Mackey fan note011「星の光」
2006年発売のアルバム「LIFE IN DOWNTOWN」収録。
まず、この曲はアルバムのかなり序盤に収録されているのだが、曲の長さなんと6分40秒ちょい。曲調に重苦しさこそないものの、歌詞はかなりメッセージ性に富んだ内容のバラードで、こういう曲を序盤に持ってくるというのはかなり変化球な気がする。「太陽」や「Such a Lovely Place」も同じく6分40秒付近の曲だが、あちらはアルバムタイトルを背負った曲で、トリ、もしくはトリ前に配置されているのに対し、こちらは4番目。胃もたれを起こしかねない。このアルバム自体、タイトルに「LIFE」と入っているだけあってライフソングの濃度が一番あると言っていいほどのアルバムなのだが、この曲がかなりその印象を強めていると思う。
僕個人としては、今までこの曲はあまり聴いていない。別に嫌いなわけではない、ないんだけど、しいて区別するなら「ちょい苦手」くらいの分類の曲だろう。そもそもiPhoneとかで曲を聴く時っておおよそ出かけてるときなので、こういうゆっくりしたテンポの曲はプレイリストから外してアップテンポな曲を中心に聴く、というのが一つの単純な理由だけど。それに加えて、テーマがいかんせん壮大でピンとこないというのもある。何となく輪郭は分かるというか、おそらく伝えたいことは「共存」とかそんなことだろうなとは思うのだけど、いまいちそれが大事だと思う経験が不足しているため、高校生時代から今に至るまで一貫してピンとこず、共感しづらいと感情移入もしづらい。
一つ面白いと思うのは、このアルバムは全体的にラブソングがほぼ皆無なのだが(ここら辺は人の解釈によるところもあるだろうけど)、この曲は一見ラブソングっぽいギミックを取り入れながら歌っていることがライフソングなところだろうか。実際ラブソングを主体にしながらその中にメッセージ性を入れ込むということは、昔も今もよく取り扱われている手法なのだが、この曲の場合「君」と「僕」という登場人物二人で構成されている歌詞なのに、ラブソングの気配はほとんど漂わせずにライフソングの要素だけで仕立てている。そして、そんな曲で歌われているテーマが、「僕ら2人だけが幸せになるのでなく、みんなが幸せにならないと」というもの。これは例えるなら、昔はラブソング(カップル2人のこと)を中心にしていた槇原さんが、ライフソング(全ての人のこと)を主体に歌っていた、その変動そのものを象徴させているような気がして、とても興味深い。
とは言え曲を何となく聴く度にそんなことに思いを巡らせるほど普段脳を使って曲を聴いちゃいないので、結局、最初のほうに挙げた理由を主に、アルバムを購入した当初こそアルバム全体のリピートによりよく聴いていたが、ここ数年はほとんど聴かなくなっていた。
ただ、僕がこの曲を以前より好きになったきっかけというのがあって、2015年のcELEBRATIONというオーケストラを引っ提げたライブの映像を見たとき、この曲のオーケストラアレンジがとにかく美しかった。言われてみれば、原曲の段階からどことなくオーケストラ映えしそうな雰囲気ではあったのだが、実際演奏されるとより分かる。普段の槇原さんのCD、ライブでは聴けない楽器の音色が楽しめて(楽器紹介もこの曲で行われているのも大きいが)、壮大な歌詞にもうまくマッチしていた。このアレンジを映像で目にしたとき、歌詞の意味こそ理解しきっていないものの、何だか一気にこの曲の魅力に気付けたような気がして嬉しくなった。今まで元々好きな曲をライブで聴いて更に好きになることはあっても、そこまで好きと言える程ではない曲をライブで聴いて度肝を抜かれた経験も初めてだったので、そこも新鮮だった。2000年代の槇原さんの曲は歌詞が壮大な分、オーケストラで演奏することで染み入ってくるようなものが意外と多いのかもしれない。同アルバム収録の「月の石」なんかもそうだと思うので、ぜひ次のオーケストラライブの時もまだ演奏されてないさまざまな曲を聴かせて欲しい。
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