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日向坂文庫2021#13(髙橋未来虹×藤山素心『江戸川西口あやかしクリニック』)

noteを開いていただきありがとうございます。
ちゃすいです。

今回は日向坂46×光文社のフェアより、髙橋未来虹さんが表紙となり、藤山素心さんが書かれた『江戸川西口あやかしクリニック』の感想について書いていきたいと思います。

登場人物は以下の通りです。
(本文より引用)
・七木田亜月:就活に57連敗中の後、あやかしクリニックに医療事務として就職。
・新見天護:あやかしクリニック院長。天邪鬼のクォータ―。
・吉屋尊琉:あやかしクリニック理事長。貧乏神のハーフ。
・春司・アリムジャノフ:向かいの薬局の管理薬剤師。座敷童子のクォーター。



1.あらすじ

就活57連敗中の七木田亜月(以下亜月)は、とある小さなクリニック、「あかしや」クリニックの医療事務の募集を見つける。
その際、イケメン先生にエントリーシートを渡され、後日面接を受けることになる。
後日面接を受けに行くとものの5分で採用が決定し、しかもハーフもしくはクォーターかどうかを聞かれたり、労働条件がかなり良かったり、不思議な患者さんばかりという怪しい面もある。
そんなある日、亜月はこのクリニックの名前が「あかしや」クリニックではなく、「あやかし」クリニックであることに気付く。


2.感想

最初手に取った時、大抵タイトルからどういう物語か想像するんですけど、正直あやかしの意味が分からなくて純粋に医療系の物語かなと思っていました。
そのおかげで、「あやかし」が「妖怪」のことだと気づくまで何の物語かよく分からないままふわついてしまいました。
普通に語彙力不足でしたね(笑)。


それはさておき、第1章の「あかしやクリニック」では、亜月が就職すると同時に、あやかしの存在を否応なく認めざるを得ない場面までが描かれています。

作中において、亜月が歓迎会へ招待される場面があるのですが、その歓迎会の途中で亜月は逃げ出してしまいます。
まあこれは無理もないことだなと思います。
目の前の人間と思っていた人が実はあやかし(正確にはハーフやクォーターですが)であるなんて認めづらいですよね。
これまで見聞きしたことのない存在が現れること、つまり自身の常識が崩れ去る瞬間は正直恐ろしいものです。

そんなあやかしですが、彼らは人間社会では生きづらい存在で、特にオリジンとされるあやかしはもう生きていくことはできなくなったようです。
というのも、もともと人間が自分たちの思考では説明できないものを、あやかしの仕業にすることで、納得しその際オリジンが生まれていました。
そのため人間がいる限り、あやかしも消えることはないはずでした。
しかし科学の力によってありとあらゆる自然現象は説明されていく中で、あやかしが生きることも難しくなったようです。

そこで人間や動物と同じように遺伝子に託すことで種の存続を図ると同時に、薬をもらうことでなんとか人間社会に溶け込めるようにしたそうです。

あやかしは生きるだけで精いっぱいのようです。

人間の想像力によって生まれたものが、人間の力によって消されることになるということでしょうか。


ユヴァル・ノア・ハラリは彼の著書『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 下』において、人間が他の動物と違う点はその想像力にあるとしました。
国家や民族といったあらゆるものを想像し、作り出すことで社会を形成していったと。

恐らくこの想像力の賜物があやかしであったのかなと思います。
しかし人間が生み出したもう一つの力、科学により消される運命にあると。
たしかに科学によってありとあらゆるものが説明されるようになりました。
また近代教育システムにより、その科学の成果は多くの人の下に届くようになり、説明できないものが減ってきました。

その割を食うのがあやかしだというのです。
人間が生み出しといて、勝手に消されると。
あやかしの側からすれば「ふざけるな!」となるのは自然でしょう。
オリジンがなんとか亜月を捕まえようとしたのも納得です。
その遺伝子をなんとか、あやかしと通じることのできる人間とともに残すことでより良い状態の子孫を残すことが出来ると考えたようです。


生きるものにとって生存すること、種を保存しようとすることは是が非でも成し遂げなければならないことです。
その際、誰でもいいというわけではないようで、亜月や芦萱巧海(あしかやたくみ)のように神やら仏やらに関連する人間の方がいいようです。

亜月は毘沙門天(四天王天にて仏法僧を守護している四神の一人で北方を守っている)を宿しており、巧海は増長天(南方を守っている)を宿しているとのことです。

なんとも壮大な話になりましたが、なぜオリジンは神を宿す人間と結ばれようとするのでしょう。
物語の中ではオリジンらあやかしは神を慕っており、かつ説教を受けていました。
そういう慕うべき相手と結ばれるというのはなかなか越権行為?に近いものを感じるのですが意外と問題ないことなんでしょうかね。

単純に神を宿していることに気付かず、あやかしに親和性のある人間だと思っていただけなのでしょうか。


またなぜあの二人が神を宿しているのか。
寺や神社の子息であることはありますが、他の誰でもないあの二人というのは気になります。
また四天王の内2人がでてきたということは、あと2人が出てくるのでしょうか。
続編があるなら楽しみです。


とまあ最近多い疑問形ばかりの感想になってしまいましたが、今回はここで終わりにしたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは失礼します。


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