週刊 視点旅行 第1号 テクノリバタリアンとシビュラシステム、生成AIによるデータ汚染対策、ダイキンの野性味、投資仮説を生成するGPTを作ってみた、他、2024/3/30
今週の格言
「やりたいこと」と「今の立場」の板挟みの主人公・織田照朝(高校生兼日本有数の大グループ社長)に対して、ずっと隣で支えてきた岡本(執事兼護衛兼ほぼおじいちゃん)が諭す一言
(ACMA:GAMEは週刊少年マガジンにて2013年~2017年まで連載、頭脳・心理バトルとしてトップクラスに好き、リーダー論としても学びが多い作品)
Executive Summary
・橘玲さんの「テクノリバタリアン」を「PSYCHO-PASS(サイコパス)」のシビュラシステムの話として読むと面白い
・生成AIによるデータ汚染を突破するにはラベル付けしかない
・ダイキンは思想も現場も”野性味”がヤバい
・ポリコレからの揺り戻し映画「American Fiction」は最高に笑えるが、実際世の中そんな感じだから割と笑えない
・投資仮説を生成するGPTを作ってみた
目次
今週読んだ本
書籍
・「テクノリバタリアン」橘玲著
・「IGPI流 経営分析のリアルノウハウ」 冨山和彦著
・「稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉」大田嘉仁著
・「勝負師の条件」守屋淳著
・「我が投資術」清原達郎著
・「Y Combinator」ランダル・ストロス著
・「リーダーは偉くない」立花陽三著
・「コンセプトの教科書」細田高広著
雑誌
・Harvard Business Review 2024年4月号(DEI経営の実践)
・日経ビジネス(ダイキン 野生の経営)
・中央公論 2023年10月号(コンサルの光と闇、冨山和彦さん・各務茂夫さんの記事)
・WIRED The World in 2024
・湘南スタイル 2024年5月号
テクノリバタリアン
/システム(AI)が管理する世界は時間の問題だからこそ、人が生きるとは何かを問い直し、人と人のつながりを大切さを再確認する必要がある/
数学・論理的思考に長けテクノロジーを駆使して世の中に変革を起こそうとする者たちの思想について考察した本。テクノリバタリアンとは、テクノロジーの進歩に重きを置いたリバタリアン(自由主義者)たちの考え方ことであり、”小さな政府”(政府による介入・規制の範囲を小さく)系の思想である。著者はこのテクノリバタリアンこそが、現在の世の中を変えうる唯一の思想だと主張しており、その先導者としてスタートアップ界のスタープレイヤーたちに焦点を当てている。ピーター・ティール(Pay Pal・パランティア創業者)、サム・アルトマン(Open AI CEO)、イーロン・マスク(Tesla・Space X 創業者&CEO)、ヴィタリック・ブテリン(イーサリアム創設者)などの事例が紹介されている。彼らがどのような思想をもとにどのようなアクションを起こしているのかを把握することは、巷にあふれる未来予測本を読むことよりも遥かに未来を見通すヒントとなるだろう。
個人的には、Part3の「総督府功利主義」の章がアニメ「PSYCHO-PASS(サイコパス)」のシビュラシステム*の話と大いに重複して感じられた。近年の生成AIの発展も相まって、シビュラシステムによるテクノロジー監視社会は俄然リアリティを持ち出した。もしそのようなサービスが提供された際、人はマクロではラクをする方向に流れるものであり、それを受け入れてしまう可能性があると思う(正直、日本のような同調圧力の高い社会はなおさら)。その際にはきっと「PSYCHO-PASS(サイコパス)」に描かれているような構造的な課題(テクノロジーによるアシストが意思決定能力や主体性を奪う・過度のストレスケアによる生きがいの消失・システムの盲点を突く者の出現など)に我々も直面することになるだろう。
テクノリバタリアン、まずはこの記事からどうぞ
リバタリアンの弊害についてはコレがけっこうヤバいのでオススメ
/自由な町を作ろうと呼びかけたら、ヤバいヤツらと熊が集まってきた/
WIRED The World in 2024
/生成コンテンツの”ショート回路”を突破するにはラベル付けしかない!/
/俺もガッツリ稼いでロマン砲(粒子加速器)ぶっ放せるようになりたい!/
WIREDの2024年俯瞰本、興味深かったのは以下の2点
① Toxic AI :生成AIによるデータ汚染(Contamination)について
② Nano World:東北大学「Nano Terasu(ナノテラス)」について
① Toxic AI :生成AIによるデータ汚染(Contamination)について
2022年後半からの生成AIの急激な発展・社会への普及によって、多くの人々が生成AIを用いて文章・画像などを作成し、ネット上にアップするようになった。ここで問題になってくるのがデータ汚染(Contamination)だ。生成AIによって作成されたコンテンツが人間が作成したコンテンツと同様にネット上に表示され、そのデータをもとにAIが学習し、またコンテンツを生成する。もともと人間の表現を学習していたハズのAIが実はAIの生成物をもとに作成してしまっていた。このショート回路のような構造が、生成AI領域において現在進行形のデータ汚染であり、今後その影響が顕在化してくるだろう。
私はこの記事を読んで以前(たしか2022年3月 熱海にて)友人のKくん(東大からスイスに留学、現在スイスでMedTech Start Upを創業しCTO)と話した際に「最近GPT-3やばいね」「どのような機会とリスクがあるだろうね」みたいな話をしたことを思い出した。そのときにもデータ汚染(Contamination)の話題になった。そのときに2人で考えた解決策は2つある。1つは「AIにて作成したコンテンツをネット上にアップすることを制限する規制を作ること」(当時は”生成AI”という言葉は一般的ではなかった)であり、もう1つは「AIで作成したコンテンツにはラベルを付けて判定可能にし、データセットから弾けるようにする」というものだ。1つ目は実現が難しいだろうから、2つ目は現実解となるだろうというものがそのときの結論になった。2つ目に関する個人の具体的なアクションとしては「生成AIで作ったと明記する」ことである。例えば私は、このニュースレターの「今週の生成AI」のコーナーにおいて、アウトプット例の欄に「投資委員会ゲームマスター(GPT)の回答」と書くことで判別可能なようにしている。著作権に配慮した引用ルールのようなものとして社会に浸透すれば、データ汚染はいくぶんマシになるだろうか。
(それにしても2022年の3月の時点で私に「君のそのバイタリティは素晴らしいからAIにオールインしたら面白いんじゃない?」と言ってくれたK君の先見の明には頭が下がる)
② Nano World:東北大学「Nano Terasu(ナノテラス)」について
俺もガッツリ稼いでこんな実験施設&研究機関作りたい^^
ログライン: 東北大学青葉山新キャンパスに建設中の「ナノテラス」は、次世代放射光施設であり、新材料や創薬研究に革命をもたらす期待が集まっています。
東北大学は、青葉山新キャンパス内に「ナノテラス(NanoTerasu)」と名付けられた次世代放射光施設を建設中です。この施設は、2024年度の運用開始を予定しており、官民地域パートナーシップにより整備が進められています。ナノテラスには、日本初となる最先端の加速器技術や光源技術が導入され、これまで見ることができなかった世界のデータ化(可視化)を可能にします。その結果、新材料やデバイスの開発、生命機能の解明、創薬研究など、多岐にわたる分野での活用が期待されています。加えて、ナノテラスは産学官金の結節点として、共創の場「サイエンスパーク」の整備も進められており、様々なステークホルダーが幅広い分野で連携・共創することで、社会課題の解決や新たな社会的価値の創造が期待されます。
さらに、ナノテラスには28本のビームラインが設置可能で、運用初期には10本のビームラインが設置される予定です。これらのビームラインは、X線オペランド分光やX線構造・電子状態トータル解析など、特定の科学的調査に特化しており、軟X線磁気イメージングや軟X線電子状態解析など、多様な研究が可能となっています。
Sources:
日経ビジネス(ダイキン 野生の経営)
/やはりトップと思想と現場が強烈な組織は強い/
ダイキンの強さの理由が垣間見える特集だった。端的に言えば、重戦車感。強烈な社内言語&トップメッセージ・ヨーロッパでもどぶ板営業・北米攻略のため2000~3000億円クラスのM&A2発・現地にロビイング部隊を展開しレギュレーションを変えに行く、など。
現状:空調という領域で全世界トップシェア、残すは北米のみ
・北米を除く主要エリア(欧州・東南アジア・インド・オセアニア・日本・台湾)では1位
・北米も届きうる状況
1位 トレイン・テクノロジーズ 20.6%
2位 ダイキン 16.9%
興味深い施策:一環して”野性味”がある
・最後のフロンティア アフリカで人材育成
・北米市場を攻略すべくEER(エネルギー消費効率)の規制を撤廃すべく強力なロビイング部隊を揃える
・現地企業の大型買収 2400億円、グッドマングローバルを3000億円で買収
・ストラスブールでどぶ板営業(現地の営業部隊を用意)
・強烈な社内言語
野人: 野性味があふれていて一匹おおかみで、上司の言うことを聞かずにやりたいことをやっている社員(>会社はそんな野人たちの自主性を尊重し、どんどん修羅場を与えて挑戦させていくとのこと)
衆議独裁: 詳しいなら若くても関係なく議論の中心に、皆で思い切りやりあう。そして最後は決めるべき人が決める。決めたら反対意見の人も賛同して実行しきる。
企業情報
今週の1本:American Fiction
黒人の大学教授であり小説家の主人公が、黒人への「貧困・ドラック・暴力・ラップ」のようなステレオタイプにおもねって流行った小説をバカにする意図で、あえてステレオタイプそのものの小説を匿名で書いたところ、これが大ヒットしてしまい…。(Amazon Primeで視聴可能)
この映画は昨今のポリティカルコレクトネスの行き過ぎた世の中へのアンチテーゼであり、それをダークなユーモアで表現している点が面白い。すごくバカバカしくて笑えるが、同時にアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み・偏見)の根深さを感じられる。
主演のジェフリー・ライトさんは、007シリーズのフェリックス・ライター役としても有名。「007 カジノロワイヤル」が大好きなので、ちょっとそこもテンション上がった。
今週の生成AI:投資委員会ゲームマスター
/グループワークの補助ツールとしてGPT使えるかも/
概要
・3/16のHIVE JAPAN 2024でセッション「投資委員会ゲーム」での使用を目的に作成した、社会課題から投資仮説を生成するGPT
・グループワークにおけるプレゼンテーション作成の補助ツールとして用意
・もっとちゃんと作るなら、①もっと緻密に構造化してイシューからはじめたり、②みんかぶから時系列の株価をスクレイピングしてボラティリティを出してそれを共分散かけてポートリスク出したりする感じになりそう
・Chat GPT-4のGPTs機能を使用(プロンプトによって自らの意図した挙動をするGPTを作成できる)、GPT-4契約者は下のリンクから試せます
プロンプト
アウトプット例
User 「中小企業(製造業)の後継者不足」と入力
投資委員会ゲームマスター(GPT)の回答
中小企業(製造業)の後継者不足は、日本経済にとって大きな課題です。多くの地域経済や特定の産業セクターは、中小企業の活力に大きく依存しています。この課題に対処するための投資ストーリーは、技術革新と経営革新を通じて、後継者不足に直面している中小製造業が次世代に繋がる持続可能なビジネスモデルを構築することに焦点を当てます。
投資仮説
中小製造業の後継者不足の問題を解決する鍵は、業務の効率化、生産性の向上、そして新世代が魅力を感じる経営モデルへの転換にあります。特に、デジタル技術の活用による生産プロセスの革新や、非伝統的な経営資源の活用が有効です。これにより、中小製造業が持続可能で、次世代に引き継がれる魅力的なビジネスに変わることを目指します。
投資テーマ
デジタルトランスフォーメーション: 生産効率と品質向上を目指す。
新世代経営者教育: 経営革新と技術革新をリードする人材の育成。
ビジネスモデルのイノベーション: 持続可能で競争力のあるビジネスモデルへの転換。
投資提案ポートフォリオ
キーエンス (6861): 高度なセンサー技術とデータ解析ツールを提供し、中小製造業の生産効率と品質管理を革新。
ポートフォリオ構成比: 40%
投資期間: 5年
期待IRR: 12%
リコー (7752): オフィス自動化とデジタルサービスで知られるが、中小企業向けのデジタル変革サービスも提供。
ポートフォリオ構成比: 30%
投資期間: 5年
期待IRR: 10%
グローバルウェイ (3936): 人材教育と経営者育成サービスを提供し、新世代の経営者を支援。
ポートフォリオ構成比: 30%
投資期間: 5年
期待IRR: 15%
投資額
総投資額: 1,000万円
キーエンス: 400万円
リコー: 300万円
グローバルウェイ: 300万円
市場への仮説
このポートフォリオは、中小製造業が直面する後継者不足の問題に対して、技術と経営の両面から解決策を提供します。これらの企業は、業界におけるイノベーションのリーダーであり、中小製造業が抱える問題に対して実行可能なソリューションを提供する能力を持っています。投資期間内にこれらの企業が成長し、中小製造業の持続可能性と魅力を高めることが期待されます。
Source: Chat GPT-4を用いて著者作成(当事例リンク)
質問コーナー
今後、募集していきます!
(テーマごとにオススメの本の紹介などの予定)