『月ノさんのノート』を拾って読んでみた感想
2021年7月某日。道端に落ちていたこんなノートを拾ったのである。
どうやら書いてある内容は2021年3月頃からのもののようだが、雨に濡れて文字が読めないなんて事はなく、状態はすこぶる良好だ。おそらく現役女子高生が書いた日記?のようなものだろうか。きっと日々の生々しい日常が描かれているのだろう。1%の罪悪感に苛まれながらも早速じっくりと読んでいこうと思う。
なんて茶番はさておき。
この書籍は今をときめく大人気現役高校生Vtuberの月ノ美兎(つきのみと)さんが「なんでもノート」の体で執筆されたエッセイ本である。
何を隠そう、私はこの方のファンである(ファンになった経緯やVtuberに関してのお話はまた改めてできたらと思う)。発売から時間は経ってしまったが、この度めでたくこのノートを拾い(購入し)、読むに至ったのである。
読後の素直な感想としては、とても面白かった。そう、とても面白かったのである。私は読後の勢いそのままにネット上の同じ意見を持つ者の感想を求めて検索し、彷徨った。しかし。感想を述べている人のなんと少ないこと(とても面白い感想もありましたが)。憤りを覚えた私は初めてインターネットの海に自分の文章を投稿することを試みたのである(ネタバレを含みますのでご容赦を)。
さて、私がこのノートの存在を知ったのは、月ノ美兎の配信内である。月ノ美兎の配信はyoutubeにて行われ、ゲーム配信、お絵描き配信、歌を歌う配信など多岐に渡るが、リスナーにも絶大な人気を誇るのが雑談配信である。雑談配信では、どこかに行った、何かをした、ということを中心とした体験を話す体験レポを軸に、取り止めのない話を配信するのだが、これが本当に面白い。この辺りを語りだすとキリがないので割愛するが、その雑談配信の中で、山籠りしてエッセイを書いてきた、ということでこのエッセイの情報が解禁された(私の知る限り)。
その配信では、山籠りそのものへの興奮、実際起きた面白い出来事などが語られたが、その一方、そもそも締め切りが間に合わずに山籠りするに至ったこと、山籠り中にはマネージャーが同行していたが内緒でWi-Fiに接続してサボっていたことなどを話していた。もちろんそのマイナスな話も含めて面白かったのだが、私はこのような事を考えた。「このエッセイは決して高いモチベーションで書かれたものばかりではないのだろうな」と。そう思ってしまったので、発売から4ヶ月と時間の経った今になってノートを拾うことになるのである。
なのだが、私はもっと早く読めばよかったと本当に後悔している。
なぜなら「月ノ美兎はそういう人間であり、そういう人間である面白さを十分に内包したものがこの月ノさんのノートであった」からだ。もっと言えば、月ノ美兎のような人間が生み出す上では色々な要素が最小公倍数のように掛け合わさった作品であると私は思う。
御託はいい。早速感想を語っていこうと思う。
まず、皆さんはVtuberというネット上の架空の存在が文字という媒体で我々の世界に登場することをどう感じたであろうか?
普段の配信では、知り得ぬ誰かが月ノ美兎というガワの中に入り、配信をしているが、この書籍では、月ノ美兎をガワとして使用している人間が月ノ美兎というファクターを通じて出力した本人の物語なのだ。つまり、配信ではどこまでいっても何を言っても月ノ美兎なのだが、この書籍という媒体においてはそれが逆転し、全ての記述は月ノ美兎というファクターを通じて出力される一人の人間の感性であり、物語なのである。私にはそこがグッと刺さったのだ。月ノ美兎を月ノ美兎たらしめるエッセンス、それこそに迫りたかったからだ。純度99%である(100%でない理由は読んだ人にはわかってもらえるだろう)。
特に好きだった話は、「ライン」の話である。
私が月ノ美兎を好きな理由はいくつもあるが、その中の一つはいつどの配信でも安心して楽しんで見れること、ラインギリギリのところのエンターテインメントをやってくれること、というのがある。個人的に配信を聞いていて、行き過ぎた発言や振る舞いをしてしまう配信者はいくら面白くても、大丈夫かな?という気持ちが出てきてしまい、気が散って配信に集中できなくなってしまうのだが、月ノ美兎にはそれがほとんどない。本書の「ライン」の話では、これを本人が自覚していること、また、意識してラインを置いていることが語られている。また、そういう風に振る舞っているということまで書かれているのだ。私のような性格のひねくれているファンにとってはまぁそうやろな、知ってた、なんて思うところであるが、そういう関係ってワクワクするよね、なんてことまで書かれているのである。
まさに私のような人間に向けられた言葉に感じられ、雷に打たれた心地になったのである。この書籍で月ノ美兎の全てを分かったつもりになるのは烏滸がましいが、分かったつもりになってこれからも応援していこうと心を決めたのであった。
長々と書いてしまったが、私が求めていた書籍レビューはこういうものだ。暑苦しかったら申し訳ない。拙い文章も許していただきたい。私が望むのは、これを読んで「そうそう、そうだよね!」とか「それはどうかな?」みたいに思ってもらう事であり、そして、興味を持ってノートを拾ってくれる人が一人でも多くなることだ。
最後に、月ノ美兎に中の人なんていませんよ?
月ノ美兎は月ノ美兎です( ^ω^ )<おっおっおっ♡
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