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日曜日のブランチ
日曜日のブランチ
高林夕子
東の窓から朝陽が差し込む
真冬だというのに眩しくて
遮光カーテンを閉めるほどだ
ガスコンロのツマミをひねると
あおい炎がパッと点いた
その炎にしばし焼かれて
笛吹きケトルがピィーと鳴いた
私はそれをチラと見て
オーブンミトンで取っ手を掴み
コーヒードリップに湯を注ぐ
リビングルームで遊ぶ息子
私が呼ぶと振り向いて
トコトコトコトコ歩き出し
私の足につかまって
無邪気に笑う愛しい息子
幼い息子はまだ気づかない
いるのにいない父親を
寂しいとは思わない
父親がいない子どもなら
ふつうの毎日なのだろう
いるのにいない父親に
いつか息子は気付くだろう
家に居ても遊べない
心の壊れた父親に
やがて息子が成長し
桜の花が咲いた日に
息子と私は家を出た
朝陽の差さない小さな部屋に
小さな炬燵とダンボール箱
調味料は塩コショウだけ
百円ショップで揃えたお皿で
息子とふたりの日曜日