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熱量が違う(川崎 0-2 新潟 ルヴァンカップ準決勝2ndleg)

自分の中での格言というか定説として、
「カップ戦準決勝に外れなし」
というものがある。
一発勝負もそうだけどH&Aの2ndlegはさらにその定説が強まるが、この試合も外れなしのとても印象深く後々まで記憶に残る試合だった。

1stleg、新潟は川崎に4-1の圧勝。クラブ史上初の決勝進出にリーチがかかったこともあり、この2ndlegは当然のことながら等々力のチケットは完売。
しかも新潟側の席からどんどん無くなっていく売れ行き。ゴール裏は瞬殺、ゴール裏隣の席やメインスタンドとバックスタンドも新潟側席種から売れていったため、蓋を開けたら予想通り、等々力で新潟サポーターが大挙して埋めた形に。

この売れ行きに対して川崎側が「等々力劇場」と呼んで3点差をひっくり返すにはさすがに困難な状況だったし、数も声も新潟側が圧倒していた。

試合前、川崎の番記者が「チケットは完売間近。最高の雰囲気になりそうな等々力」とツイートしていたが、おそらくこの新潟側から捌けていく売れ行き推移を見ていなくて背景を知らず、ただ単に川崎サポーターが買っていったと誤解していたのだろう。新潟サポーターからすれば最高の雰囲気だったが、川崎サポーターからすると全く違う、むしろ真逆のホームジャックを受ける、とても厳しい雰囲気だったのだから

また、試合展開として終盤0-1の時点でも川崎側は帰っている人はいたし、トドメの0-2になったらかなりの人数が席を立って続々と帰る光景を目にすることに(正直、0-1の後半30分時点でもはや川崎に全く勝ち目はない展開だったので帰った人の気持ちはよくわかる)。

それほどまでにこの試合にかける熱量が違っていた。

川崎にとっては既に獲得しているタイトルであるし、カップ戦の決勝にも何度も進出している。そもそもリーグタイトルを4度も獲得している強豪の立ち位置。
一方で新潟はルヴァンカップでも天皇杯でもまだファイナリストになったことはなく、クラブ史上初の決勝進出がかかる極めて重要な試合、特別な一戦だった。

89分太田修介の得点で0-2にしてから試合終了後もアイシテルニイガタの大合唱が等々力に延々と響き渡り、アウェーながらスタンドを埋め尽くす圧巻の光景。1stlegの4-1、そして2ndlegどちらも内容的に完勝で、全ての面で川崎を上回る、完璧な試合運び。

試合前は4-1のアドバンテージがあるとはいえ、等々力において新潟は惨敗の歴史を持つ。2006年の開幕戦では0-6くらったり、三浦文丈の監督解任が決定的となった0-3もあったり、そもそも先月は1-5くらったり…といった数々の惨敗の過去がよぎったが、全く危なげなく2-0でモノにした。

川崎のお株を奪うかのような見事なパス回しで決定機を何度も作る。
その決定機をものにできなかった時、長谷川元希やダニーロゴメスは本気で怒りを露わにする。
決して1-0で逃げ切るような弱者の戦い方ではなく、常に追加点を狙う姿だった

攻撃のタクトを振り続け、堂々たる姿で主導権を握り続けた長谷川元希、全線で常に脅威であり続け相手にカードを出させた長倉幹樹も素晴らしかったが、この試合で真に見事だったのはCB稲村隼翔と、SB橋本健人

特に素晴らしかった稲村がこの試合のMOM。

この東洋大学在学中の大学生、末恐ろしく感じるほどの出来。
カードなしでエリソンも山田新も小林悠も全員抑えきった。川崎にほぼ決定機作らせず、唯一の決定機とも言っていい遠野のシュートも、稲村が瞬時に詰めてコースを消し、枠外だった。SBの橋本も素晴らしく、稲村と橋本のいる左サイドを川崎は全く崩せず、クロスも上げさせてもらえない程。
試合展開もさることながらこの個の実力に目を奪われてしまったし、こんな見事なCBが出てくるとは想像だにしなかった。

所属元の東洋大学・井上卓也監督は
「当初は第1戦だけの予定で送り出した」
「第1戦をしっかり勝って次もという状況になっていたので、本人とクラブと話をして、(関東大学リーグ1部へ)戻さず第2戦へという決断になった」
と明かしていたが、ここまでくれば是非決勝の舞台でも出てほしいところ。もし大学側との折り合いがつかなかったとしても、それでも相当なインパクトを残したので全クラブ関係者が注目した存在となった。
そりゃ、東洋大学の寄付金募集サイトに新潟サポーターから寄付が殺到しますわな
https://kifu.toyo.ac.jp/d_msg/


川崎は2017年から常にタイトル獲得し、2022年は無冠といえど最後までリーグ優勝争いしての2位だったので7年間タイトル獲り続けたようなものだが、今年はリーグも中位だし、久々の完全に無冠のシーズンとなった。
7年間で7タイトル、ここで長い黄金期も一旦終了となる。


決勝の舞台は相当な新潟サポーターが国立に押し寄せるだろう。

既にチケット発売前だというのに当日の新潟発・東京行の新幹線は続々と席がなくなっているのだから…。


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