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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿33

廃業も経営戦略として捉えよ!(33)
人生の歩みの中で「引き際の大切さ」を実感した方は少なくないだろう。会社経営においても「いけいけどんどん」が常にうまく動くことはなく、時には立ち止まり、あるいは一歩退いてから再び動くということが必要な時もある。
 
経営における終局の引き際が「廃業」である。廃業とは自ら会社経営をやめる自主的廃業、あるいは破産など法的処理のもとで廃業を行う方法などがある。
時代の動きは早く、ベストと思ってやっていることが、いつの間にか時代遅れになってしまうことなどは多くの方が経験しているのではないだろうか。気がついて手を打とうとするが、重症化してしまい手遅れになってしまうという例も多い。
 
社長自身の手腕もあるが、社長の手腕以外の原因で窮境状態に陥るというケースもある。社長は一生懸命努力したが再起不能という状態に陥ることは、これからさらに多くなることが予想できる。
問題は引き際のタイミングである。多くの企業の相談の中で手遅れになるケースが多いが、「何とかなる」、「何とかしなくては」・・・という思いが逆に重症化を招いている。
 
一方、このようなデリケートな相談にのる機関や専門家は意外に少ない。どうしようもなくなった場合に弁護士に相談し、破産などの手続きを行うケースが多いが、ほとんどの相談者は「破産を避けたい」、「法的処理はやりたくない」という思いが強い。
弁護士に相談する時点では手遅れの場合が多く、また、このようなデリケートな相談を身近な商工会や商工会議所には持ち込みにくく、手遅れになるケースも多い。
 
多くの方が望む廃業の仕方は、自主的に廃業することで、法的処理(破産など)ではない。しかも、廃業を望む多くの会社が赤字で債務超過、さらに資金繰り悪化の状態にあるという共通点もある。
一方、相談者が望む処理手法は債務放棄(債権放棄)などで借入額や未払金、買掛金などを軽減し、できるだけ資金的負担を軽くした方法を考えている。
 
しかし、実態はどうか、このような虫の良い話は皆無であるといっても過言ではない。そうであるから廃業はいかに早く手を打つかが重要となる。
経営は意思決定の連続というが、会社経営の最後の判断も早めの意思決定が必要であることを認識してほしい。傷が浅いうちに判断できれば、ソフトランディングに持ち込める確率は高まる。しかし、手遅れになれば破産の道が待っている。
 
その意味でも廃業は経営における戦略の一環とした位置づけで考えるべきである。経営を行ううえで、商品は、価格は、市場は、人材は・・・と戦略的な考え方に基づいて将来の方向性を決めているが、同様に会社の先行きを展望した時に廃業という道を検討することも不思議な話ではない。
前向きな手法のみが経営戦略ではなく、時には「引く」、「退く」という引き際も戦略の一環として大いに検討していくべきである。引き際の戦略は、むしろ前向きの戦略よりも勇気と決断と忍耐と積極性が必要かもしれない。
 
人間は一度「死ぬ」と再び生き返ることはできないが、会社や事業の「死」は事業体の消滅であって、経営者は再度挑戦することは可能である。
すなわち、経営者ある社長個人の「死」を意味するのではなく、人間として復活する新たなスタートにつくことを意味している。敗北ではなく新たなスタートであるという前向きな考え方に立つことが必要である。
ゆえに、廃業を検討し、議論し、判断し、意思決定することは、早めな判断と行動が重要となり、前進することよりもさらに難しく、経営戦略の最後の判断となることを承知しておく必要がある。

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