すうちゃんとつうちゃんの今日の会話 〜キツネリス〜
すうちゃん:看護師。虫が怖い。
つうちゃん:看護師。太陽が怖い。
すうちゃん:なんか意味わからん壁をすぐ作る人いない?あれすごい腹たつんだけど!
つうちゃん:東ドイツ社会主義陣営のこと?
すう:ベルリンの壁の話じゃないよ!
つう:じゃあ何よ
すう:精神的な壁のほうだよ
つう:抽象的すぎてわからん
すう:だいぶ前に美容院行った時にさ、30代くらいの男の美容師さんが担当してくれたんだけど、話の流れで当時の彼氏に誕生日プレゼントに何をあげたらいいかって相談する感じになったんだよ
つう:うんうん
すう:それで「彼氏さん何やってる人ですか?」って聞かれたから医学生ですって答えたの。そしたら「医者になるような人の欲しいものはわからないっすね」って言ってきたんだよ!
つう:あ〜なんかしんどい
すう:年代もそんな変わんないのに職業だけでそんな判断になるのってなんなの?じゃあ男性美容師の欲しいものは全て分かるのかよって感じよ
つう:天皇陛下が誕生日に何欲しいかとかなら普通に分からないけど、医者ってそんな特別感あんのかな、しかもまだ学生だし
すう:ね、医者っていう言葉に過剰反応して思考を停止したところに愚かさを感じる
つう:おう、厳しいな
すう:だってそうじゃない?
つう:わたしには差別化とこき下ろしを散々されてきた人間が自分を守る壁を作ってるように見える
すう:その見当違いな守備表示が本人の自覚なしに客として髪を切られてる時に行われるのがいやなの〜だってわたしは攻撃してないのに〜
つう:そうだね、やだったね
すう:うう
つう:その男性美容師の話聞いて今すごい思い浮かんだことがあって
すう:なに
つう:なんか自分を守るために必死な人ってナウシカのキツネリスに似てない?
すう:は?あ〜、いや、は?(吟味の末の「は?」)
つう:キツネリスがガブっとナウシカの指噛むシーンあるじゃん。あれってさ、キツネリスは見知らぬナウシカが危害を加えてくるかもしれないからただ怖くて怯えて先手必勝噛んじゃったわけじゃん。で、実際噛んでみたら敵じゃないってわかって仲良くなったでしょ。すうちゃんは別に聖母じゃないから今回は噛まれて終わったけどさ。
すう:「医学部の彼氏」が攻撃だと思われてたってこと?
つう:そうそう、自尊心へのね。彼がそれを攻撃として捉えるようになった様々な過去の経験がその圧のある壁になって現れたということよ。優秀じゃない男性への世間の目線とか自己嫌悪とか市場原理とか賃金格差とか扱いとか女性からの将来性の吟味とか。
すう:とばっちりじゃねえか
つう:すうちゃんが上記の偏見を一切持っていないというならとばっちりでいいと思う
すう:なにそれ、無いとは言い切れないわ、しんど……
つう:私が最初に言ったしんどいもそのしんどいだよ
すう:まあでもこの偏見と怨念の輪廻によって時々嫌な思いをすることも人生だよね、万物は流転しているんだから
つう:いきなり悟りがすごい
すう:これからは聖母になる努力でもしてみようかな
つう:おっいいじゃんいいじゃん、じゃあさ、同じ場面にもう一度当たったらなんて言う?
すう:「お言葉通りになりますように」
つう:は?
すう:「お言葉通りになりますように」
つう:怖すぎだろお前
「お言葉通りになりますように」とはマリアが天使から神の子を受胎したと聞いた時に、その言葉通りの結果になるようにと祈りを込めて言った言葉です。すうちゃんが自尊心の低い男性美容師の発言に対して、その言葉が実現化することを望むようなことを言うのは「自分には価値がないと言うあなたの言葉が実現化しますように」と望む事になってしまいます。どこが聖母だ。
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