映画『ブリグズビー・ベア』のこと
自分を形作ってきたもの。大切な自分の一部、かけがえのない存在。
それが実は偽物でした。普通じゃありません。
と言われたら?
主人公のジェームズは、悲劇から閉鎖的な空間で生活し、一週間に一本送られてくるビデオ『ブリグズビー・ベア』を楽しみに成長していきます。しかしある日突然、自分の日常が社会的正義によって、間違ってます本当はこれですと突きつけられる。
プロットの切り取り方、描き方ではいくらでもダークにできる。でも、この映画全然暗くない!コメディ要素もあって普通に笑えました。
何か好きなものがあったとき、それをちゃんと好きだと表現すること。
周りの目、後ろ指、嘲笑。雑音によって、自らの手と足を止めたりしない。
なぜか?
好きだから!それだけ!
ジェームズは、失われた世界を作品制作によって取り戻していきます。瑞々しい発見と驚き、その中でちゃんとブリグズビーベアが教えてくれたことが間違ってなかったと肯定される経験もする。全部が間違ってる全部がおかしいではなく、善悪まだらに混ざり合いながら、その都度考える。行動する。そして、仲間ができる。
『スターウォーズ』でご存知マークハミルがとても良かったです。
物語によって実人生が決定的に変わってしまった彼だからこそ、映画の怖さの体現者であって、同時に多くの人を勇気づけ、救ってきた希望の存在でもあるように思いました。最後のあるコミカルシーンが笑えるし、感動的。泣く。号泣。
表現すること。好きなことを好きと言い続けること。
ブリグズビー・ベアがかわいいと怖いの間の絶妙な顔立ちで、B級作品をゆるく観たいなって気持ちで観てみたら……
ふざけているようで、ふざけてない。映画愛に溢れた、すべての表現者に贈る応援歌のような作品でした。