取材相手を怒らせてしまったら?
「フリーランスライターのブツクサひとり言」第10回
取材に挑戦したいと思いながら二の足を踏んでいる理由のひとつに、もしも何か失礼なことをいってしまって怒らせたらどうしようという不安があるのでは?
結論からいえば、取材相手がライターに向かって怒りをぶつけてくる状況はほとんどありません。
取材を受けてくれる時点でウェルカムな姿勢で対応してくださるので、社会人としてふつうに対応している限り、怒りを買うことはありません。
私の経験をいえば、33年間で取材相手から怒られたのは1回だけです。それも私のせいではなく、メディアから取材のアポが通っていないことが原因でした。相手からすれば、どこの馬の骨とも知れない男がいきなり訪ねてきて「取材にまいりました」なんて、そりゃふざけた話ですよね。
つまり自分のミスで相手を怒らせるという事態は、ほとんどないと思っていいのです。
「ほとんど」というワードを2度使いました。「時には、あるかもしれない」ということです。
では、取材相手から怒られるって、どんなときでしょうか。
相手も大人ですから、ただ機嫌が悪いとかムシの居所が悪いだけで、ライターに八つ当たりしてくることはありません。
たとえば、事前のリサーチでホームページに目を通しておけば分かるような、基本的な情報をまったく把握していないとき。取材先が企業ならば「何をしている会社なのか」ぐらいは、前もって調べておくのが当たり前です。そうじゃないと、相手から見れば「何を聞きに来たのですか?」ということです。
企業のホームページはもちろん、他社の過去記事にも目を通しておくことはリサーチの基本です。
ほかには、相手の話に反論しないこと。人それぞれに考え方や意見が異なります。ときには政治的信条やイデオロギーが、ライターと真っ向から対立する人を取材することがあるかもしれません。
それでも話を聞くのが、プロのライターです。
では、怒らせてしまったら、どう収めたらいいのでしょうか。
リサーチ不足を認めて、まずは謝罪です。このとき「忙しかったので」などと、絶対に言い訳をしないこと。
「帰れ!」と一喝して相手が席を立って退室してしまったような場合は、非礼を詫びていったん引き取りましょう。やる気アピールで食い下がっても逆効果です。
そして取材相手からメディアの担当者へクレームが入る前に、自分から速やかに包み隠さず報告して対応策を探ります。
もしかしたら他のライターに代わることを条件に、取材を受けてくれるかもしれません。
うっかり反論して怒らせてしまったら、ライターに対する怒りは収まらないでしょう。これもメディアの担当者へ速やかに報告するのはもちろんですが、ライターはそのメディアからの仕事を干される可能性大です。これは受け止めるしかないと思います。
ライターの「仕事」として取材しているのですから、相手と議論するなんてもってのほかです。
取材相手を怒らせてしまい「あのライターの取材は受けない」と個人で出入り禁止になるくらいならなら、まだ優しい対応だと思いましょう。最悪の場合、メディアそのものが出入り禁止になったら損害賠償に発展しかねません。
▽相手に関してリサーチをしておく。
▽自分の考えと違っても反論しない。
最低この2つを抑えておけば、場の雰囲気が悪くなったり怒られたりすることはないはずです。
社会人としてのマナーは、それ以前の常識として――。