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長男(小1)はじめての授業参観の話

長男(小1)が学校でいじめられているかもしれない。
そう思ったのは、小学校入学から3週間ほど経った頃だ。
物はすぐに失くすし忘れるし、加えて挙動も不審なのだ。

箸も水筒も持ち帰らない。
えんぴつは早くも全てがチビているし、消しゴムはぽっきりと半分に折れて真っ黒だ。
上履きは泥水みたいな色が沈着して使い古した雑巾のよう。
赤色だけが半分以上無くなった絵具に、カピカピに固まっている筆。

長男は学校でいじめられているのかもしれない。
このところ心配でずっと胸を痛めていたが、いじめなんかじゃないことが先日の授業参観で明らかになった。
とある金曜日の正午過ぎ、何かを予感させるような横殴りの雨の中、私は授業を参観するため学校に向かっていた。

小学生の下駄箱は自分の記憶より一回りは小さく、28.5cmの私の靴はもう入らない。
下駄箱の上に靴を置きスリッパに履き替えると、案内に従って廊下を進んでいく。
5時間目の国語が、参観する授業であった。
授業の始まる5分前に教室の後ろに入ると、長男がこちらに気がつき手を振った。

一番後ろの列、ドア側から2番目の席に長男は座っていた。
その顔は、笑顔。
ああ、親が見ているから気丈に振る舞っているのだろう。
可哀想に。家に帰ったら、無理をするなと言ってやろう。
目に涙を溜めながら思いを馳せていると、間もなくチャイムが鳴った。はじまる。

授業が始まるや否や、長男の様子がすでにおかしい。
先生が何か言う度、笑ったりお尻を動かしたりして、机の上から教科書やノートがびたんびたんと落ちる。
落ちているノートは前の時間の算数だ。なぜ算数が出ている。

挙句の果てには「あ、筆箱出すの忘れてた!ランドセルから出さなきゃ!」と叫んだ。
もう5時間目である。
2時間目の国語(書写)はどうした!4時間目の算数はどうした!

私の背後にあったランドセルの中から、長男が当たり前の顔で筆箱を取り出した時、私の中の綾南・田岡茂一監督が「何故そこに筆箱があるんだ!?」と絶叫していた。

その後、机を前後左右くっつける形で4人組のワークショップが始まったのだが、長男はイスの上に膝立ちで前のめりになり、お尻をぷりぷりさせながら、1本/分の間隔で鉛筆を落とし続ける。

そしてもう芯がポキポキとなって、すぐ拾うんだけれども、またすぐ落としてポキポキとなる。お尻ぷりぷりさせながら鉛筆落としてイス降りて鉛筆拾う一連の動作が、ピタゴラスイッチのアルゴリズム行進に見えてくるようだった。


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箸が二膳も三膳も入った袋が廊下にぶら下げられていた。
鉛筆は折れるそばから削るため、どんどんチビになっていく。
校舎を出てすぐの池で金魚をじっと見ていたら、思わず踏み込んでしまい足首から下がびしょびしょになったらしい。

廊下に貼りだされた一人だけ抽象的な絵は、上手い風の人が描く油絵みたいに絵具をちゃんと溶かないで立体的に塗られていて、ほとんどが赤だった。
給食も、いつも一番に食べ終わり自己鍛錬のようにお替わりしていると、先生が教えてくれた。

いじめられているより百倍よいが、別の不安が生じてしまう参観となった。

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参観後、ノスタルジックな昇降口から外に出れば、雨上がりの空に、ちょうど親ツバメがエサを求めて低空飛行を繰り返している。
長男の中にも地上の星は見えるだろうか。みゆきにだけでなく、私にも教えて欲しい。


※2019年の日記。一部修正加筆

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