英語教員の負担を下げ、生徒の学びを加速させる『TypeGO』|インド人開発チームと実現した2ヶ月の高速開発
TypeGOは、英語教員の業務負担を軽減し、効率的な指導をサポートすることを目的として開発されたAIツールです。
日本の先生方に広く活用されており、2024年夏、多国籍メンバーによるわずか数ヶ月の開発期間でβ版が完成しました。その後、公開からわずか3ヶ月で約10,000人の利用者を獲得しています。
日本、インド、オランダ、キルギスといった国々にまたがるバックグラウンドの異なるスタートアップチームが、どのように短期間でこの成果を実現したのか。
今回はインド開発チームとSwell代表・青波による対談を通じて、その秘訣に迫ります。
青波みさと|株式会社Swell代表取締役
1992年生まれ。立教大学異文化コミュニケーション学部卒。TESOL、中学高校教諭一種免許状(英語)保持。米国カリフォルニアでメキシコ人移民に英語を教えた後、国連女性機関(UN Women)東ティモール、UNESCO-UNEVOCドイツで広報に従事。米系リサーチ会社Guidepointのシンガポール支部でリサーチャーを務め、2022年に株式会社Swellを創業。
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Twitter:https://x.com/misato_swell
Deepak Edassery|ONEPIXLAB株式会社
1987年インド生まれ。コーチン科学技術大学卒(コンピューター・アプリケーション修士号保持)。ONEPIXLAB株式会社取締役。2015年に来日し、ソフトバンク、NSSOL、LINE、キリンなどのクライアントを担当。ソフトウェアエンジニア/ブリッジエンジニア/インド部門プロジェクトマネージャーとして、多様な領域のITシステムプロジェクトで活躍している。TypeGOではシステム開発の中心として従事。
Eldhose Kuriakose|ONEPIXLAB株式会社
1992年インド生まれ。コンピューター・サイエンス・エンジニアリングの学位を保持。ONEPIXLAB株式会社CTO。インドにてJava開発者としてキャリアをスタートし、約3年間勤務。2016年に日本へ移住し、LINE・GREE・DMM・ソフトバンク・富士通などのクライアントを担当。ソフトウェアエンジニア、ブリッジSE(インド-日本、米国-日本)として活躍している。TypeGOには外部CTOとして参画。
事業への思いは「genuine」か?開発チームに入る前、実際に長野を訪ねて信頼関係が芽生えた
── 早速ですが、青波さんとDeepakさん・Eldhoseさんが知り合ったきっかけを教えてくれますか?
青波:最初に出会ったのは2024年の1月頃です。LinkedInでエンジニアの採用募集を出していたところ、Deepakさんよりメッセージをいただいたのがきっかけでした。
Deepak:かなり偶然のことでした。たまたま青波さんのプロフィールをLinkedInで見つけて、TypeGOの構想を読んだときにgenuine(誠実)な印象を受けたんです。
私たちの大事にしている考えは、事業をするのに大切なのはお金ではなくて、人々の生活に役立つか、あとは思いが誠実であるか、といった部分です。お金についてはそれらを達成したあとについてくるものですから。
青波さんはそこが我々と同じだと思ったので、Eldhoseさんにも青波さんのプロフィールを見てもらったうえで、コンタクトを取りました。
青波:TypeGOを多言語プラットフォームとして開発していくことは決まっていたので、Day1でグローバル対応できるチームを構築するために、開発部門については全ての選考を英語で行っていたんです。
採用に関して国指定はしていなかったのですが、たまたまインドからの応募のうち今回ご縁がありました。
── 面談の結果、お互いの印象はいかがでしたか?
Deepak:青波さんは文章で受けた印象と全く同じ人で、すぐ「一緒にやりたい!」と思いました。
Eldhose:青波さんとTypeGoの話を聞いて、私も色々と調べてみました。 また青波さんとコミュニケーションを取ってみて、「人々の生活をより良いものにしたい」という真摯な姿勢と意欲を感じました。
Deepak:面談前に、FacebookやLinkedIn、noteなど、オンラインで調べられることは全部行いました(笑)。
青波:恥ずかしいですね(笑)でも本当にありがたいです。ここだけの話ですが、正式にジョインしていただく前、2人が弊社のある長野までわざわざ訪れてくださったんですよ。雪で足元が悪い中、ご家族も一緒に。
ビジネスにおいて信頼はとても重要です。最初の顔合わせでお互いのキャリア面だけでなく、家族や趣味嗜好など、パーソナルな部分をすり合わせられたので安心しました。
Deppak:最近はリモートで仕事をしたり、ミーティングをしたりすることが一般的になってきていますが、一緒に仕事をするようになったら、まずは直接会った方がいいと思います。
一度会って話をすれば、お互いのことをより理解することができますし、オンラインミーティングも含めて、今後のコミュニケーションをより良い形で行うことができるようになると思っています。
リモートコミュニケーションは「開発重視」で。とにかく「丁寧に」「助け合い」を徹底する
──普段は日本とインドそれぞれでプロジェクトに取り組んでいますよね?リモートかつグローバルな環境ではコミュニケーションの課題も多い気がしますが、どのように工夫されていますか?
青波:文化的な衝突は今までないのですが、時差もあるので、コミュニケーションスピードは改善を重ねてきました。
例えば、最初はSlackを利用して日本語と英語の両方でやり取りをしていたところ、途中から「Jira」というソフトに切り替え、言語も英語に一本化しました。
Slackを使って日本語でやり取りしてしまうと、その情報をDeepakさんやEldhoseさんがインドの開発チームに共有する工数が発生してしまいます。日本語話者であるメンバーにとっては楽なのですが、チーム全体で見ると意味のないコミュニケーションや誤解を生み出しかねません。
なので細かな議論も含め、インドの開発チーム全員がいる場でオープンにしました。結果、TypeGOが現在提供している教員向けのβ版は、2ヶ月で完成させることができました。
Deepak:Jiraは、メンバーが忙しくなったときにも、タスクの明瞭化とスピード感の向上に役立っています。 私たちは、必要でない限り、どんなツールも強制しません。 常に、業務に適したツールを選択するよう心がけています。
また、個人的にはTypeGOの開発で特に苦労したことはなかったです。インドの大学を卒業したあと、日本で数年間仕事をしていたからだと思います。
違う文化圏ではありますが、チームでお互いに助け合って進めることによって、そういった課題は解消できるのかなと思っています。
Eldhose:補足すると、Jiraを導入したのは、要件が増えてきた頃でしたね。
Jiraを導入する前は、Slackでのコミュニケーションやスプレッドシートでタスクを管理していて、それで十分なフェーズもありました。
Jiraを導入したことで、タスクのトラッキングや各タスクに関連するコミュニケーションの負担が軽減されたと思います。何よりもプロジェクトの成功を重要視しています。
── コミュニケーションツールを途中から変えるのは簡単でしたか?
青波:使い慣れたツールから移行するのは、メンバーの教育コストもかかりますし、正直どうしようか悩みました。ただ、開発の根幹を担う彼らが「良い、使いやすい」と言うのであれば、TypeGOの発展のためにも合わせるべきだと判断しました。
実際に使ってみるとJiraの方が「どのタスクがどのように進んでいるのか」が見えて開発しやすいし、今では無駄なコミュニケーションはほとんど省けていると感じています。
TypeGO開発のこだわり|教員・生徒たちの声を聴き続け、細部にまで反映させる
── TypeGOの開発で特に注力したポイントはありますか?
青波:TypeGOは、英語教員の負担を下げつつ、生徒の学びを加速させるツールです。なのでプロダクトを使う人々にとっての「effortless」を強く意識しています。
Effortlessは文字通りeffort(努力を)less(少なくする)という意味ですが、TypeGOは、先生の指導負担を軽くし、生徒の勉強を楽しいものにし、自治体にとってのICTツールの導入負荷を限りなく下げるといったように教育に関わる先生・子ども・自治体の三方全てに対してのeffortlssを実現したいと思っています。
すべての先生、すべての子どもたちが対象なので、理想はインターネットさえあれば世界のどこでも、誰でも扱えること。
やりたいこと全てを盛り込んだ肉厚のプロダクトよりも、先生や子どもたちが楽しみながら最小工数で最大の成果が出せるバランスを模索し続けています。
Eldhose:そうですね。TypeGOチームでは、ツールのUIをとてもシンプルで使いやすいものに保つことに努めていて、私も開発で意識しています。
私たちは非常に速いペースでTypeGOを開発してきましたが、常に品質と優れたユーザーエクスペリエンスを維持することに注力していました。
青波:子どもたちが快適に学べるテキストの大きさはどのくらいか、BGMをどうするか、あとは耳障りにならないキーボード音はどれか、など……すごく細かい開発アップデートも重ねてきましたよね。
Eldhose:はい。現場の声を聞かないとどういったものを作れば負担が下がるのかが分からないので、全国の先生から集めた声を元に調整して、また色んな子どもたちにも触ってもらっています。その結果どのように感じたか、などをずっとテストし続けています。
これからの展望とTypeGOチームの描く未来
──最後に、今後の展望やビジョンなどをお聞かせください。
Eldhose:私たちは、未来の世代を形作るプロジェクトに参加できることに感謝しています。 既に、TypeGOをシームレスにスケールさせるために動いています。 TypeGOを次のレベルに押し上げるために準備中です。
Deepak:青波さんは良い考え方を持っていらっしゃるので、TypeGOだけではなく、まだまだ良いビジネスのアイディアや、プロジェクトアイディアが出てくると思います。そうしたコラボレーションも楽しみです。
青波:楽しみですね。TypeGOが本当に目指したい姿は「世界のあらゆる言語と文化のプラットフォーム」です。今TypeGOで学べるのは英語とタイピングですが、英語に限らず他の言語もどんどん増やしていく予定です。
私の今までの経験から、自国の言葉だけではなく、他言語も学ぶことによって、どんどん自分の頭の中に自国の考え方だけに縛られない柔軟な思考ができるようになると思っています。
文化や言葉の引き出しによって思考の選択肢を増やせるように、正しい文法よりも、実生活で使われるリアルで面白い表現も収録していく予定です。
TypeGOについて
TypeGOは、AIで英語教員の負担を下げつつ、生徒の学びを加速させるEdTechツールです。
GIGAスクール構想(PCやタブレットの導入)やCBT形式の受験、増え続ける単語量など、英語教員の負担を軽減する「授業支援ツール」として開発され、2025年1月現在、現在約30都道府県、75校、生徒数にして約10,000名にご利用いただいています。
https://note.com/typego/n/na75fac178d19
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