炭酸水〈コップ一杯の夢と適量のノンフィクション〉
ビールが苦手だ。
「とりあえずビール」という言葉は居酒屋でよく聞くがどうにも好きになれない。コーラやサイダーとは違う炭酸の刺激、鼻を抜ける独特の匂い、透き通る黄金色。どうにも好きになれない。
まだ子供舌なのかもしれないが、熱燗は好きなのだ。飲み会では周りがグラスジョッキの中で1人だけ徳利と猪口なのでシラケさせてしまう。
炭酸水とビールの味が似てると思うのは私だけだろうか。近い物を感じる。飲みたいけど運転で飲めない、それでも欲求を満たしたい。そんな時に炭酸水を真っ先に注文する。
子供の頃は早く大人になりたくて、少し背伸びをしていた。牛乳を抜いたコーヒー、シガレットを模したお菓子、化粧台のルージュ、たまにしか着ない衣類。
炭酸水がその1つだ。ビールの匂いはなんとなく知っており、炭酸水を初めて口にした時は大人の味がした。
今となってはなりたくもない大人になり、過去のしがらみに囚われながら社会に揉まれて生きている。
大人だけど大人になりきれていない、まだ子供でいたいけどそうも言っていられない。コーラは飽きたけれど欲しいものはビールではない。憂さを晴らすために今日もペットボトルを開ける。