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ギャラを踏み倒して逃亡した自称経営コンサルタント
「フリーランスライターのブツクサひとり言」第25回
東京で経営コンサルタントをしているという人物から「チラシ制作の原稿をつくってほしい」というメールを受け取りました。
「デザインはこっちでやるから、テキストを書いてほしい」という依頼です。
2万円の見積もりを出し、相手もそれを呑んだので原稿を書いて納品しました。
もうお分かりだと思いますが、相手とは一度も会っていませんし電話で声も聞いていません。
今だとそういう取引はしないのですが、当時はまだ経験が浅かったのです。
相手から知らせて来た住所へギャラの請求書を送り、1カ月が経ちました。支払いを約束した日になっても、振り込みがありません。メールに返事もありません。
思い切って電話をかけてみることにしました。もしかしたら番号がデタラメかもしれませんが……。
しかし、意外にも電話は通じました。相手と言葉を交わすのは初めてです。
「ギャラが振り込まれていないようですが?」
用件をストレートに伝えましたら「すみません、入院していましたので」といいます。請求書も届いているというので、住所は本物だったようです。
入院はどうせ言い訳なのが分かっていましたが、「今週中に振り込みます」という言葉を信じて待つことにしました。今思い返すと、お人好しが過ぎました。
その約束が守られることはなく、電話にも出なくなり、ついに「ただいまおかけになった番号は現在使われておりません」というアナウンスに変わっていました。
弁護士に相談してみると、2万円という金額が微妙でした。法的手段を講じるには、金額が小さすぎるといいうのです。支払いを求めて提訴しても、弁護士へ支払う報酬のほうが高いし、時間と労力と精神的な負担を勘案したら費用倒れになるため「やめといたほうがいい」とはっきり言われてしまいました。
住所は分かっているから押しかけることもできなくはありませんが、大阪~東京間の交通費のほうが多くかかってしまいます。しかも、その住所に相手が居続けている保証はないのです。
電話を解約したということは、もう逃げられてしまったと考えるのが妥当です。
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結局、取り戻しのためにかける費用と労力を差し引きすると損のほうが大きい。何もしなければ2万円の損、アクションを起こしたら2万円プラスアルファの損。どっちにしても損にしかならないのだから、被害は小さいほうが良いというわけで諦めざるを得ませんでした。
この1件以来、個人からのオファーは原則として受けないことを決め、例外的に受けるときは必ず相手と会うことにしています。