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#173 唐突に寿命告げられ焦る俺。やりたいことをやろうと思った。


墓参り。

空海の書が掲げてある、お寺。


賽銭箱に100円を投げ入れ、拝む。

横に置いてある線香を5束、手にとる。
マッチで火をつけ、手で仰ぐ。

ばあちゃんちの匂いがする。


水場へ。
バケツに水を入れ、ひしゃくを借りる。


水子地蔵にひしゃく。1束、拝む。


朽ちかけた石畳の上を、少し歩く。


車輪のような石がある。ソワカみたいな漢字がびっしり。それをゆっくりと1回転させる。ごろごろごろ。理由は知らない。回していいのかどうかも知らない。その横に、槍のようなものを持ったお地蔵さんが立っている。笑っているのか怒っているのかわからない。1束、拝む。


墓と墓の間を、静かに歩いていく。
きいろの花、しろい花、枯れた葉っぱ、苔、おちょこ、煙草の箱、倒れかけの卒塔婆。


無縁仏のすぐそば。やっとついた。
残りの3束、拝む。

墓の上から水をかける。昔からそうだ。今はここに入っている人たちも、入る前はそうしていた。なぜだかわからない。小さいときは俺もやりたくて、抱っこしてもらってたっけ。あのとき抱っこしてくれた人も、今はこの中だ。俺も大きくなったよ。


ゆっくりとひしゃくを傾けながら、石の上の落ち葉を流していた。

あれ。

墓の側面に彫られた漢数字が目に入った。

そういえば墓には、何歳で亡くなったか彫ってある。みんな何歳だったんだっけ。


ぼんやりと口を開けたまま、読む。












じいちゃん 六十九才





おじちゃん 六十九才









おとうさん 六十九才













俺…、あと、30年やんけ…!!!!!













「あんたがやりたいことをやりんさい」




そう、言われた気がした。