道連れ夜行バス

 深夜の東名高速道路。現在午前中1時17分。消灯はとっくに終わり、あとは横浜を残して停車するSAはひとつも無い。隣の乗客は幸運にもいない。イヤホンを付け、夜の旅をゆったりと楽しむ...といきたいとこだ。
 そんな中で私はある不満と気まずさを抱いている。    まず、不満についてだが。それは頭上がうるさいということだ。
とにかく、うるさいのだ。
 恐らくバックが荷物入れに接触して、バスが揺れる度にキュイキュイと不快な音を出し続けている。イヤホンを貫通してくるその音は公害といっても差し支えないだろう。これでは寝ようと思っても寝られないに決まっている。周りの乗客もそう思ってるに違いない。私の不満はこれでご理解頂けただろう。
 では、気まずさとはなんだろうか。それはそのバックが恐らく自分のものであるということだ。多分きっと、恐らく...いや、十中八九私のものだ...
 周りの乗客のことを思ったらすぐにでも直すべきであるのだが。何せ目立つ。そうでもしたらば、周りは何を思うか。「こいつかよ、さっきからうるせえのは。」である。これは避けたい、恥ずかしい。今のままなら単にバスの立て付けが悪く、勝手に音が出てしまっているだけかもしれない、という希望的観測を行うことも出来るのだ。しかし、座席から手を伸ばし、修正を試みてそれでも音がなった暁には、私のバックがこの公害の原因とされ、私はその公害を正すことが出来なかった、はた迷惑な大学生となってしまうのだ。しかし、うるさいな...ほんとに...
ぶっちゃけイヤホンを外せないのは、うるさいのが分かりきってるので、他の乗客にどれだけ迷惑がかかってるのか理解したくないのである。あと、周りから、うるさいなんて声か聞こえてきたら申し訳なさ過ぎてバスから身投げしたくなってしまう。
 それはともかく、私のバックはまさしく"シュレディンガーの猫"状態といっても差し支えないだろう。
残念だが、私は箱を空ける気概など持ち合わせていない。
 やるならせめて横浜に停まった時だ。なにより走行中に体を動かすのは危険だしな!!
 というわけで乗客の皆さん、あと2時間30分。横浜まで一緒に耐えましょうや。

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