映画版AKIRA学・第0回 概要と自己紹介 -ネオ東京を識る覚悟はあるか!
はじめに
当noteへようこそお越し下さいました。長らく行き場のない雑記用のnoteでありましたが、この度かねてより念願とし企画していた「映画版AKIRA学」という不定期連載をこちらでさせていただこうと思います! ワ〜。
当方、あまりこういった企画をやり遂げたことがないので、定期連載にはしません。その代わりどれだけ間が空いても生きてる限り一年に一回は更新しに来ます。義務にしたくないんです。
もちろん真剣に取り組んで論文のようにして、『AKIRA』をずっと特別に好きになってくれる人、『AKIRA』を観てくれる人、興味だけでも持ってくれる人を増やすんだ、という気持ちはありますが、本当におれはただの考察魔ないちファンなので。歴も浅いです。AKIRA好きパイセンがこの世に五万といます。謙虚でありたいです。というか謙虚でしかいられないです。
そんな感じで……とりあえず今の時点でこのnoteを読んで下さっている方で、『AKIRA』が好きで、筆者のことをよく知っていて、おまけに映画版AKIRA学なんていう珍妙な企画の概要を事前に聞かされてる人間なんてバイクのタイヤの数ほどしかいないと思いますので、そこからですね。よろしくお願いします!
1、「予言の書」「#中止だ中止」「気絶姫」……未だトレンドに君臨するAKIRAとは!
・1-1 端的な概要と導入
大友克洋作『AKIRA』は、1982年〜1990年にかけ講談社の青年コミック雑誌「週刊ヤングマガジン」に連載されたSF漫画です。コミックは全6巻。
完結前に製作され、1988年に公開されたアニメーション映画版もあり、当noteでは主にこちらを軸にお話しすることになると思われます。(ただしあくまで原作は漫画であること、また自分も漫画の展開を用いて書かせていただきたい記事ストックがいくつかあることから、完全な特化はし切れません、ご容赦下さい。その都度未読の方にも伝わるような解説を心がけていきます。)
「アキラの力」と呼ばれる超能力を巡り、ネオ東京と名づけられ後に崩壊する近未来の都市を舞台に、主人公の金田、その友人でありメインキャラクターである鉄雄をはじめとした少年少女や反政府ゲリラたちの動向が描かれていきます。その世界観や主人公のバイクアクションは、時代や国境を超えて今でも世界中から人気を集めています。
漫画・映画の両方に「2020年には東京でオリンピックが開催される予定である」という描写がされており、なおかつ作中ではネオ東京の物理的崩壊、現実の2020年現在では新型コロナウイルスの被害によってオリンピックが中止されるという流れの一致を見せたことから、インターネット上では「予言の書」として一時大きな注目を浴びました。 Twitterを利用している方は、「#中止だ中止」というハッシュタグがトレンドに上がっているのを2月に見かけたことがあるのではないでしょうか? これは映画内、またコミックスにも出てくる、東京オリンピックまでの日数を示す工事現場の看板の落書きの一つです。
1-2 最近見かけたぞ? という方への補足
筆者もTwitterを使っているので、今年(執筆時現在2020年11月)の頭はAKIRA関連のワードがトレンドにあればオリンピックの話だな……と理解していましたが、最近はもっぱら「シソンヌ」という芸人さん達が「気絶姫キヨコ」という『AKIRA』のパロディネタを行っていたことでトレンド入りを果たしていたようです。
キヨコは超能力を持つキャラクターの一人で、身体が弱い為ほとんどのシーンでベッドに寝たきりですが、時折「夢を見る」という形で高い精度(当たる確率:90%以上)の予知能力を発揮します。映画でも早い段階でネオ東京の崩壊を言い当てますが、「あの子を行かせては駄目」と意味深な言葉を残し、白目を向き再び眠ってしまいます。「姫」と表現できるほどファンシーなおさげとネグリジェを男性芸人が纏い、面白おかしくパロディする様子が人気を博していたようですが、AKIRAネタは先月で封印、とご本人達から宣言があったそうです……。「アキラという風」が今後も吹くことを願って、次の章へ行きましょう。
2、なぜ「映画版」? なぜAKIRA「学」? 教師ではないけれど筆者にできること。
2-1 「映画版」とする意図
比率はどうあれ、映画に限定しないなら「映画版」とつけなくても良いのでは? もしかして原作を持っていないのか? 等、疑問はあるところでしょう。実際、筆者は先日まで原作を持っていませんでしたが、本格的に書き出す前にはということで一通り揃えて内容を掴み、その上でやはり「映画版」という名前を撤回しないつもりであります。
大きな理由としては、どうしても映画版はあくまで映画用の筋書きであり、漫画と違って本筋の「AKIRA」は展開されていないのだ、解釈には不要であると考える方への最低限の配慮です。
最近ですと少年漫画の実写映画化なんかが物議を醸していますね。ビジュアル的な問題もあるでしょうが、いわば公の二次創作物、あるいはグッズとしての映画は尺の都合上、さまざまな設定が改変されている場合があります。それを「焦点を当てる箇所が〜」と好意的に捉える人もいれば、「気に入らない、解釈違いだ、こうまでして映画なんか」と思う人もいるというわけです。筆者も正直、「キャラクターの名前と職業だけ借りた全く別のクソ映画」と呼びたくなるような改変をされてしまえば憤りを感じます。近年の某セーラー服とマシンガンとか……。
なので「映画版も根拠と見なして論じるんならお呼びではない」という方への線引きとしてこのタイトルにさせていただきます。
後ほど齟齬が生まれぬようにここで断言しておきますが、今の時点で筆者は映画版『AKIRA』の話の作られ方を「端折りバージョン」ではなく「よりコミカルな要素、エンターテインメント的側面を削ぎ落とし、力を巡る人間の心理描写を凝縮するに至ったもの」として扱うつもりです。なんとなくわかるかも、よくわからない(知らない)けれど一度その観点から読んでみてもいいかも、という方はよろしくお願いします。納得行かないけれどそんな視点もあるということこれから知ってやろう、という方も歓迎です。納得行かないから粗を探して辞めさせてやろうという方、来るんじゃ……ねェ!!(CV佐々木望)
ちなみにアニメ映画版も、監督と一部脚本は大友克洋氏本人が手がけられています。少々卑怯かもしれませんが、そういった部分も踏まえ筆者はやはり「公式の意図に沿っての凝縮版」と捉えさせていただきます。
未履修の方を差し置いて不親切な話をしてしまうのですが、当然、映画版の方が人物も動き、声も発され、着色も鮮やかにされています。(漫画にも総天然色版というものは存在しますがあまりお勧めできません)「動」「生」の側面が大きく、またキャラクターのセリフや性格も客層を意識してややマイルドなものになっているはず。それなのに(原作ではそれなりに生々しい下ネタや行き過ぎた暴言が出てきます)、どういったわけか単行本の世界の方が、雰囲気としては明らかに温かく優しいのです。
単純に紙媒体の性質でしょうか。それとも尺に縛られず丁寧に描かれている点でしょうか。映画版では「ちょいキャラ」だった人間の人情エピソードも節々に盛り込まれている点でしょうか。
漫画は1ページ毎に読者の手で進むか閉じるか精査されますが、映画はリモコンでブルーレイを止められたり、劇場から途中退場されたりしない限り(それも明確な選択のタイミングは物理的に現れません)一定時間の拘束を用いて、ある程度の水準まではシリアスさや暴力性を受け取らせ続けることが可能です。そういう意味では映画版は「エンタメ的な動向を省き、より分析材料として掴みやすい温度を保っている」と言えます。そのため、解釈に支障が出そうなほど原作と異なる箇所、映画に無いシーンを用いたい箇所には漫画の流れも参照しつつ、基本は映画から読み解いていくというスタイルを取らせていただきます。たまに気まぐれで漫画の話がしたくなった場合は別途します。ご了承下さい。
2-2 「学」とする意図
では、なぜそこまでして「AKIRA」を考察する、分析する、学ぶという趣旨の文章を筆者は発信しようとするのか?
特別な使命感があるというわけではありません。自分より詳しく論じられる人間などいくらでもいるでしょう。ましてや何かを教える人間となれるなどとも思っておりません。単純な話、個人的に大学で行った分析研究の続きであるからです。説明する上で少々自分語りが入りまして、またその後の三章も自己紹介の場となりますので、筆者の動機など読みに訪れてはいない、という方にとっては今回の記事はここまでとなります。閲覧ありがとうございました。次回からの連載をお待ち下されば幸いです。
筆者はこの(2020年)夏、大学のオンライン授業にてアニメ・漫画から日本の伝統までを取り扱う、いわゆるサブカルチャーに関する講義を受けました。その講義での最終課題が「そういった文化や作品の中で自分が関心を持った事柄について、分析・考察レポートを書くように」というものでした。
筆者はボカロPをしているので、当初はボーカロイドのことを書かせていただこうかと考えていたのですが、ちょうどその頃、とある三作品の漫画と『AKIRA』との関連性(次回よりこれを一度取り上げます)が気になり出し……集中講義と言って授業期間はわずか5日ほどだったのですが、あまりにもその短い期間の中でピンポイントでの出来事だったのです。ふと「あのキャラクターと『AKIRA』のキャラクターってかなり似てるな」と気付いたり、或いはインターネットで軽い「パクり」騒動になっているのを偶然目にしたり、妹に話題を振られたり。
これは恐らく「AKIRA」についてレポートを書く運命なのだと思い、まだ新しいブルーレイを何度も再生しつつ懸命に書き上げました。が、時間が無く焦っていたため文体への配慮を欠き、気づけば〆切の五十分前、手元にはまとめサイトをかしこまった口調に書き直したような、とてもレポートとは言えない原稿がありました。
絶対に叱責される、と思いながらもそのまま送信しました。が、そのレポートはお叱りどころか最上の成績がついて返却されたのです。驚いて自分でも読み返したところ、これがレポートとして正しい形式ではないとはいえ、非常に明快で「読ませる」考察文として完成していました。
「夢でも見てンのか? 俺にこんな力があったなんて……!」
完全に鉄雄と化した筆者は、開設以来まったく無為にしていたnoteを用いて更に掘り下げたいテーマを数十書き出し、レポートの延長線としてより多くの目の届く場所で連載を企てる運びとなりました。理由はそれだけです。
ただあくまで当時取り組んだように、この場ではきちんと根拠、考察、空想(二次創作)の域を明確にし、「AKIRA」という存在を「考える」ことを目的として記事を展開していく予定であります。もし筆者が、意図的に切り取った過激なタイトルで、明らかにPV集めの思考停止的・扇動的な記事を書き始めた時は一思いに“連れて行って”下さいますよう、お願い致します。
たった今大切なことを二つ思い出しましたのでこの場で明記しておきますが、当noteでは「冒頭からラストまであらすじを総ざらえ」というようなことは今後行いません。ストーリーを詳しく綺麗に紹介しているブログは他にいくらでもありますし、何ならWikipediaもありますし、漫画やブルーレイも売り出されていますので、筆者からの説明は1-1章にて軽く触れた概要にて代えさせていただきます。
それから、ここまで『AKIRA』、「AKIRA」、AKIRAという三つの表記が入り混じって読みづらかったことと思います。一応は作品としての『AKIRA』、存在としての「AKIRA」という風に使い分け、「AKIRA好き」「AKIRAネタ」等、他の語と隣接して名詞となる場合はカッコ無しの表記にさせていただいております。が、恥ずかしながら完璧に使い分けられる自信はありません。読み進める上で引っかかるばかりでしたら誠に申し訳ありません。精進致します。
3、名前ぐらい教えてけ!(自己紹介)
難解なオリエンテーションにお付き合いいただきありがとうございました。最後に軽く筆者自身について触れさせていただき、当記事を締めようと思います。
ミニよだか改め「よだか(夜光P)」と申します。19歳大学生、普段は文章表現を主とした専攻にて、文芸始め表現技法・言語学・ジェンダー学・サブカルチャーを中心に、幅広く勉学に勤しんでおります。
「AKIRA」については幼少より、ちょうど大友克洋をリアルタイムで愛読する世代であった父親に存在は知らされておりました。奇しくも叶わなかった2020年の東京五輪が決定してからはいっそう頻繁に話題に上りましたが、恥ずかしながら初めて映画を観たのは今年の3月16日です。
レンタルビデオショップでのアルバイトに慣れてきた為、初めての社割活用ということで『AKIRA』を借りました。初見で確かな手応えを覚え、その後5月の誕生日に友人よりブルーレイを贈られた辺りから加速していきます。8月には前述のレポートを書き、9月に5度目の視聴を終えた頃から本格的な好意を抱き、いわゆる“沼”へと踏み入りました。月並みですが金田とケイちゃんが好きです。キヨコちゃんもかわいらしくて好きです。
本来、この名前では趣味でボカロP(ボーカロイドを使った楽曲を作るクリエイターのこと)をやらせていただいています。ニコニコ動画投稿デビュー17ヶ月目です。「トーマ」さんという有名ボカロPのことを非常に敬愛しております。(機械声への抵抗さえ無ければですが、『AKIRA』の世界観が好きな方はある程度通ずるものがあるのではないかと……。)
音楽の素養は一切無くクオリティは酷いもんですが、「食傷店街」という曲では少しだけ自分でも気に入ったものを残せました。トーマ氏の世界観への憧憬をありありと投影している他、投稿者の概要欄(いわゆる主コメ)にて「早くAKIRAが観たいです」「3/16追記、観ました」というような記録を綴っています。ここは本当に『AKIRA』を突き詰める場所として、あまり私的な宣伝媒体にしたくないので、リンクなどは貼らないでおきます。もし興味を持っていただけたらインターネットのどこかでお会いしましょう。
それでは、これにて第0回の執筆を終わります。
次回は件のレポートを大幅に加筆修正し、「創造ミームとしての『AKIRA』-2000年代の少年漫画に見る、健康優良不良少年の姿」(仮)というような題材を三本の記事に分けて追っていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?