日向坂文庫2021#16(潮紗理菜×辻村深月『クローバーナイト』)
noteを開いていただきありがとうございます。
ちゃすいです。
今回は、潮紗理菜さんが表紙となる辻村深月さんの『クローバーナイト』の感想について書いていきたいと思います。
まずは登場人物についてです。
・鶴峰裕:会計事務所に勤める2児のパパ。
・鶴峰志保:”merci”のCEOであり2児のママ。
・鶴峰莉枝未:裕と志保の娘で琉大の姉。
・鶴峰琉大:裕と志保の息子で莉枝未の弟。
1.あらすじ
裕と志保は2人とも仕事をしながら、莉枝未と琉大の育児をしている。
ママ友同士の女社会のギクシャクや保活など様々な戦いの中でも必死に耐え抜く姿が描かれている作品。
2.感想
いやー、久しぶりに読むのに時間がかかりました。
読んでいるとしんどくなるというか、こんな未来が来るかと思うと自分の将来が怖くなってなかなか読み進めることが出来ませんでした。
保活や受験の部分について読んでいるときに、私自身がこれまで感じてきたしんどさや理不尽さ、疑問といったものが思い出されました。
私自身は子どもはいませんし、なんなら結婚どころかパートナーすらいない身ですが、これまで生きている中で体験したことと重ね合わせると胸が苦しくなるというか読むのが辛くなりました。
保活の面接を受けるのに服装や持ち物まで厳しく制限され、言葉使いから行動まで型にはまったものを強いられる。
「子どものよい未来のために」という合言葉をもとに画一的で単一的な基準によって測られる保活・受験という世界。
基本的に「なぜ?」「本当に?」と疑問から入る私にとって、この保活や受験っていったい誰のためのものなんだろうと思わずにはいられませんでした。
もし自分がその立場になったら絶対に飛び込むのをためらうだろうなと思います。
面接する側とされる側の非平等性や非対等性。
もっと言えば一種の権威・権力関係。
保活する人や受験する人たちのグループ内の派閥やパワーバランス。
画一的で単一的な「良い」子ども。
少しでも「良い教育」をと親や周りが頑張ることは否定出来ません。
また幼稚園や小学校などは無制限に子どもを受け入れることが出来るわけではありません。
そのために競争が生じざるを得ないのもまた事実です。
競争の中で辛い目にあうことや、悔しい思いをすることがあること自体を一概に悪いとも思いません。
ですが、どうしてもやるせないといいますか、すっきりしないなと思いながら読んでおりました。
一方で本書では受験などがいい機会になったという話もありました。
受験を考えていなかったら、行くこともなかったであろう自然の中でのキャンプなど中々できないことを体験できたと。
受験というものを上手く利用することで、日々の生活を振り返ったり、中々できないことをやってみたりとそういう使い方があるんだなということを知ることができたのは、個人的に良かったなというか、新たな面を見ることができました。
最後にタイトルにある「クローバーナイト」。
鶴峰の4人家族を4つ葉のクローバーに例え、それを守るナイトとしての裕と志保のことを指しますが、しっかりとその務めを果たされているお二人は凄いなと思います。
二人で育児を分担し、相談すべきことはできる限り相談し、相手の意見を否定せずまずは受け入れる。
子どもの面倒はしっかりと見る。
たったこれだけと思いがちですが、たったこれだけのことをするのがどれだけ大変なことか。
想像するだけでも恐ろしいです。
いつかは親という立場になるのでしょうが、少し親になるのが怖い気もします。
その務めを全うできるかどうか。
とまあこんな感じでしょうか。
小説って自分とは違う世界を自分とは違う視点で見せてくれるという楽しさがある分、自分の近い将来であったり今の自分と重ね合わせたりするとたまに怖くなるんですね。
そんなことを教えてくれた作品です。
と最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回も読んでいただけると幸いです。
それでは失礼します。