ACL三度優勝、前人未到のアジア王者(浦和1-0アルヒラル)
現行のACLになってから三回優勝したクラブは浦和だけ。
かつて、Jリーグクラブは磐田もマリノスもACLでGL敗退が続いた時、そしてACL初期にシエラレオネ代表FWカロン擁するアルイテハドが連覇成し遂げた時、さらにはCWCでサンパウロ相手にアルイテハドが3-2の大接戦繰り広げた時、
「こんな化け物クラブ相手にJリーグのクラブが優勝できる日はくるのか」
そんな途方もない差を感じた時代があったが(現に当時G大阪・西野監督も同様の発言をしていた)、いまや隔世の感がある。
アルイテハドをも抜き、ACL優勝回数トップは浦和となった。
とてつもない偉業だと思う。
この日、埼スタでアルヒラルが「ASIA's LEADER」という横断幕を出していたけれども、浦和がこの20年のACL歴史の中でトップであることは間違いない。
【ピッチ外】
キックオフ前の選手入場時にはビニールシートでビジュアルを掲げるサポート。今回は日本を中心にした世界地図が南に。旧浦和市の形が北に(旧浦和市の形、最初見た時はわからなかった)。
ハーフタイム時にはゴール裏ではビッグフラッグ、バックスタンドとメインでは旗を掲げるサポート。旗でエンブレムを作り上げる形。
この、選手入場時とハーフタイムとでサポーター有志により各々ビジュアルを用意したのが、AFC公式のゴリ押しに抗う手段として実に見事だった。
2019年の同カード、浦和 0-2 アルヒラル時にはAFCのゴリ押しにより、外国人DJによるハーフタイムショー+客席ではスマホライトを掲げるイベントでいつもの浦和らしさが微塵もない空気が作られることになり、酷い有様だったのだが、その4年前の苦い経験を踏まえたAFCゴリ押し対策が今回のビッグフラッグと旗。
ここで観客各々が席に用意された旗を掲げてビジュアルを作ることで、スマホライトで浮ついた雰囲気になることを回避。
座席に一つ一つシートと旗を用意し、キックオフ前にはバックスタンドに有志のサポーター団体が来て、最初はシート、ハーフタイムには旗を使う旨をトラメガ使ってアナウンス。AFC公式のノリを消すためにかなりの労力をかけていた。
最初は埼スタのオーロラビジョンで「スマホのライトを点けて掲げよう!」というDJイベントへの誘導が映し出されたこともあり、スマホライト掲げる人がメインとバクスタでかなり多かったのだが、徐々に旗に切り替わっていって4年前の残念な雰囲気とはだいぶ異なる状況となった。
(それでも今回もスマホライト照らしてDJに合わせる浦和ユニの人も結構いたけど…)
また、試合前のイベントに関してもピッチ上でのミュージシャンによるギター演奏の時間に、クラブレジェンドの阿部勇樹出してきてトロフィー紹介を並行して行ったり、ピッチレポーターで外国人による煽り+アルヒラル側の応援MCのところでも埼スタ場内MCの朝井夏海さんを同時に起用して少しでもホーム感に繋げる等、できる限りAFCの公式イベントをぶち壊さず、それでいて埼スタの雰囲気に寄せる対策が見て取れた。
この辺りは浦和フロントとサポーターによるAFCとの折衝の賜物だと思うので、まさにクラブとしての経験値。
試合後配布された優勝記念ステッカー。
あらかじめ用意してたクラブ、そして使いまわしができないように
「AFC CHAMPIONS LEAGUE 2022」
と今回限定の刻印がされたもの。さすがです。
ビジュアル自体も背景が感じられるもので、さいたま市ではなく旧浦和市という最小単位のホームタウンから、最大単位の全世界へと繋げる壮大さ、フットボールが自分の街から世界に広がっていくその無限の可能性を感じさせる競技としての魅力、ストーリーの大きさ、これを改めて感じさせる素晴らしいものだった。企画立案者の視点に敬意を表する。
【ピッチ内】
とにかく風!
とてつもない強風が前半は浦和を、後半はアルヒラルを苦しめた。
ゴールキックも風で戻ってしまうし、クロスボールの処理に苦しむ場面も多々あり、前半を0-0で凌いだ時点で浦和としてはミッションほぼ成功、そしてこの時点で西川とショルツ、ホイブラーテンがMVP級だった。
結果として前半のアルヒラルのチャンスはクロスやロングボールによるもので、後半の浦和の得点もクロスから。
中々体感できないレベルの強風だったので、いかに空中戦が危険だったかを感じる。そして全部跳ね返し続けたGK・2CBの凄さ。
前半は風の影響と、久々の超満員の雰囲気によるものかかなり堅く、特に前回の決勝の舞台を経験した数少ない選手である関根ですらボールがあまり足にうまくつかない場面を見た時は相当な緊張があると感じた。
決勝1stleg終了後、アルヒラル側の評としては「個人技頼みになってるラモンディアス戦術の限界」と言われていたが、2ndlegもその点を強く感じた。
アルヒラルはとにかくコンビネーションが少ない。
カリージョ、イガロは確かにハイレベルではあるけれど独力単騎突破はさすがに現代サッカーにおいて無理があるし、個で劣る浦和の方が遥かにチームで崩していた。
それでいて個で違いを魅せる酒井宏樹の偉大さと言ったら…。
前半、風下に立ち常にアルヒラルの攻めに耐え続ける状況でも一発で相手交わして右サイドからクロス、興梠のクロスバー直撃弾に繋げた場面はさすがの一言。
後半も代表戦でもおなじみのロングボールをおさめる大型SBとしての役割、からの右サイド抉ってマイナスのクロス等、とてつもない存在感だった。
(しかし前半、この酒井ぶち抜いて突破したカリージョはやっぱ化け物。酒井が抜かれた後にファールで止めてイエローもらった大久保は潰しどころをわかってた。あれはカードでも止めないといけない場面)
ACLを2回優勝しているアルイテハド、全北現代、蔚山現代、広州恒大、アルヒラル。広州を除くこの4クラブがいずれは浦和を優勝回数で抜く時が来るのかもしれないが、3度優勝したクラブは現時点で浦和のみだし、先に頭一つ抜けた浦和は本当に凄い偉業を達成した。
また、Jリーグクラブが浦和を優勝回数で追い抜く日も、クラブとしての経験値が違いすぎるため当面来ない。
圧倒的なアジア王者だと思う。