職人の世界を知る
社会人になってからの一番の悩みは、自分が何のために働くかということでした。
あと2週間で2年目を迎える今になっても、たまに答えが見つかった様な気になったり、全く分からなくなったり、上がったり下がったりを繰り返しています。
(とは言いつつも、最近はなる様にしかならないなと目の前の事に縁を感じて、connecting the dotsを信じて、かなり楽しく過ごしてます。笑)
世の中には何のために仕事をしているか悩んでいる人もいれば、働く意義を見つけてワクワクしながら突き進んでいる人もいます。
そういう人達が持つ人間的な魅力にはいつも刺激を受けます。
今日は、京都の染め工房の職人さんとその職人の技に惚れたファッションブランドの代表の話を書きたいと思います。
EMSでの出会いは本当に多種多様で、僕の世界を追いつけないスピードで広げてくれました。
(EMSとは、Essential Management Schoolの略で、本質行動学を学ぶ世界で初めての学校です。noteでこの学校での学びをまとめようと何度も試みましたが、今の所挫折中。本当に楽しくて書きたい事だらけだけど、全体像が全く掴めない、そんな感じ。
でもいつかしっかりまとめますね。)
先日僕が参加した染め物体験を企画しているのは、Afrika Dogsというファッションブランドの代表、中須俊治さん。EMSの繋がりで知り合いました。
サラリーマンからファッションの世界に飛び込んだバイタリティ溢れる方で、苦労を全く感じさせない笑顔が本当に素敵な方です。
そしてお世話になった職人さんは、アート・ユニの西田清さん。この道半世紀の74歳。名だたるファッションブランドがパリコレに出展するために染色を依頼する世界が認めた技術の持ち主です。
無口で怖い?なんていう職人像からはかけ離れた気さくで若さ溢れる素敵な職人さんでした。
(写真はAfrika Dogs HPより)
有栖川沿いの住宅地の奥にひっそりと佇む西田さんの工房は、一歩足を踏み入れると、神聖さと居心地の良さが同居している様な不思議な感覚を持ちました。
以前に体験された方から聞いた、
「あそこには適当な仕事をしてこなかった空気が流れている。そうじゃなきゃあの空気は生まれない」という話のとおりです。
昔大樹さんが話していた鹿島の練習場の雰囲気に近いかもしれません。鹿島の練習場でそんなプレーは許されないぞという、緊張感のある現場。
バルザーリが新人時代のディバラに言い放った「ここはユベントスだそ」も思い出します。(セリエAファンなら分かる。)
本題に戻ります。
雑多に置かれた工具類とは相反して、整然とした空気が流れていたこの工場で今日体験したのは、彩纈染め(さいけつ染め)という手法。
生地にたっぷりと糊をつけ、それが乾いてから糊の割れ目に染料をつける手法で、独特の割れ模様が印象的な生地が仕上がります。
と、言いつつも今日体験出来たのは糊付けまで。
モノづくりにはこんなにも手間と時間が掛かるのかと驚きです。
実際にどんなものが仕上がるのか今はイメージが湧きませんが、1ヶ月後に再び工房に行き、染め体験をさせていただく事になりました。
「職人は頭から始めないんです。手を動かす所から初めます。なので説明はしません。まずはやってみてください。」
白い生地を前にして、バケツ一杯に入った糊を手渡されると、中須さんからこう言われます。
いいですね、ワクワクします。
白いジーンズが黒くなっていく罪悪感に打ち勝ちさえすれば、もう後は無心で塗っていくだけです。
(糊は染料ではないので、この色になる訳ではないんです。)
表面が終わると今度はひっくり返して裏面に。
おもしろいもので、楽しんでやっていると裏面に行き着いた頃にはコツを掴んできます。
「糊は塗るのではなく、載せるんだ」なんて分かった気にもなりました。笑
西田さんからの「あ〜これだけテカテカしてれば十分だ」という言葉ですっかり調子に乗ってしまった僕は「裏面の方が表面より上手く出来た気がする!」と糊のおかわりをもらって表をやり直させてもらいました。
西田さんの一言にはすごいパワーがありました。職人さんに褒められるのは嬉しいものです。
そんな西田さんの工房には大学生のお弟子さんが入ってきました。
僕と同い年の青年です。
大学を数日前に卒業した彼は、何のために働くのかを考えた結果ここにたどり着いたそうです。
じっくりお話を聞く時間がなかったのでまた伺いに行こうと思いますが、
何のために働くか、どういう人がカッコいいのかハラオチして働く彼はすごく謙虚で、でも情熱があって、どっしりとした存在感がありました。流し台で一緒に手を洗っている時にお話をしただけで、カッコいいなぁと思いました。
どういう選択が正しくて、間違っているということは決してないけども、
働く意義を明確に持っている人のパワーには敵わない、たしかにそう感じた瞬間でした。
挑戦を止めない西田さんの工房では、
今新しい染め方が開発されようとしています。流彩染めという手法です。
詳しいことはまだまだ理解出来ていませんが、
何色かの絵の具を水の表面で混ぜ合わせて、マーブル状になった所を画用紙ですくって模様をつけるという遊びをプロがやるというイメージです。
(幼稚園でやった記憶があるんですよね〜)
これは西田さんがお弟子さんのために、染色業界の未来のために残す技術です。
コロナ禍でも挑戦する姿勢には驚きを超えたものがあります。
本人が楽しそうにワクワクしながらお話しているのをみると、とんでもない挑戦だという事をすっかり忘れてしまうような感じ。
またその姿を「ヤバすぎ!」「カッコよくない?」と純粋に面白がる中須さん。
すごいパワーでした。
みなさん苦労がたくさんあるはずなのに「無邪気」なんです。「邪気」がない。
無邪気な大人ってカッコいいんです。
(長澤監督の言葉を思い出します。fromレフェリー卒論vol.10)
本当は、このnoteの最後で現在進行中のクラウドファンディンをご紹介しようと思っていましたが、僕がグズグズ文章を考えているうちに公開3日にして達成していました。
ヤバすぎです。
今回感じたのは知ることって大事だなぁという事。
世の中には支援したり応援出来るものに溢れています。最近は農業でも生産者の顔が見えて、作り手を応援出来る仕組みがたくさんあったりします。
でもこれは個人的にですが、これまでなんだか実感が湧かなかったんですよね。
例えば今回のクラウドファンディングも多分ネットで見ただけでは目に留まらなかったかもしれない。
でも現地に行って、生き様に触れると無視出来なくなる。
知るから関心を持つし、
関心を持つからもっと知りたくなる、
今度は人に教えてあげたくなって、
知る人が増えていく。
そんなことの連鎖なのだと思います。
これからも色んなことを学んでいきたいです。
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