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手形取引もこれでスッキリ!楽しく学んで理解を深めよう。
手形取引は、公認会計士試験において頻出論点というわけではありませんが、基本的な知識として押さえておくことが重要です。なぜなら、手形は実際のビジネスシーンで頻繁に使われており、特に取引先との信用取引において大きな役割を果たします。理解しておけば、試験だけでなく実務でも役立つこと間違いなしです。
例えば、A社がB社から商品を購入し、代金を後日支払う約束をする際、B社に対して「約束手形」を発行することがあります。この手形はB社にとって代金を受け取る権利を示すものであり、さらに第三者に譲渡することも可能です。こうした取引がスムーズに行われるのは、手形というツールが信用を保証するからです。
試験において手形取引が直接的に問われることは少ないかもしれませんが、基本的な処理を理解しておくことで、他の取引処理との関連性も深まります。手形の概念をしっかりと押さえておけば、試験での自信にもつながります。今回の記事では、手形取引の基本を分かりやすく解説していきますので、肩の力を抜いて読み進めてみてください。
手形とは何か?基本的な定義と役割を解説
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手形は、ある人(債務者)が別の人(債権者)に対して、「決められた日、決められた場所で、決められた金額を支払います」という約束をする証書です。この約束は「手形法」という法律に基づいています。
手形には2つの種類があります:
約束手形:手形を発行した人(債務者)が、「自分が後で支払う」と約束する手形です。
為替手形:手形を発行した人が「第三者に支払わせる」形式の手形です。つまり、発行者ではなく、別の人が手形を受け取る人(債権者)に支払うことを約束する形になります。
手形がどのように使われるかというと、たとえば、ある会社が商品を購入して支払いを後回しにする場合、その会社は手形を発行して支払いを約束します。この手形は、決まった日に銀行の当座預金口座を使って決済されます。
また、手形はただの支払い約束だけではなく、別の会社に譲渡することも可能です。たとえば、A社がB社から商品を買い、その代金の支払いとして手形を発行します。そしてB社は、その手形をC社に渡して、C社に支払う手段として使うこともできるわけです。これが手形の「譲渡」です。
手形は、単なる「お金のやりとりの証書」ですが、こうした仕組みを知っておくことで、実際のビジネスの流れがもっと理解しやすくなります。
手形の会計処理方法:基本の押さえ方
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手形の会計処理を理解するためには、まず「手形代金を支払う側」なのか「手形代金を受け取る側」なのかを区別することが重要です。手形の種類に関係なく、手形代金を受け取る場合は「受取手形」、支払う場合は「支払手形」として処理します。
これらは、貸借対照表において次のように分類されます
•受取手形(資産):流動資産に分類されます。これは、将来受け取る予定の手形代金を表します。
支払手形(負債):流動負債に分類されます。これは、将来支払わなければならない手形代金を表します。
次に、具体的な処理方法について見ていきましょう。約束手形と為替手形の処理について、それぞれの方法を解説します。
約束手形の会計処理方法
振出人(手形を発行する側)
振出人が約束手形を発行した場合、その手形は後日支払わなければならない負債となります。そのため、約束手形を振り出すと同時に「支払手形」勘定(負債)で処理します。満期日に手形金額(額面金額)を支払うことになるので、その金額が負債として計上されます。
名宛人(手形を受け取る側)
一方、名宛人が約束手形を受け取ると、満期日にその手形の金額を受け取る権利が発生します。これを「受取手形」勘定(資産)として処理します。つまり、手形金額(額面金額)が将来受け取る予定のお金として資産に計上されるわけです。
【例題1】約束手形の振出と代金支払の処理
A社はB社から商品を100,000円で購入し、その代金として約束手形を振り出しました。後日、満期日が到来し、手形の支払いを行いました。この取引の仕訳を行いなさい。
【解答】
(1) 約束手形を振り出したとき
A社はB社に対して商品代金を手形で支払うため、以下のように仕訳します。
商品 100,000円 / 支払手形 100,000円
(2) 手形の満期日に代金を支払ったとき
A社は満期日に手形の金額を支払い、負債を消滅させます。
支払手形 100,000円 / 当座預金 100,000円
【例題2】約束手形の受取と代金受取の処理
B社はA社に商品を100,000円で販売し、その代金として約束手形を受け取りました。後日、満期日が到来し、手形の代金を受け取りました。この取引の仕訳を行いなさい。
【解答】
(1) 約束手形を受け取ったとき
B社はA社から手形を受け取り、代金を後日受け取る権利を得たので、以下のように仕訳します。
受取手形 100,000円 / 売上 100,000円
(2) 手形の満期日に代金を受け取ったとき
B社は手形の金額を受け取り、資産として記録します。
当座預金 100,000円 / 受取手形 100,000円
手形取引における会計処理は、振出人と名宛人がそれぞれ異なる仕訳を行う点が重要です。手形が発行されるたびに、資産や負債として適切に処理することで、帳簿が正確に反映されることになります。約束手形に限らず、為替手形でも基本的な流れは同様です。手形の処理方法をしっかり理解しておけば、試験や実務でスムーズに対応できるでしょう。
他人宛為替手形の会計処理方法
為替手形では、3人の登場人物が出てきます。まず、手形を発行する振出人、次にその手形でお金を支払う名宛人、そしてお金を受け取る指図人です。それぞれの役割を見ていきましょう。
振出人(手形を発行する人)
振出人は為替手形を発行すると、手形に書かれた金額の「お金をもらう権利」と「お金を支払う義務」が同時に消える、つまり相殺されます。例えば、自分がAさんにお金を払って、同時にBさんからお金をもらうような状況で、複雑なやり取りを整理するために、振出人が為替手形を発行することがよくあります。これにより、自分を経由していたやり取りを手形で整理することができるのです。
名宛人(お金を支払う人)
名宛人は、振出人から為替手形を受け取って引き受けると、その手形に書かれた金額を満期日(決められた日)に支払う義務が発生します。このため、名宛人は「支払手形」という負債として処理します。つまり、この手形を使って将来お金を支払うことを記録するわけです。
指図人(お金を受け取る人)
指図人は、振出人が発行した為替手形を受け取ると、満期日に手形の金額を受け取る権利を得ます。これを「受取手形」という資産として処理します。つまり、将来お金を受け取る予定があることを記録するのです。
為替手形では、こうして3人が関わっており、それぞれが手形のやり取りによって支払いや受け取りの義務を整理することができます。これによって、複雑な支払いをスムーズに行うことができるのです。
【問題】他人宛為替手形の処理
① D社は仕入先F社から商品3,000円を掛仕入れしました。また、得意先E社に3,000円で商品を掛売上しました。
② D社は仕入先F社に対する買掛金支払のために、売掛金を有する得意先E社の引受を得て、同社を名宛人とする為替手形3,000円を振り出して、F社に渡しました。
③ E社は先に引き受けた為替手形3,000円の支払を当座預金により行い、F社の当座預金に入金しました。なお、D社は無事に決済された旨の報告を受けました。
【解答】
① D社がF社から商品を掛仕入し、E社に掛売上したとき
D社の仕訳(掛仕入・掛売上)
仕入 3,000円 / 買掛金 3,000円(F社)
売掛金 3,000円(E社) / 売上 3,000円
② D社がE社の引受を得て、F社に対して為替手形を振り出したとき
D社の仕訳(為替手形の振出)
買掛金 3,000円(F社) / 売掛金 3,000円(E社)
E社の仕訳(為替手形の引受)
買掛金 3,000円(D社) / 支払手形 3,000円(F社)
F社の仕訳(為替手形の受取)
受取手形 3,000円(D社) / 売掛金 3,000円(D社)
③ E社が手形代金を支払い、D社が無事決済された報告を受けたとき
E社の仕訳(手形代金の支払)
支払手形 3,000円(F社) / 当座預金 3,000円
F社の仕訳(手形代金の受取)
当座預金 3,000円 / 受取手形 3,000円(D社)
まとめ:手形取引を整理して理解しよう
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手形取引には、約束手形と為替手形の2種類がありますが、どちらの手形であっても、手形代金を「受け取る側」なのか「支払う側」なのかを明確に区別することが重要です。会計処理では、手形代金を受け取る場合は「受取手形」、支払う場合は「支払手形」として仕訳が行われます。このルールは、手形の種類に関わらず共通です。
約束手形の場合、関わるのは基本的に2社(手形を振り出す会社と受け取る会社)ですが、為替手形の場合はもう1社加わり、振出人、名宛人、指図人の3者が登場します。他人宛為替手形では、どの会社がどこに対して何をしているのかを理解するために混乱することがあります。そんな時は、トライアングル(図形)を書いて、関係を整理するとわかりやすくなります。例えば、誰が手形を発行し、誰が支払いを引き受け、誰が代金を受け取るのか、矢印で繋げて視覚的に確認してみましょう。
手形取引の基本を理解しておけば、試験だけでなく実務でも役立ちます。手形の種類や会計処理のルールをしっかり覚えて、試験でも混乱せずに対応できるようにしましょう!