トイレの向こう側 #1分マガジン
今日は計画を実行する日です。トイレの中へ流されてみたい。その欲望を叶えるのです。
僕だって、汚物にまみれるのは嫌です。だから一生懸命に便器の掃除をします。白い水洗トイレは舐めても平気なほど、ピッカピカになりました。
僕は用意していた学校指定の紺色の海水パンツに着替え、水中メガネをはめて準備しました。
トイレの水を流すレバーを〈大〉の方へ傾けると、便器の中に渦が巻き起こります。僕はその中心に向かい、頭からダイブします。
勢いよく流れる水は、夏休みに家族で行ったプールのウォータースライダーより10倍スリルがあります。暗いトンネルを長い間、叫びながら流されていると、だんだんと水温があがってきました。すると突然、垂直に落下し、なにかに落ちました。
水中から顔を出した僕の前には、お母さんが裸で座っていました。そこはお風呂でした。
お母さんは「あなたがトイレ、ピッカピカにしてくれたのね」
と言って僕を抱きしめてくれました。僕はお母さんと一緒にお風呂に入るのも、こんなふうに抱きしめられるのも久しぶりの事だったので、とっても嬉しくなりました。
この記事は、小牧さんの企画に参加させていただいています。
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