誕生日
ずいぶん前ではあるが、誕生日を迎えた。とはいえいつもと違う何かがあったわけではない。ケーキなんて昔ほど食べられなくなったし、周囲に話してもいなかったので普段通りの日常だった。家族や友達数人からメッセージが来て、スーパーで珍しく苺のケーキを買ったくらいだ。ここ数年で甘いものと揚げ物で胃もたれするようになったから稀な出来事だ。これが歳をとったということか。
20歳を過ぎた辺りから年齢を聞かれた時にすぐ答えられなくなった。歳下とは思えないほどしっかりしている人もいれば、その逆もいる。相手が歳下だと分かった途端に態度が変わる人にはなりたくない。結局のところ年齢なんて目安でしかない。だからか、歳を意識することがあまり無い。それもまた、歳をとったということか。
変わり映えの無い日々に訪れる年に一度の日だが、特に何も無かった。嫌なことがあってもお腹は空くし、転んで怪我しても空は青い。歴史的なことが起きても身近な影響は少ないし、時代が変わっても劇的な変化があるわけではない。来年も再来年もその先もずっと、身の丈から少しはみ出た日々をそれなりに繰り返していくのだろう。
後に思い返してみると、あの出来事が分岐点だったと感じることがある。毎日が特別な日だから、当たり前すぎる日常だと逆に捉えているのかもしれない。だとしたら、1秒先を笑顔でいられるように今を楽しんでいこう。なんて考えながら、半額のショートケーキを苺から頬張った。