小説|パラレルハウス|⑦最後の扉―永美編
2人は公園にいた。
ボーッと立っていたら、サッカーボールが飛んできた。
明はそれをキャッチして返そうとした時、、、
「こっちに蹴って!パパ!」
少年が明にむかって言った。
明は誰か違う人に言ってるのかと、辺りを見回すが誰もいない。
「早く蹴ってよー、パパー!」
(え?!もしかして、俺のこと?!)
そんな事を考えていたら、小学校低学年くらいの男の子がボールを取りに来た。
「なんだよー、蹴ってって言ってるのに。(´・3・`)」
ふと気づくと、横に永美はいなかった。
明は、また訳がわからなくなっていた。
ボールを受け取り公園のグランドに戻ろうとしている少年を捕まえて、話しかけた。
明「ね、君、今オレのことなんて呼んだ?」
少年「パパ」「?パパ、だよね???」
なんの疑問もなく、素直に答える少年に明は動揺した。。
明「お、おぉぉぉ、そうだよ。パパで間違いない」
少年「僕、まだあっちで遊びたいから、行ってきていい?」
明「あぁ」
(ここは、、、、、)
明はどこの公園なのかも分からなかったが、あの少年が自分のことを父親だと思ってるってことは、、、、まさか未来??!!
明は様々なことを空想しながら、そのまさかが的中しているとは、その時は信じられなかった。
(あの階段は未来への階段だったのだろうか・・
あの少年の年齢からすると、、、、もしかしてあの階段の数字は1年ということだろうか、、、ということは12年後?!!!!)
そんな事を色々と考えていたら、少年たちは解散してそれぞれの家に帰ろうとしていた。
そして、さっきの少年は明のそばに来た。
少年「パパ、終わった!帰ろ〜!」
明「帰るってどこに?」
少年「え?家でしょ?今日はママがハンバーグ作って待ってるって言ってたじゃん」
明「あ、あぁぁ、そうだったな」
(ママがいるってことは、俺は結婚してるってこと、だよな・・)
明「あ、家に帰る前に少しパパと寄り道しないか?よし、ジュースでも買いに行くか!」
少年「うん!コーラ飲みたい!!」
明と少年は歩きながら、何処かのコンビニへと向かった。
少年「ところで、パパってサッカーしないの?」
明「あぁ、パパは昔から運動が苦手でな、、、」
少年「へぇ〜」
「あ!そういえば!この前パパが昔書いた本、この前読んでみたけど、面白かったよ!!」
明「本?そんなの書いたっけ?」
少年「なんか、虫の話。どんどん虫が大きくなっていくやつ」
明「あーーー!あれか、子供の頃に書いた昆虫日記か。(ただの日記じゃつまらないから、少し物語風に変えたんだっけ)」
少年「うん!それ!虫がどんどん大きくなると姿が変わったりして、なんか面白くて友達にも貸しちゃった!」
明「そうか、そんなの残ってたんだ。」
少年「またなんか新しいの書いてよ!!」
少年は目をキラキラさせて、明を見ていた。
明「わかった。いつでも書いてやるぞ(^^)」
少年「じゃあさ、今度は・・・・」
楽しそうに話す少年に明も気持ちが明るくなった。
そんな話をしながら、コンビニに着き、ジュースを買って少年と話しながら歩いた。
しばらく歩くと、少年が少し言い辛そうに明に言った。
少年「パパ、、、仕事、嫌いなの?」
明「・・・・」
少年「なんか、さっき話してたパパ、いつもと違った気がして。。すごく楽しそうだったから、、、、」
「僕、パパが今の仕事してなくても、楽しいパパがいい。。」
明「なんだよ、パパそんなに、いつも楽しそうじゃないか?!」
少年「うん。。会社から帰ってきても、あんまり喋ってくれない時もあるし・・」
「この前ママも心配してた。。。」
明「・・そうか」
少年「だから、楽しそうなパパでずっといて欲しい!」
少年は明の腰に抱きついた。
明は驚いた。子供に抱きつかれることも初めてだし、そもそも今が未来の俺なのかなんなのかも分からない。もし未来なら、俺は学生ではなく、どこかで就職して家族をもっているってことか。。
少年と視線を合わせる為にしゃがんで話した。
明「わかった。楽しそうなパパでいるようにするな。」
少年「うん!」
再び少年は目をキラキラさせて、嬉しそうに頷いた。
(いつも楽しそうなパパ、、、か、、)
途中、明は急にお腹が痛くなりトイレに行きたくなったので、少年に先に帰るように言った。
そして、近くに見つけたトイレに入り、籠りながら考えた。
(俺は一体、何をしているんだろう。。。
将来やりたいこともなく、ただ実家を出たくて東京の大学に通ってるが、就活する気にもならず、ただ学校に行って、バイトして、たまに遊ぶだけ。。。もしこのままいけば、なんとなく就職して、結婚して、子供ができて、、、確かにあの少年が言っているような、楽しくないパパとしてどこかで暮らすのかもしれない・・・俺は一体、、、)
明の中で何かが音を立てて弾けた。
(俺、本、書きたい。。。)
明は無性に書きたくなった。パラレルハウスを出たらすぐにでも書きたい。そんな衝動が明の心の中をかけめぐった。
明は用を済ませてトイレのドアを開けると、また薄暗い部屋の中にいた。
(あ、パラレルハウス・・)
今度はバラバラに3つの扉があった。
どれも同じに見えた。
(これは、、、、)
すると、後ろから声がした。
「あ!アキラ」
永美の声だった。
明「永美!どこにいた?」
永美「明こそ、、、気づいたら横にいなかったから・・」
明「これ、どこに入ろうか・・・」
永美「うん。。。」
2人はまた入ったらどうなるのか、心のザワつきを感じながらしばらく扉を眺めた。
永美「私、この扉にいくね」
明「そっか。俺は、、、こっちに入る」
永美「うん。じゃあまた後で」
明「あ!永美、今日は色々話してくれてありがとう。」
永美「うん(^^)」
2人は別々の扉に入っていった。。。
扉に入ると暗闇の中だった。
そしていきなり眩しい光に包まれると同時に、シャッター音のような音がした。
すると、部屋の奥の方に、外が見える入口があった。
導かれるままにそちらに歩いていった。
*****
黒服「お疲れさまでした。パラレルハウスはいかがでしたでしょうか。お手荷物の番号札はお持ちでしょうか?」
明は何が起きたのか、全く把握できなかったが、黒服をみて手荷物の番号札のことは思い出せた。
ポケットをまさぐり、慌てて黒服に渡した。
黒服「少々おまちください。」
明は状況を把握しようとするが、さっきの眩しい光の衝撃で全く頭が働かない。
手荷物が入った袋を持った黒服がまたこちらに来た。
黒服「お待たせしました。お連れさまはあちらにいますので、どうぞ」
黒服は明を案内するように、スタスタと歩き始めた。
奥の部屋に通されて、入るとそこには3人の男女がいた。
黒服「では、お手荷物はこちらに置いておきます。皆さんのいいタイミングで出ていただいて構いません。本日はパラレルハウスに来ていただきありがとうございました。」
黒服は一礼すると、どこかにいってしまった。
浩司「おい!明!あーきーら!」
明はボーッとしていたが、ハッと我に返った。
明「こ、こうじ!!」
明は辺りを見回した。
永美ともう1人よく知らない女子がいた。
永美「明、ちょっと、大丈夫?!笑」
恵巳「明くん、なんかまだパラレルハウスの中にいると思ってるんじゃない?笑」
浩司「とりあえず、全員揃ったし、行くか!?」
4人は部屋を出た。
パラレルハウスの外に出ると、少し明るくなった空と昇り始めた朝日の光がビルの間から差していた。。。
おしまい♡♡
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