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続・佐渡島一周サイクリング

さて、前回の旅の続きです。

佐渡島を半周と余分に横断した松田少年、スタート地点と同じ街、両津で二日目の朝を迎えます。
「一周旅行楽しんでください!」と送り出してくれたレンタサイクルのお姉さんも、まさか一日経ってまだ同じ街にいるとは思いもしなかったでしょう。

一日目の晩、宿にてもう一泊できないかの相談は済ませていたので、着替えとか諸々のおっもい荷物は部屋に置き、最低限の荷物に絞って家を出ることができました。怪我の功名というのでしょう。これで余分に走る15km分ぐらいの体力は浮くだろうと信じます。

絶門(絶望の門出)

二日目、一日目と同じだけの距離が走れたらOKなので気が楽かと思われるかもしれませんが、いくつかの絶望が既に横たわっています。

  1. レンタサイクルを17:00に返すため、一日目より4時間ほど前倒しで完走する必要がある

  2. 依然尻が割れるように痛い(4つに)

  3. (宿を取り違えたため)同じ道を無駄に横断しなければならない

  4. 大きな坂が二つ続く(らしい)

  5. 既に寝坊している(一日目から4時間巻くには5:00出発としたかったが、実際は7:00起床)

最初に考えるべきは、時計回りか、反時計回りか。
方向音痴兵庫県代表としてはデフォルトでまず逆向きに進むものですが、今回に限っては逆向きに走ったってゴールできてしまうのです。

反時計回りであれば、まず昨晩と同じ道を通ったのち、でかい坂が二つあり、後半はひたすら平坦な道であるようです。
最初に辛いか最後に辛いか、という選択。

ここで問題になるのがバッテリーです。平坦であるといえど坂の多い島なので、前半でバッテリーを使い切り、後半切れるといつ来るかわからぬ坂に怯えることとなり、精神衛生上非常によくない。
ただ、最後に通ったことのある苦い思い出の道を経由してゴール、というのは無理すぎたので、結果的に一日目と同じ、(最初に辛い)反時計回りを選択しました。

7時に出発すると、17時までは10時間。130kmぐらい進むには時速13km+休憩の分だけ加速する必要があります。

現実的か?

一瞬頭をよぎりますが、結局考えても前には進まず、前に進められるのは自分の二本の脚のみであることはわかっているので、無心で出発するわけです。つけ麺の特盛頼んだ時に近しい感覚でしょう。

朝のひんやりした空気が気持ちいい。一度通った道スタートなので多少心にも余裕があります。
最初はズキズキ響いた尻の痛みも、(文字通り)肩の荷が下りている関係かだんだんとほぐれていくような気もしました。尻が割れる、よりも平べったくなる(煎餅布団みたいに)という心配に切り替わります。
「ノーカン」という心持ちのまま、30km弱を走り切ったところで、ここからそろそろとでけぇ坂が姿を見せ始めます。

二連・地獄坂

ああ、これが一つ目の坂だ。

そう思わされる急な坂が現れます。
出し惜しみをしても仕方がない、と思い電動で遠慮なくぶっ飛ばします。
車体が重いので、電動の力を借りても相当な脚力を消費しないと前に進みません。
バッテリーはみるみる減ります。体感的には平地の三倍。
だいたい1つ目の地獄坂を越えるまでに、1つ目のバッテリーの半分ぐらい消費しました。

ドカンと登ったらドカンと降りるものです。
坂を越えて地獄下り坂を通り過ぎると、まだ海沿いまで降り切らないままに二つ目の地獄坂に入ります。今が一番辛いから、言うてる間に日は高く昇ってきました。
この日、今はパジャマにしている作務衣+旅人みたいな帽子でチャリを漕いでいたので、心持ち人目を引く気もしつつ、どうなってもいい服なので遠慮なく汗を拭きます。あんまりタオルで汗を拭くという発想はありません。

旅あるあるですが、しんどい時ほどいかな絶景が広がっていても目に入らず写真も撮ってないので、振り返りにくかったりします。

ストーリー性のない写真しかない

うわっ…わたしの道、キツすぎ…?

この旅、「たけ」さんの下記ブログを大いに参考にしています。

こちらのブログとは結果的に逆回りになりましたが、どれが佐渡島一周道となるか見極める上で大きな指針となりました。

一日目は佐渡島一周道としてルートが引かれていたので全く迷うことはなかったのですが、この辺りから海沿いが岩盤すぎて、道が内陸側に入っていくのです。
佐渡島にまたがる山を内陸側に入るのですから、容赦のない坂に当たります。ただ外周の道を行くだけでは、一周路が成立しないようになってくるのです。

こちらのブログでは南西端側において外周側の道を一度だけ省略し、内陸側を通っている箇所がありました。何らか通れないようになってるのかとも思いましたが、行ってみるとそんなこともなく普通に進めるのです。

しかし、地獄坂二つを超えたというのに、まだアップダウン激しい道に入ります。進めば進むほど、「これは省略したくもなる」と思わされる妙道です。(実際省略したのかわかりませんが)
そして本道から外れて進む合間にマップを流し見てみると、またなんだか嫌な予感がしてきました。
知らず知らず「四角い部屋を丸く掃く」どころではない大省略をかまそうとしているのです。

何度も頭をよぎる逆境ナイン

また葛藤です。

ただ一周したいだけなのに、なぜこうも少ない選択肢をミスるのでしょうか。
このまま進むとかなりの省略になってしまう。しかし戻ると、先ほど滑り降りたばかりの地獄坂にまた足首ぐらい浸すことになるのです。
ただでさえ朝から余分に島を渡っている中で心身ともにけっこう参ってきている中での引き返し。

「まっすぐ自分の言葉は曲げねェ」
胸の中のナルトが囁きます。
「マシュマロ実験というのがあってね」
耳奥の怪しい博士が呟きます。

自分はここに23連休も取って何をしにきたのか。
ただサイクリングをしにきたわけではありません。
一生モンの宝(おもひで)を作りに来ているのです。

(便宜上)泣きながら引き返し、先ほど下った坂をえっほえっほと登り返します。もうバッテリーなんか知らん。地獄坂はもう超えたのだからどうとでもなる。
程なく最後であろう坂を下り、南西端に一直線に向かいます。
ここから一日中どこかやけっぱちなところがあったと今になって思います。

坂に浮かれていましたが、けっこうタイムリミットが迫っています。

激しい坂道をサーっと降りた先に、ぽつりとブランコを見つけました。
江積のブランコ、と呼ぶらしいです。

本当にこれしかない

わざわざ行く、がテーマのこの旅ですから、誰が見るわけでもなくブランコを漕ぎます。
二つ並んでいるので、一応どちらも漕いでおきます。本当は女と二人で来たりすると良い場所なのでしょう。
いくらか観光地としてのあざとさを感じつつ、風がよく通り、カモメも鳴く良い場所でした。
ここでできることは全部やった、と思い始めたところで、再び足早に自転車の上に戻ります。

ここからどこかに寄った、という記憶自体がございません。
事実、Googleマップのタイムラインでは5時間半に渡り自転車を漕ぎ続けたことになっており、わかりやすいマイルストーンである南西端の沢崎鼻灯台も、どうやらナチュラルにスルーしたようです。全然道沿いに無いのです。

絶対に休憩は取れ

休まずにそこそこのペースで漕ぎ続ければ時間通りに着く、ということだけを考えてひたすら自転車を漕ぎ続けました。途中パンをかじる時もレッドブルを流し込む時も、そしてその缶を捨てる時も自転車の上で、止まったといえば信号待ちぐらいなものです。
トイレにも行った記憶がありません。その辺で垂れ流してるかもしれませんが。

佐渡島の東側は、ひたすら平坦で海沿いを進む良い道です。
島の4分の1に当たる部分を、ただただ駆け抜けました。ある種の「ゾーン」と呼ぶこともできるかもしれません。
17時リミットのところ、スタート地点に設定したこの地点のタイムスタンプが16:26となっております。考えうる限りベストな時間に帰り着きました。

本当にやってしまったママチャリ一周

自転車を元の位置に納め、レンタサイクル窓口に戻ります。
「すみません、返却で」「はい、どうも、大丈夫でーす」
これだけのやり取りです。まさか島をママチャリで一周してきたとは思うまい。行きに受付をしてくれたお姉さんと再会できたらエモかったな、と思いましたが、そういうドラマはここでは無かったようです。

もう半周を達成

長いようで短い旅が終わります。(言いつつあと11日ほど続きますが)

一日ぶりの宿、今度こそ安息の中で酒を空けます。あとは早起きして小樽行きの船に乗るだけですから、翌朝の体力を気にする必要はありません。16時間の船旅なので、どうせ体力は上限を超えて回復予定です。取る宿を間違えた結果1万円ほど余分に払って泊まっているので、必要以上に寛がないと損です。(翌月30万近いクレカ請求が来るのはまた別のお話)

一日目よりも早い時間に宿についているので、一層ゆっくり温泉に浸かります。

「あ゛ぁ〜〜〜」

首の後ろあたりからさすがに声も出ます。

寝坊ぐらいすればよかったのでしょうが、こういう時朝は強く、余裕で間に合う時間に起床するのです。
地図オンチではあるので、船乗り場を間違えはしました(あと佐渡島に向かう時も集合時間ナメ散らかして最終乗船時刻ちょいアウトな時間に乗船したりはしました)
神は二物を与えないので、朝の強さと引き換えに地図の強さを失ったわけです。

さてこの旅、何がいいって「再現可能」なのです。誰でもできる。
同じ島が同じようにそこに在り続けるわけですから、誰がいつ回ったっていいのです。同じような逆境に当たり、同じ頻度でイレギュラーに遭うことができます。
安全にイレギュラーに遭えることなどそう多くはありません。
新潟までの夜行バスと新潟からの船を取れればすぐです。

さぁ、佐渡島へ行きましょう。
同じ道を通って飲む酒は美味いだろうこと請け合いです。

ほなね

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