『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』
「彼らも私たちと同じ、意思と感情を持った一人の人間である」。必ずと言っていいほど、こうした言葉が技能実習生関連の記事や書籍には添えられている。多額の借金を抱え来日し、労働基準法を無視した環境で非熟練労働に従事させられ、逃げ場のない状況で彼らは日々追い詰められている。
著者は、もちろんこうした現状を前提としながらも、しかし「技能実習生はかわいそうな被害者である」といった価値観だけでは彼らの姿を捉えきれていないとも指摘する。例えばベトナム語で兵士を意味する「ボドイ」という名で、日本各地に身を潜めている元技能実習生が一定数いる。彼らは過酷な職場から逃亡した人もいれば、初めから脱法行為を目的とした逃亡ありきで来日した人もいる。他にも、日本人のサポートを受けながら職場に訴訟を起こした者もいれば、かつて自分を詐欺的な手法で騙した機関の職員として現在働いている者もいる。
そんな彼らを「被害者」という一つの属性で言い表すことはできない。まさに「彼らも私たちと同じ、意思と感情を持った一人の人間である」からこそ、時に反抗し、脱走し、そして搾取される側から搾取する側になることすらある。技能実習制度という不合理な制度に巻き込まれ、日本と関わりを持ってしまったアジアの若者たち。彼らがなんとか生き延びようとする姿が、この本には非常に生々しく記録されている。