中共軍の砲兵

ここでは、日中戦争下での中国共産党軍の砲兵隊について述べる。

砲兵に期待できない

まず、中共軍は、あまり砲兵に期待していなかったようである。

我々は今日の物質条件下に於て砲兵と軽機関銃の火力を重視するは誤りなり。

飯沼部隊「他山の石」『偕行社記事』偕行社、昭和16年、第803号、101ページ。

上記は、日本軍部隊が鹵獲した中共軍の戦闘詳報(百団大戦)の抜粋である。
砲兵や軽機ではなく、手榴弾と銃剣で「敵を消滅」すべきという趣旨の記述だ。

問題となる「物質条件」が何なのかは、記載されていない。
しかし、おそらくはモノ(弾薬や兵器)の不足だろう。

モノ不足だから砲火力に期待するな、という主張がなされていたことに注目したい。

砲兵の配備状況

砲兵の配備状況について、ざっとアジ歴で調べてみた。

すると、上記の主張を裏付けるような、砲兵の欠乏を示唆する史料が見つかった。

信憑性は不明だが、日本軍史料には、以下のような情報がある。

・第120師の隷下には6つの団(連隊)があり、団には1個迫撃砲連(迫撃砲2門)がある。
師の直属の砲兵は無く、団の下にある営(大隊)も砲兵を持たない。
そのため、砲兵を運用しているのは団だけとなる。
また、迫撃砲連を持たない団もある。
すべての団が迫撃砲連を持っていたとしても、1個師団に12門の迫撃砲しかない。
(C11110434700)

・「八路軍」が保有している砲は、迫撃砲82、擲弾筒20、「平射砲」6である。
砲弾は迫撃砲弾が2000発(1門あたり約24発)、「山砲弾」「平射砲弾」は合わせて400発しかない。
この状況では戦闘はおろか訓練も困難であろう。
保有数は少ないものの、迫撃砲・迫撃砲弾は生産できたのかもしれないので、戦力として活用できた可能性は否定できない。
しかし、迫撃砲以上の砲・砲弾は供給される可能性が極めて低いだろうから、ほとんど活動できなかったものと思われる。
(C11111670700)

砲兵の貧弱さの原因

このように砲兵が貧弱であったことの原因は、以下の2点だと思われる。

  • 「抗日根拠地」(中共の支配地域)の工業力が貧弱で、砲や砲弾を大量生産できない

  • 外部勢力(米ソなどの外国など)の軍事援助を受けていない

まとめ

「中国軍」といえば迫撃砲だが、中共軍は迫撃砲を十分に保有していなかった。
また、迫撃砲以上の砲は極端に少なく、ほとんど運用されていなかったものと思われる。

このため、中共軍は砲兵に重点を置いた戦闘は出来なかったものと思われる。







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