取材相手へ謝礼を渡すべきか
「フリーランスライターのブツクサひとり言」第8回
メディアの記事に取り上げられるのは、取材相手にとってメディアに露出するチャンスであり、直接または間接的に世間へアピールする効果があります。
だからといってライターは「書いてやっている」という態度ではいけません。取材のために業務を中断し、時間をつくっていただいていることへの感謝を忘れてはいけないのです。
同業者のあいだでしばしば話題になるのが、取材相手へ謝礼を渡すか否かということ。
基本的には渡すものだと考えています。現金は生々しいし相手も気を遣うでしょうから、数千円分のクオカードとか商品券とか、受け取る側が心の負担にならないていどの謝礼は渡したほうがいいと思います。
そして謝礼は、メディアが用意するべきでしょう。ライターが自腹を切る必要はありません。
一方、謝礼を出さない方針を取っているメディアもあります。私が関わっている新聞社系のWEBニュースのメディアは、取材相手への謝礼が出ません。
だったら感謝の意を表すために個人で謝礼を贈ればいいのかというと、それはNGと考えています。
なぜなら後日、別件で同じ人に別のライターが取材をさせてもらったとしましょう。
「○○さんは謝礼をくれたのに、あなたは手ぶらで来たのかい」と不満をもち、取材の対応がぞんざいになったり、もしかしたらメディアの編集者に向けてクレームが入たりすることも考えられます。
そのように、同じメディアで書いているライターや編集者へ迷惑がかかるため、個人で謝礼を負担してはいけないのです。
新聞社が取材の謝礼をしない理由は、ガセネタを防ぐためといわれています。謝礼を目当てに、本当かウソか分からない情報を売り込まれたら信用に傷がつきます。ですから話題の質や相手に関わらず、取材の謝礼はしないと決めているわけです。
謝礼の出ないメディアとして取材を申し込むときは、金銭のやり取りが発生しないことを最初の段階で明らかにしておくこと。
30数年の経験上、謝礼が出ないことを理由に取材を受けてもらえなかったケースは1件だけでした。
だからこそ、相手の時間を頂戴していることを常に念頭において感謝を忘れず、予定した取材時間を超過しないよう効率よく取材にあたることが大事です。
次回は「取材を申し込む際に相手へ伝えるべきこと」について書こうと思います。