麻雀における「守備的な選択」は「弱気な選択」?AIと人間の視点から考える
先日Mリーグの観戦記としてこういう記事を書きました。
亜樹プロがオーラスの場面でテンパイを取れるところでテンパイを取らなかったシーンです。これに対して私は鳴かないという選択は弱気ではないか、という意見を書きました。
亜樹プロの中ではこの選択は守備的に考えた結果の決断だったと思うのですが、個人的には弱気と感じたというわけです。そこで疑問として浮かんできたのが、「守備的な」打ち方と「弱気な」打ち方の違いは一体何なのか、その境界線はどこにあるのか…ということです。そのあたりのことを少し考えてみましょう。
NAGAの視点で考える
麻雀AIであるNAGAの選択を見ていると、あくまで主観ですがそもそも守備を考えた選択をする頻度が人間に比べて圧倒的に少ないように感じます。とにかく大体の役牌は鳴きたがりますし、危険牌を先に切っておいてスリムに構えるということもあまりしません。さらに相手に先手を取られたときも簡単に諦めずギリギリまで粘ります。
麻雀というゲームはその性質上、アガりが出ない限りほとんど点数が増えません。それどころか相手がアガってしまって点数が減ることもしばしばあります。したがって完全なオリを選択するというのはその局の期待値をマイナスに傾けてしまうことになります。
これはゲームとして考えればかなり損な選択なことは間違いありませんから、当然守備をする選択は減るでしょう。ただこれはNAGAの能力に裏打ちされている面も大きいです。
なぜならNAGAのようなAIは情報を忘れることがありません。加えてメンタルによる打牌のブレなども存在しません。得た情報から確実に牌の危険度を判断でき、絶対にその牌を切ることができます。さらにどこまでいったらさすがにオリるべきか、ということを見誤りません。
究極まで突き詰めて考えていき、人間がAIと同じような能力を手に入れられれば、「守備的な」打ち方というのはその数を減らしていくはずです。したがってAIから見れば人間の「守備的に」打っている打牌は相当な部分が「弱気すぎ」だと考えられてしまうはずです。
つまりそもそも守備的な選択と弱気な選択に境界線などなく、AIから見ればほとんど同じように見えるのではないでしょうか。
人間には「弱気」が必要
その一方で人間はミスをするものという前提は永久不変のものですから、リスクを減らすために「弱気な」打ち回しが必要な場面があることは間違いありません。
AIから見れば自分で仕掛けてさっさと終わらせにいった方がいい、と考えていたとしても、人間はアガりまでの間にミスをするかもしれません。アガりに最短の打牌選択をできるか分かりませんし、相手がどの状況になったらオリるべきかも完全には把握できないのですから。
したがって人間はリスクの程度に合わせて「弱気な」選択をすべきです。ただし安易に「弱気」に流れることはいけません。
まとめ
AIから見れば人間の「守備的な」選択は「弱気な」選択に写るかもしれません。しかし一方で人間にはその弱気な選択が必要なのもまた事実。AIを見習ってできるだけ弱気に打つことは避けつつ、バランスを見極めていくことが大切だと思います。