日向坂文庫2021#12(山口陽世×貴水玲『社内保育士はじめました1』)
noteを開いていただきありがとうございます。
ちゃすいです。
今回は山口陽世さんが表紙となり、貴水玲さんが書かれた『社内保育士はじめました 1』の感想について書いていきたいと思います。
まず登場人物は以下の通りです。
(本より引用)
・面井梓咲:人事部から保育ルーム配属に。感情が表に出にくいタイプ。
・柚原彼方:イケメンと人気のシングルファザー。梓咲を気にかけてくれる。
・久能部長:ハンサムと評される笑みをたたえる人事部長。コネで出世している。
・津谷日菜子:派手なルックスの21歳ママ。子育てに消極的で、娘にも冷たく当たる。
・柚原めぐる:彼方の2歳になる息子。引っ込み思案な性格。天使のようにかわいい。
・横尾ゆき:23歳の若手保育士。いつも明るく、子どもと接するのが得意。
1.あらすじ
人事部の部長である久能と仲がよろしくない面井。
そんなある日、面井は社内保育施設の開設に伴い、保育士資格があることを理由に異動を命じられる。
しかし「お面さん」と社内であだ名がつけられるほど表情が変わらず、また感情を表に出さない面井にとってはかなり厳しい仕事であった。
その中でもなんとか仕事をこなす中でイケメンと称されるシングルファザーである柚原と急接近したり、津谷関連の事件?に巻き込まれたりする中で面井はなんとか奮闘する。
2.感想
まずこの作品の見どころは何といっても、面井の園児と接する際の言葉遣いです。
なんとまあ表情ないし言葉が固いことこの上ない。
おいおいって感じですが、なんとなくわかる気もします。
自分もごくたまに子どもと接することがあるんですが、ギアをあげるというか、テンション上げないと多分、面井と同じような感じで接するんだろうなと思い共感しつつ、少し反省しないとな思います。
表情豊かな人ってどうしてあんなに豊かなんですかね?
日向坂46だと丹生さんは常にニコニコされていて、笑いですべっても嫌な顔一つ見せません。
他にも富田さんで言えば、笑顔から負け顔まで幅広い表情を見せてくれます。
正直ちょっとうらやましいです。
そんな面井ですが、少しずつ表情を出すようになってきます。
その際のキーマンが柚原であり、さらに言えば、同じ保育士の横尾などの協力があってのことでしょう。
特に同じ保育士からの「どんどん巻き込んでほしい」という言葉はかなり印象的でした。
自分だけでやらないといけないと思うのではなく、誰かに助けを求めることで人とかかわりをもつ。
そうやってお互いに協力することで仕事は回っているんだよということを教えてくれると同時に、そういった他者の感情に触れることで、面井にも少しずつ感情が表情に出るようになってきます。
感情豊かになると人触れ合いやすくなるが、人と触れ合わないと感情が豊かになりづらい。
どっちが先なんだという感じですが・・・。
さて、第1巻の見どころの一つが津谷日菜子及びその娘の関係性についてです。
津谷は娘に対して冷たく接します。
子どもが眼中にないかのようにふるまうために保育士からももう少し接してほしいとお願いしますが、それでも接しようとしません。
そんなあるとき、柚原が久能部長の顔を殴るという事件が起こります。
これにより柚原は自宅謹慎となります。
人格者として知られる柚原が何の理由もなく人を殴るとは考えられません。
そんな折、津谷はなぜか柚原の事件に関して、自分が悪いと言い出します。
なんと久能が津谷に詰めっかかっているときに、柚原が助けようとしたときに手が当たっただけなのを、久能が殴られたと騒いでいたようです。
しかも津谷の娘は、お父さんを探し出そうとしていたようで、しっかりと父である久能を見つけ出します。
あったことのない父で、写真でしか知らない父である久能を見つけるとは大したものです。
と同時に津谷が娘にしっかりと接しない理由もはっきりします。
なんと久能が東京にいたときに津谷を妊娠させてできた子どもということでした。
しかし久能は津谷にお金を渡したものの、逃げてしまったようで、それで子どものことをよく思っていない節があったようです。
同時に恐らくですが、久能への恨みを優先させてしまい、子どものことは眼中になかったようです。
いやー、親戚の七光りで出世した久能の無能ぶりが発揮された感じと同時に、人って見かけによらずいろんなものを抱えているんだなということがよく分かります。
第2巻の方で、ドジで委縮しまくりの保育士が出てきましたが、これも原因はいじめを受けていたというのがありました。
それと同様に津谷が子どもに関心が持てないのは、久能に捨てられたからです。
でもこういうことこそ人には言いづらいものです。
人には言いづらい何かを抱えているからこそ、それが行動に現れる。
でもその行動の背景を大抵の人は理解しません。
というか理解しようとはしませんし、理解しようとする余裕もないでしょう。
そのため益々自分一人で抱え込んでしまう。
この負の連鎖を断ち切るには誰かが手を差し伸べないといけないのでしょうが、どう差し伸べればいいのでしょうか。
面井は家庭訪問をして、親子について知ろうとして、かつ津谷にもしっかりと声をかけていこうとします。
恐らくやることは特別なことではないのでしょう。
しかしその行動を起こすためにはかなりのエネルギーが必要になります。
なんか手詰まり感が凄いです。
「世界は人間の関係の網の目の総体である」
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルは世界を上記のように捉えました。
これは、世界を環境のことではなく、多くの人間がかかわるなかで紡がれるものであると考え、その網の目を動かすものについて考察することで世界の全体像を捉えることができるとしたものです。
この考えに対して穿った解釈をすると、世界が人間の関わりの中で描かれるものであるならば、そこに住む人を救うこと及び救えるような仕組みを作るのも人間次第ということになり、人を救うのも殺すのも人次第ということになるのでしょうか。
とまあ今回はこんな感じで終わりますかね。
なんか不完全燃焼ですが。
まあどちらにせよ最後までお読みいただきありがとうございました。
次も読んでいただけると幸いです。
それでは失礼します。