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分析力を鍛えてくれたホリイのズンズン調査

数ヶ月前に、「コンサルタントやビジネスプロデューサーになる前にやっておいて良かったこと」という題材で、四季報丸暗記について書かせてもらいました。四季報丸暗記は、自分で気合を入れて始めたわけではなく、先輩に言われて嫌々始めたものでしたが、後々大きく役に立ちました。横河ヒューレットパッカードのSE時代であった28から29歳という、まだ脳みそが比較的若い頃に行った地道な作業は、後の私のビジネスキャリアの土台を作ってくれました。その後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社したわけですが、最初は、戦略コンサルの付加価値というものを、どのようにして出していくのかが、さっぱりわかりませんでした。SEであればシステム構築をして納入して、無事カットオーバー(当時、カットオーバーのことを葛藤する場。すなわち葛藤場と思っていた人がいました。カットオーバーでも葛藤場でも行動は同じですが・・・)して、検収書にサインもらって終わるわけですが、戦略コンサルティングの仕事は、なんだかよくわからないうちに始まり、3ヶ月で最終報告という報告書を出すわけです。それでもって、結構な金額をいただくわけですが、ドキュメント以外に製作物があるわけではありません。また当時30歳そこそこの私が、大企業の経営トップに戦略の話なんぞできるわけもなく、どうして付加価値をつけるのかについては、全く謎でした。すべてが謎のまま、うっかりBCGに入社してしまったので、当然悪戦苦闘し、大いに悩みました。当時、「山川さんは、どこかのMBAなんですか?」と聞かれたので、「いえ、私はMBAは持っていません」と答えたところ、「じゃぁ、スタンフォードとかMITのMSとか?」と聞かれたので、「それも無いです。普通にSEしてました」と答えたところ、「それで、よくBCGに入れましたね・・・僕は○○(当時の私でも知っているとても著名なアメリカの大学)です」と言われ、完全に頭が混乱。謎と不安は最高潮に達し、その後、深い沼に入っていきました。

暗中模索が続いていたある日のこと、ソフトウェア会社のコンサルティングをしているとき、当時上司であるU田さんから、「山川さん、先方の常務にXXの件について話を聞きに行ってくれ」と言われました。すぐに「それ無理っす!!!」という言葉が頭によぎりました。だいたいSE時代に、IT部門の課長とお話しすることが精一杯だったのに、なんで巨大企業の常務と話ができるんじゃ。U田さんは無茶なことを言うなぁ」と思いました。こちらの様子を見透かしていたのか、U田さんは私にこう言いました。「君は、限界を触るのが怖いんだろう。限界の壁は触ろうとすると不思議と遠くにいくもんだ」。

良いこと言うでは無いですか。身に染みます。この言葉は、私のビジネス人生にとって、心に烙印を押された言葉となっています。「自分が、球体の中に入っていると考えなさい。そこには、球の壁があるわけだが、その壁を触ろうとすると、壁が逃げていくので、どんどん球は大きくなる。そうして限界を広げていくんだよ」。と教えてくれました。ずぶの素人かつ丸腰で入社した私も、四季報丸暗記と、U田さんからのアドバイスでなんとか半年を乗り越えた頃...

さて、前置きが長くなりましたが、ちょうどその頃、「付加価値を出すって、なるほど、こういうことか!」と目から鱗が出たことがありました。それが、これ(↓)です。

私がBCGに入社したのは1995年10月。その当時から、週刊文春で、ホリイのずんずん調査なるコーナーが連載されていました。2011年まで16年間もの間、いろんな調査をしているのですが、これが生半可な調査ではありません。絶対に足で稼がなければ得られない調査なのです。しかも調査だけでなく示唆まで出してしまいます。後に一番衝撃を受けたのは、吉野家の牛丼の汁だく度合いを調べる調査です。これを154店舗回って、汁だく度合いを調べ分析するのですが、これぞ現場の分析と感嘆します。挙げ句の果てに、吉野家の本部に分析結果とデータを持参し、並しか頼んでないのに、汁だく度合いが店舗により大きく違うことを指摘しております。

こんなことは、吉野家の社長だって専務だって常務だって知らないかもしれない。それを現場を回って、調べまくるわけです。これか!これだったら俺でも頑張ればできる!。経営陣の知らないことは、現場で起きている事実である。これを集めることができるのは、外部の人間であり、体力もある若い我々だと言うことで、ホリイのずんずん調査を読み漁り、良い分析とは何かと言うことを試行錯誤したわけです。ホリイのずんずん調査は、2011年に終わってしまったけど、さまざまな調査のパターンは書籍となっており、今でも時々読み返します。読めば読むほど分析の面白さが湧いてくる名著です。

https://www.amazon.co.jp/ホリイのずんずん調査-かつて誰も調べなかった100の謎-堀井-憲一郎/dp/4163760008


なるほど、相手が知らなくて、知るべきことを探して捻り出してやることが、付加価値なんだなと気づいたのは、この時でした。大企業の経営者は、現場で起きていることはなかなかわかりません。わかったと思っていてもそれは、ずいぶん前のことだったりします。会社の部下は報告はしますが、客観的な報告は立場上やりにくいです。利害関係があるからです。

さて、当時30歳の私は、少年マガジンの金田一少年の事件簿と少年サンデーのMajorは読んでいましたが(精神的にきつかったので、唯一の心の救い)、週刊文春は読んでおりませんでした。先輩のI村さんが、ホリイのずんずん調査のような分析をやったら、結構盛り上がるよ!と張り紙を掲示板にしてくれていたので、初めて週刊文春を買って読んだのがきっかけです。当時は、全てにおいて同期の連中に遅れをとっていると自負していたので、なんでも素直にやっみると言うことで、それが良かったのかもしれません。

ホリイのずんずん調査、また週刊文春でもやってくれるといいのになぁ。そしたら買います。

若者が、クライアントの経営層に経験でものを語るのは難しいです。でも、足で稼いだ現場の情報とその分析では十分に対峙できるのです。ホリイのズンズン調査は、それを教えてくれるヒントが隠れています。

名著: ホリイのずんずん調査かつて誰も調べなかった100の謎。多くの学がある本です。でもプレミアムついて高すぎます。文藝春秋様、是非とも復刊をお願いします。

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