相談事例と天風哲学(事例18) 23
(太陽光発電装置工事業の例-18)
当社は太陽光発電装置の取り付け工事などを主体に行っている会社である。太陽光装置では国内でも有名メーカの代理店を早くから取得、県内を始め関東一円を市場としている。多い時の従業員は6~7名いたが、現在は社長と事務職1名となった。
仕事は忙しくかなりの注文を受けていたが、従業員の定着は悪く、仕事をこなすことができなくなり業績は悪化、金融機関への返済も滞り、リスケなどを要請するも断られ最終的に代位弁済となった。
社長は県外の出身で実家はかなりの商家、一流大学を出て埼玉県でスーパーマーケットのチェーン展開を行い、業界でもかなり有名な人物であった。しかし、このスーパー経営もうまくいかず破産となって県内へ、そこで新たな事業(太陽光発電装置の工事)を興したものである。
保証協会による代位弁済後、正式に破産の申し立てを行い管財人にもと整理している最中である。現在は、新たに自ら会社を興して社長になることはできないことから、知人を仮の社長として地元に帰り新たな会社を立ち上げようとしている。
ある意味、転んでもまた立ち上がろうとする意欲には敬服するが、なぜ失敗したかの反省もなく同じ繰り返しを行っているのは社長の資質として疑問が残る。
以前にも、全く同様な例を挙げたが、これらに共通するのは、一見積極的に見える意思決定であるが、無謀な行動であるといえる。社長一人だけの行動で他人に迷惑をかけなければ、何度でも同じ繰り返しをしても別に問題はないと思うが、その都度他人に迷惑をかけていては問題があると言わざるを得ない。
この社長は、自分の思い通りに運ばない場合は、その原因が従業員にあれば従業員を辞めさせ、下請け工事会社であれば下請け工事会社を打ち切り、はなはだしいのは一旦受注をしてもその後に気に食わないことがあれば契約破棄という自己中心型の考え方を通している。
例え、この社長が経営手法やノウハウを取得したとしても、一時的には業績は良くなるかもしれないが、結局は会社の衰退は免れないだろう。
逆に、人間的に問題はないが経営管理や経営商法が疎かになっている社長の方が、将来の成長度の可能性は大きい。したがって、社長たるものまずは人間をつくることが先決であり、また重要であることを悟らなければならない。
最後に天風氏の言葉を掲げる。
「事業をしている人、その心に信念があるか。どこまでも人間をつくれ、それからあとが経営であり、あるいはまた事業である」