日向坂文庫2021#21(濱岸ひより×東川篤哉『学ばない探偵たちの学園』)」
noteを開いていただきありがとうございます。
ちゃすいです。
今回は濱岸ひよりさんが表紙となる、東川篤哉さんの『学ばない探偵たちの学園』の感想を書かせていただきたいと思います。
まずは主な登場人物について。
・赤坂通:鯉池ケ窪学園に転校してきた高校2年生。ひょんなことから探偵部に入部する。
・多摩川流司:探偵部部長の高校3年生。
・八橋京介:探偵部部員の高校3年生。関西弁をしゃべる。
1.あらすじ
鯉池ケ窪学園に転校してきた赤坂通。
やたらと部活の種類の多い鯉池ケ窪学園において無難な高校生活を送るために、熟慮の末、文芸部に入部することを決意する。
文芸部の部室を訪ね入部しに行こうとするが、何故か探偵部に入部することになってしまい、様々な事件に遭遇することになる。
2.感想(ネタバレアリ)
いやー高校生の時に読んで以来久しぶりに読みましたが、本当に笑わせてくれる作品です。
ハチャメチャな部長に、冷静な感じな八橋先輩、そして振り回される赤坂。
この3人が織りなすハチャメチャながら、時々出てくる切れ味鋭い推理がたまりません。
もちろん彼ら3人だけでなく顧問の石崎先生を忘れてはいけません。
この作品の中で随一の切れ者です。
恐らく彼がいなければこの作品は締まらないのではと思うぐらいです。
といってもこの石崎先生もかなりの曲者で、多摩川部長と八橋先輩による野球対決に参加したり、コーヒーを実験道具で作ったりとします。
こんなキャラの濃い登場人物たちの前で起こるのが、「密室」殺人事件です。
密室に「」を付けたのは読んだ方ならわかると思いますが、犯行現場となった保健室は、完全な密室ではなかったからです。
というのも保健室の窓が開いていたのです。
このことについて、作中では当初ほとんど重要視されていませんでしたが、このことが殺害された田所が保健室で遺体となって見つかることに繋がるのです。
また本作では振り子も一つの重要な鍵となります。
音楽教師の小松崎先生によってキーワードとして浮上することになりますが、残念ながら彼女も殺害されてしまいます。
と同時にこのキーワードの出し方と言いますか、隠し方と言いますか、その辺が東川篤哉さんの上手いなと思わせる部分になります。
当初、振り子がキーワードとして出てきたときは、石崎先生によるフーコーの振り子や、赤坂による大きな古時計、八橋先輩による振り子打法、多摩川部長の振り子のトリックと色々出てきますが、フーコーの振り子のようにまともな意見と同時に、振り子打法というように少し笑いを交えてくるのです。
キーワードとなる言葉を笑いとして、しかも爆笑させるような笑いではなく、クスっと笑わせてくれる形で読者に届けてくるために、キーワードかどうかも怪しくなってしまい、読者はその重要性を見逃してしまいます。
またその重要性を認識できたとしても、そのキーワードを吟味する余裕がなくなってしまいます。
というのもクスっと笑わせてくる3人を見ていると先を読み進めたくなり、このキーワードをどう考えるかなんてどうでもよくなりますのでね。
それゆえ、最後石崎先生によって真相が明かされるときには、正直なるほどっと驚かされることになるわけです。
しかも東川篤哉さんの凄いところは、真相に辿り着くために必要な情報はしっかりと届けてくれているということです。
実際、実際の犯行現場となった第一校舎や太郎松、そして保健室の位置関係は序盤に図として紹介されています。
その上で笑いとわちゃわちゃな三人組の言動に振り回される中で重要なキーワードを吟味できずに、最後の石崎先生による種明かしまで一気に持っていかれるのです。
小さな小さな伏線をしっかり辿り犯人のトリックを暴くという点では、非常に良心的でありつつかつ読者を楽しませてくれる作品ではないかと思います。
さてこの『学ばない探偵たちの学園』には続編があり、『殺意は必ず3度ある』、『放課後はミステリーとともに』、『探偵部への挑戦状』があります。
『殺意は必ず3度ある』までは光文社さんからも出版されていますが、他2つは光文社さんから出版されていませんのでご注意を。
と同時に、赤坂、多摩川部長、八橋先輩の3人は後者2つにはメインで出てきません。
恐らく皆勤賞なのは石崎先生だけな気がします。
どれもくすっと笑わせてくれる要素がありつつもしっかりとしたトリックがあるミステリー小説となっていますので、興味のある方は読んでみてはいかかがでしょうか。
と今回はこんな感じでしょうか。
いつもと違う感じに感想を書いてみましたが、どういう形の感想がいいのかもしよければ教えていただきたいです。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
失礼します。