているようにも見える、鮮やかで生き生きとした豊かな色彩。
そして何より、意志を秘めた強い表情が最も印象に残る。



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