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ペットの腎機能低下と血圧測定

腎不全とは、読んで字のごとく腎臓が働いてない状態です。人間だと透析が必要な状態ということ。動物では現時点では「透析」という方法は現実的ではありません。一つには、血管がそうそういくつもなんどでも使えるわけじゃないこと。そして、もうひとつはそのコスト。とても通常の臨床現場で気軽に行える金額ではありません。

動物の場合、腎不全というよりも腎臓機能低下の時点で治療をしないとどうにもならないということになります。完全な腎不全に陥ってからだと、もう手立てはありません。早期発見して、残された腎臓の機能を大事に使っていく。腎臓に負担の来ない生活をすることになります。

猫の腎臓機能低下は、比較的、見つかってから長く頑張れる印象があります。しかし、犬の腎機能低下は、猫ほど長くコントロールが難しいです。

犬も猫も、水分がとても重要になります。腎臓が老廃物をろ過するためには、水がかかせません。特に腎臓機能が低下してくると、尿を濃縮する力が落ちて薄い尿しか作れなくなるため、同じ量の老廃物を体の外に出すには、より水分が必要になるわけです。多尿になるため、水を多く飲むようになります。自力で飲んでいる水の量で賄えなくなると、飲水量より排出量が多くなり、脱水していきます。脱水すると尿に回す水の量が少なくなり、さらに尿毒症は進行します。それを防ぐために水を体に入れるのです。具体的には、点滴か皮下補液を行います。点滴は血管に直接水分を入れます。皮下補液は、皮膚の下に水を入れ、一旦水ぶくれのように皮膚の下に水を貯めます。皮膚の下の水は、ゆっくりと毛細血管に吸収されていき、点滴をするのに近い効果が期待できます。皮下に入れる水は、ラクトリンゲル液やアセトリンゲル液が選択されます。

水のコントロールは腎臓にとって非常に重要です。水が多いと血圧が上がります。高血圧は腎臓の組織を損傷し、腎機能の低下が進行します。高血圧をコントロールするのも、とても重要です。しかし、ペットの血圧測定は、あまり行われてきませんでした。なぜなら、血圧を測る間、じっとしていたり、大人しく手を出していてくれるペットは少ないですし、診察台の上で極度に緊張し、心拍数も上がった状態だと、正確な血圧を測ることが難しいからです。それでも、最近は比較的簡単に測定できる血圧計が開発され、徐々にペットの血圧が測られるようになりました。

当院でも血圧をよく測ります。特に皮下補液をしている猫や犬ではよく測定します。高血圧の影響は、腎臓だけでなく目や心臓、血管に及びます。高血圧の動物では上の血圧が200を超えることも珍しいことではありません。もし血圧が常時上が200を超える場合は、血圧を下げるお薬を処方します。血圧を毎回測り、その個体ごとの基準値を出します。その基準より高くなってるかどうかで、高血圧かどうかを見ていくことになります。

人間では、高血圧が原因となるいろいろな病気があります。今後、ペットでも、もっともっと血圧が測定されるようになれば、診断や治療に新しい発見があるかもしれません。


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