日向坂文庫2021#2(金村美玖×赤川次郎『三毛猫ホームズの証言台』)
noteを開いていただきありがとうございます。
ちゃすいです。
前回は望月拓海さんの『毎年、記憶を失う彼女の救い方』の感想を書かせていただきました。
読んでくださった方はありがとうございました。
さて今回は日向坂46さん×光文社さんの「#日向坂文庫2021冬 」フェアから、金村美玖さん担当で赤川次郎さんの『三毛猫ホームズの証言台 』の感想について書いていきたいと思います。
まず主な登場人物は以下の通りです。
・片山義太郎:警視庁捜査一課の刑事。
・片山晴美:片山義太郎の妹。
・ホームズ:片山義太郎宅に住む三毛猫。
・児島光枝:義太郎らの叔母。
・辻川博巳:Tカンパニーの社長。
・辻川友世:辻川博巳の娘。辻川寿男の妻。
・辻川寿男:友世の旦那であり、Tカンパニー専務。記憶を失っている。
・加賀涼子:父母共に不在のため、妹のために働いている。
・加賀ひとみ:涼子の妹。
・森川誠二:森川礼子の元旦那。失踪する。
・森川(千葉)礼子:主婦。千葉克茂に協力し後に、妻となる。
・森川(千葉)安和:森川礼子の娘。
・森川(千葉)和也:森川礼子の息子。
・千葉克茂:S商事の社長で千葉典子の夫。殺人の容疑をかけられる。
・千葉典子:元社長。何者かにより殺害される。
・千葉光男:千葉典子の弟
・宮前あかり:Tカンパニー。辻川寿男の秘書。
・安西○○:Tカンパニーの秘書。友世と交際していた。
・石津刑事:義太郎らと共に旅行に同行。
※基本的に登場人物は姓名の内、名のみで表記する。また上記以外の登場人物は初出はフルネームで記載し、後に名のみで表記する。また基本的には敬称略で表記する。
1.少し詳細なあらすじ
※このあらすじは、小説の序盤を物語通りに追いかける形で書いています。
まったく内容を見たくないという方はここで読むのを止めるのをお勧めします。
またこの段階では犯人など物語の肝心な部分には触れていませんので、その辺はご安心ください。
とある日、S商事の当時の社長である典子が殺害された。
この犯人として克茂が容疑者として浮上する。
しかし克茂は容疑を否認する。
同時に礼子に偽証を依頼し、アリバイを証言してもらう。
この対価とし、克茂は礼子に月40万の生活費を払い続けた。
結果として克茂は無罪放免となると同時に克茂は礼子にプロポーズし、二人は結婚することになる。
ほとんど同時期、寿男と友世はニューヨークから帰国する飛行機に乗っていた。
彼らはTカンパニーにおける重要なプロジェクトを任されて見事契約を結んだ帰りであった。
空港に着くと秘書の安西が迎えてに着ており、ホテルのレストランへと向かう。
レストランで食事を終えた寿男と友世はレストランを後にするが、友世がレストランに忘れ物を思い出す。
そのため寿男が取りに戻りに行った。
その際、友世はお酒の影響でふらついており、道に飛び出してしまいタクシーに轢かれそうになる。
しかしその際、たまたま居合わせた涼子によって助けてもらうも涼子は足を怪我し入院することになる。
その後、友世の父である博巳の友人の病院に入院すると同時に涼子らをお詫びに高原ホテルに招待する。
涼子がタクシーに轢かれる前、義太郎は叔母の児島光枝の紹介でお見合いに妹の晴美とホテルのカフェにいた。
その後お見合い相手として涼子が現れる。
結果として涼子はまだ20歳で、妹のひとみのためにまだ結婚する意志がないことを伝える。
その後、義太郎、晴美、涼子、ひとみの4人で夕食を食べに出かける。
食事後、晴美とひとみが公園に猫(のちのパリ)を探しに行く間、義太郎と涼子はホテル外で会話していた。
その時、タクシーに女性(=友世)がタクシーに轢かれそうになるのをかばい、涼子が轢かれてしまう。
結果、涼子は博巳の友人が院長をしている病院に入院することになる。
また友世が涼子らをお詫びとして高原ホテルに招待するなどしてい間、寿男は博巳の指示でS商事の社長、克茂と仕事のことで会っていた。
その際、克茂のハネムーンがてら高原ホテルに招待する。
結果として克茂夫妻に、義太郎や涼子らは寿男らとともに高原ホテルに行くことになる。
そして義太郎らが高原ホテルへ行っている間、様々な場所で動きが出てくる。
まず誠二が失踪先から元住んでいてたアパートに戻ってくる。
しかしそこはもぬけの殻であった。
礼子がすでに別の男性と結婚して旅行にいっていることを知り、復讐のために高原ホテルに向かう。
また本来なら友世と結婚することになっていた安西も高原ホテルの近くのホテルに泊まることに。
そんな折高原ホテルの方では、あかりにホテルのボーイから妙な男がうろついているとの情報が届けられる。
あかりが素性を確認しにその男に話しかけたところ、突然男が倒れる。
そのため宮前は男をホテルの一室で休ませることにした。
しかしその夜、あかりが声をかけに行くと男の姿は消えていた。
次の日の朝、義太郎らがホテルで朝食をとっている際、一通のファックスが届けられる。
差出人は千葉光男であった。
この男は典子の弟であり、行方不明になっていた。
そしてその日の正午、行方不明になっていた男が動き出す。
こうして4人の男、安西、誠二、不審な男、光男が各々の思惑が交錯することになる。
2.感想(ネタバレあり)
さて、「あらすじ」で簡単に話が動き出す前までについて書きましたが、ここからは本題の方についてのあらすじを書きつつ、感想を書いていきたいと思います。
なのでネタバレが嫌な方はここいらで一旦読むのをやめるのをお勧めします。
では続きですが、まず不審な男は自身を「光男」と名乗ります。
そして安西を監禁すると同時にあかりに対してホテルに入れるように要求する。
一方で、誠二は途中で出会った五十嵐秋代の家に居候さえてもらいつつ、犯行の機会を伺う。
そんなことを知らない義太郎らは、誠二が殺人を起こしたことから誠二の居場所を知るために妹の丸山ゆづるをホテルに呼ぶ。
そんな夜、ひとみはあかりが謎の男をホテルに招き入れるところを目撃する。
と同時に灯油のタンクを持った男、誠二が侵入してくるのを目撃し、義太郎らに事の顛末を伝える。
なんとか火事が広がる前に消火するも、ひとみは誠二に誘拐される。
また「光男」と名乗っていた男はあかりに対して寿男と昔強盗を働いた仲間であることを告白すると同時に逃走する。
その後、そして誠二は電話でひとみを誘拐したことと、寿男に5000万円を用意するように告げる。
義太郎らは県警に協力を仰ぎ、誠二の捜索を始めるが見つからない。
そんな折、近くの駅員から従業員の秋代が出勤してこないこと及び、見知らぬ男と女の子、そして子猫と一緒だったという情報がもたらされる。
その後、捜索を続けていると誠二らが運転していた車が崖から落ちたことが発覚する。
涼子らは不安視するが、誠二及びひとみ、パリは赤い車に乗っていた人にそのまま連れ去られことが分かる。
一方で、秋代とその息子は無事であると同時に道中に取り残されたという。
そうこうしているうちに赤い車に乗っていた男(光男)から一通のメールが届けられる。
そのメールによるとひとみとパリは無事であること、そして関係者全員に「裁き」の場への招待のためにバスが来ることが告げられる。
そのバスに乗った義太郎らはとある別荘へと案内される。
そこに到着すると光男に迎えられ、別荘に入る。
そこでひとみが人質になっていること及び、姉を殺した男(克茂)への復讐を告げる。
しかしホームズの機転により、ひとみとパリが監禁されている場所が特定され、ひとみとパリは助け出される。
その後、義太郎たち警察は光男らの捜索をするも見つけることはできなかった。
というのも光男、誠二、そしてあかりがホテルに招き入れた謎の男である北里は棚の後ろにある部屋に隠れていたのだ。
だが、どこかに隠れていると踏んだ警察が隠しマイクを仕込んでいたために、隠れていることが発覚する。
そして屋敷は警察に包囲されてしまう。
光男らは車で逃走を図るも木立に衝突すると同時に崖に落ち炎上する。
結果、森川は死亡し光男と北里は逃走する。
義太郎らは逃走した二人は病院に行くものと読み、とある総合病院に踏み込む。
その際、寿男は加賀が寝ている病室を盗み聞きすると同時に病室に忍び込む。
そこで加賀から、本名が加賀久男といい、強盗を働いていたことを告げられる。
しかし加賀は心臓が悪かったために興奮した影響で死亡する。
一方で光男がいる場所に義太郎らが踏み込むも、医者に扮して逃亡する。
しかし義太郎らは光男が逃げる先に先回りをし、光男の確保に成功、逮捕する。
その後、典子が殺された日のことが明かされる。
克茂は典子が殺された日、会社で典子に叱られた後、役所に向かいそのまま家に帰宅する。
その間に典子はとある男に殺害される。
死ぬ間際の典子を見つけた克茂は救急車を呼ぼうとするも典子に止められとある事実を告げられる。
まず典子を殺したのは光男ではないということ。
そして光男は実際は弟ではないということである。
だが、光男にとってはそうではなかった。
元々光男は典子に好意を抱いていたが、ある時典子と腹違いの弟であることを知る。
そのため、自分の気持ちを抑えられなくなることを恐れ日本中を旅することにする。
しかし典子から毎月お金がもらえる生活をしているうちに生活が荒んでいた。
そんな際、当時光男のお金にたかっていた北里が光男に、典子と光男は姉弟ではないことを告げる。
光男にとっては典子との壁が崩れたような思いだったようで、北里に克茂を殺させようとした。
しかし克茂を殺すために家に潜んでいたものの、帰ってきたのは典子であり、彼女が通報ボタンを押そうとしたために殺害することになる。
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かなり長くなりましたが、物語終盤までのあらすじは以上の通りです。
まあ、なんとも複雑な事件です。
読んでいる際は誰が誰だかわからなくなり、何度も読み直していました。
謎の男と称される男が何人もいたり、嘘や誤解が散りばめられていたりと一読だと「え?」って感じです。
ジャングルの中を木々をかき分けながら読んでいる感じですね。
とはいえ、途中で読むのがめんどくさくなるかというそうではなく、この先がどうなっているのかと気になるので、結局読み続けてしまうような作品です。
これといったトリックがあるわけではないです。
密室殺人だったわけではなく、時間差トリックを使ったわけでない。
あっさり言えば典子を殺害しのたは誰かというのが、一つのストリーでしょう。
また誠二が元妻である、礼子及び、克茂に復讐しようとしていることや、光男が克茂に復讐しようとしているというように、単純な物語だと思います。
しかし謎の男を一人置くことや嘘や誤解を散りばめることで、どう話が展開していくかへの期待が膨らむ物語になっています。
さて各人物についてですが、まず安西についてです。
物語のごく序盤では何かしでかしそうな気がしましたが、残念ながら序盤の方で北里に殺害されてしまいます。
自分の彼女を盗まれた恨みに駆られてしまうのはよく分かります。
しかし博巳には社長になるには器量が小さいと言われたり、友世には結婚するつもりはなかったと言われたりと散々な目に合っています。
まあそんな男だからこそ、恨みに駆られて寿男に報復しようとするも、序盤で殺害されてしまうのでしょうか。
しかし恨みに駆られている点では誠二、光男、北里も同じです。
そして最後まで生き残る?のは光男ただ一人です。
恨みに駆られて殺害などと考えるから罰が当たったとも言えますが、、、
この差は何なのでしょうか。
まあ物語においてこのようなことを考えても無駄なのかもしれませんが。
そして克茂についてです。
S商事の社長であり、殺害された典子の元夫であり、礼子に偽証を依頼すると同時に再婚した人になります。
物語に出てくる人を結び付けることになるキーマンです。
さすが社長ということでしょうか。
それとも妻が殺害されたのは彼が仕組んだことではないですが、偽証を依頼したり、礼子に結婚を申し出たりと色々動きが多い方です。
そのため色々な人をつなぐキーマンとなれるのでしょうか。
博巳にはいいビジネスマンと評されていましたが、仕事もできまたやさしさに満ちた人であるためにいいビジネスマンと評されるようになれるのかなと思います。
そしてもう一人仕事ができる人と言えば寿男です。
なぜ記憶を失っているのかについての話は出てきませんでしたが、人望があるようです。
そのためか友世と付き合うようになったり、博巳に次期社長として認められたりするのでしょう。
ですが、やはり気になるのは強盗などをしていたのかということです。
昔の仲間に誘われて強盗をしていたということはもともと素行に問題があったとも考えられます。
そんな人が大企業の令嬢と結婚を認められ、次期社長とも目されるというのは少し不思議な気もします。
いや、どこか裏があるからこそ人望を集めるような人間になれるのでしょうか。
怪盗ルパンに、怪盗キッドと盗みの達人はどこか魅力があり、人を惹きつけるものを持っています。
寿男もそんな人の部類なのでしょう。
もしくは強盗を行った後、事故に会うことで人が変わってしまったとも考えられます。
「事故に会い、これまでの自分という存在の連続性が中断され、新たな可能性に目を向けることができるようになった」と言えそうです。
続いて、ホームズについてですが、本当に彼女は何者なのでしょうか。
光男に屋敷に招かれた際、即座にひとみらを発見します。
また医者に扮して逃亡を図った光男を見破ったり、光男をそそのかした男が北里であることを見破ったりとさすがとしか言いようがありません。
他の探偵のように自ら犯人を告げるわけでもなく、さりげなく義太郎らを犯人へと導くあたりは、最初から犯人が分かっていたのかと疑ってしまいます。
三毛猫ホームズのシリーズをほとんど読んでいない私ちゃすいからすると、真実への案内人といったように感じられます。
さて最後にタイトルの「三毛猫ホームズの証言台」についてです。
この証言台というのにはどういう意味があるのでしょうか。
浅い考えだと、恐らくこれも誤解を呼ぶ一つな気がします。
光男による「正義の裁判」への招待、そしてその場において克茂が妻の典子を殺害したことを「証言」すると読者に思わせるように仕向けられたのではないでしょうか。
もしそうなら、少なくとも私ちゃすいは見事に騙されました。
正直克茂が典子を殺害したとばかり思っていたので、驚きです。
ですが、実際は克茂は本当に殺害をしていなかった。
犯人は北里だったのです。
まあだまされた点については推理能力の低い私にも原因はあるかもしれませんが、赤川次郎さんの巧妙な書きぶりのためということにしときましょう。
(いや、そうであったほしい(笑))
以上、金村美玖さんが担当される赤川次郎さんの『三毛猫ホームズの証言台』の感想について書いてきました。
この文庫フェアは各メンバーの感想がブログに掲載されるのでしょうか。
掲載されるのであればぜひ、金村さんがどう読まれたのか伺いたいものです。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。
また次も書いていけたらと思っています。
失礼します。