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メタバースはSecondLifeの轍を踏むのか

Facebookが社名変更までして本腰を入れたり、各社からスマートグラスが発表されたり、MetaTokyoの空間内通貨が5時間で完売したり...と、にわかに盛り上がりが過熱しているメタバース界隈。今後、どんな世界に成長していくのか とても楽しみです。
そんな中、そこここで耳にするのが「”SecondLife”と同じじゃないの?」というコメント。実際、私もSecondLifeに参入した経験があるだけに「既視感のある光景だなぁ」と感じていました。
そこで今回は、メタバースはSecondLifeと同じ運命を辿るのか否か、何が同じで何が違うのか、つらつらと書き連ねてみたいと思います。

SecondLifeって?

今を遡ること15年ほど前、Linden社の提供するSecondLifeというメタバースサービスが登場しており、一時期は国内外の大企業が押し寄せるように参加。スウェーデンなど国の大使館までもが参入するという大きな盛り上がりに。それを見て二匹目のドジョウを狙い「自前のメタバース空間」を開発/提供する企業も多くありました。
SecondLife空間内では独自の通貨(30億円以上の取引量だったようです)が使われ、空間内での観光やファッション、不動産業、果てはギャンブルや風俗産業までが営まれており、多くのクリエイター/消費者が活動していました。
私の勤務先でも、その5年ほど前から「ブラウザで3D表現ができないか」と試行錯誤していたのもあってテスト的に参加。コンテンツクリエイターとしてはそれなりの知名度と存在感を得ることができました。
しかし、その人気もバブルが弾けるように1年程度で急速に収束(弊社も撤退)。今もSecondLifeのサービス自体は継続していますが、今回のメタバース関連トピックにおいて表舞台に出るようなポジションではありません。

SecondLifeとの共通点

アバターが2D/3Dだったり空間内通貨の有無だったり...など、メタバースにも色々と幅はありますが、おおよそどのメタバースも
・BtoC、CtoCコミュニケーション空間を提供するというコンセプト
・PCスペック/高速回線を要求している
という流れが根底にあると言えるでしょう。
当時はADSL→FTTHへの移行やGPUの進化などがあり、現在の5G化・VRゴーグルなどのデバイス高機能化といった環境変化と重なります。そこに逆張りして「低スペックで楽しめるメタバース」が後追いで出現していたという状況も、共通項として括れそうですね。

そして、やはり特徴的なのが、
・ムーブメントが急速に起こった
ということ。この空気感がよく似ているがゆえに、15年も前のサービスが今もって話題に上っているわけです。
性急にムーブメントが興ったことによって、SecondLifeの理想と現実のギャップ解決(例えば、いかにも日本には馴染まない初期アバターなど)をユーザーが待てず、熱が高まる以上の速度でブームが去りました。SecondLife以外にもプラットフォームが乱立し、結局どれも確立に至らなかった面も後押ししたかもしれません。

セカンドライフとの相違点

一方で、現在のメタバースとSecondLifeとの相違点としては
・オンラインゲーム等の体験によって、メタバースに慣れているユーザーが多い
・ムーブメントの環境要因に、NFTやテレワークなどが重なっている
・プラットフォームが1強ではない
・サービスの目的が(SecondLifeよりも)明確である

という部分が挙げられそうです。
ユーザー同士のコミュニケーションができるオンラインゲームは当時からありましたが、現在はMMOやRTSだけでなくFPSやスポーツなどのジャンルにも拡大しており、そのユーザー数は圧倒的に増加。グラフィック向上やアバターの詳細設定など、よりパーソナルな自分を投影できるようになり 没入感の増幅に寄与しています。ライトユーザーがとっつきにくかったSecondLifeとは、ユーザー側の経験値もかなり異なると言えるでしょう。

しかし最も大切な相違点は、メタバース空間における「目的の明確化」であると考えています。
SecondLifeでは「ものづくりもサービス提供も友人形成も結婚さえも全てできる」のが売りでした。それは非常に自由度が高かったのですが、一方でユーザー間のコミュニケーションは「クリエイター」と「消費者」の立ち位置ばかりに限定されてしまい、当初に望まれた(新たな友人形成などの)多様なコミュニケーションの場とはならなかった面があります。
しかし今回、SecondLifeのような1強のプラットフォームはいません。社名変更まで行ったFacebookでさえも「競合他社とどう切り分けていくか、どこを専門とするか」を明確に打ち出してくるはずです。これが、むしろ業界メリットとして働くと思われます。
ユーザーが“商品を試用するならばこのメタバース”/“友人を見つけるのが目的ならこのメタバース”...など、目的に応じた場を都度都度選ぶことで、プラットフォーム側は コミュニケーションの相手/内容が明確化し、納得感のあるユーザー体験へと繋げてくれることでしょう。そこに「3D空間の物珍しさ」が入る余地は少なくなるはず。
メタバースという市場がバブルで終わらないためのキーは、ここにあると感じています。

で、メタバースはコケるの?それとも主流なコミュ手段になるの?

5Gで通信が高速化し、VRデバイス技術が向上することで メタバース内のコンテンツクオリティや没入感はSecondLifeの比ではなく高まります。NFTと連携することで、空間内コンテンツの市場価値も上がるかもしれません。また、何が当たるかわからない今、プラットフォーム提供側として将来的な可能性の幅を広げておきたい...というスタンスも理解できます。
しかし『共通空間にて大人数がアレもコレもできるメタバース』は、SecondLife同様に“目指した将来性”に辿り着く前に役割を終えることでしょう。
また、シンプルなCtoCコミュニケーションが目的であれば、LINEやtwitterどころかzoomの手軽さにさえ、メタバースはかないません。それらにとって代わるようなコミュニケーションツールには(少なくとも当面は)なり得ないでしょう。

一方で、リアルイベントの代替としてのメタバース、などには可能性が大いにありそうです。たとえばアイドルの握手会やサービスの展示会など、実際に参加できるのがベストなれどそれが叶わない...という事情は往々に存在します。
こういった際、パブリックビューイングのような形では相互のコミュニケーションは取れませんし、zoomなどのカメラ映像では全体像が見えません。さらにメタバース内におけるアイドルの一挙手一投足を記録すれば、リアルタイム以外にも“3D空間としてのライブ記録”といった新たな価値も生み出せます。イベントやキャンペーン、eラーニングなど、メタバース空間でコミュニケーションを行うメリットは大いにありそうです。
こうなってくると、SecondLifeのように「統一されたメタバースプラットフォーム内で色々なコミュニーション形態がある」のではなく、「目的に応じたコミュニケーションの場」としての小規模メタバースをニーズに合わせて選ぶ方向で浸透していくのが現実的なように感じます。

『webサイトのように数多のメタバースが生まれては消える』ことを低リソースで提供できるプラットフォームが、数年後に覇を唱えているのではないでしょうか。

いま販促企画の現場では、世の中のメタバースの流行感とは別に(むしろ「今更ながらDXを何かやらなきゃ感」ではありますがw)VRやARの注目度が一周遅れで高まってきています。数年後にメタバースが死語となっていなければ、タッチポイントや購買地点においても、将来的にはそこへと合流していく流れになることでしょう。個人的には、とても面白い変革になると思います。
そんなワクワクする未来へと繋がっていくためにも、昨今のメタバースはSecondLifeの轍を踏むことなく、地に足を付けて着実に市場を作っていってほしいと願っています。

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