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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 24

経営を自然から学ぶ(24)
 パナソニックの創業者である松下幸之助氏は経営の神様といわれている。経営とは「自然の理」という考え方・哲学が重要であると説いている。
松下氏の言葉を拝借すれば、「水は高いところから低いところに流れる」、「夜が明ければ必ず朝が来る」・・・これらはすべて自然の流れであり、覆すことはできない。
会社経営も同じであり、「仕入れたら、その原価に適正利益を加えて販売する」、「販売したならば(売掛金)必ず回収する」・・・このような行動は経営における自然の理であり、自然に逆らわず経営することの重要性を強調している。単純にみれば「当たり前のことを当たり前にやる」ことなのである。 
 現実の経営においても自然の理に逆らった行動を行うことで窮境の状態に陥った会社をみかけること度々である。「売上高だけに専念し、肝心の売掛金回収を怠って不良債権になった例」、「競合会社に競り勝つため原価を無視して安価で受注する例」、「売れない商品を必要以上に在庫している例」などである。
 
また、経営の根幹たる理念や考え方を社長自身理解しているか否かの点も重要である。経営の根幹を「自然の理」から解釈すると、「なぜ会社を経営するのか」、「なぜ商売をするのか」の意義が根底にある。
具体的には各企業が行っている製造活動、商品・サービスの提供活動、あるいは情報提供など、要はこれらの活動を通して雇用創出や社会貢献など社会全般に役に立ち、あるいは貢献する・・・などが挙げられる。これらが会社経営における「自然の理」である。
 
しかし、このような考え方をすればすべての会社は儲かり繁盛するかといえば、必ずしもそうはいかない。ここに「競争」や「環境変化」が働き、必要としない会社、あるいは必要とするがそれ以上の価値や貢献している競合相手があれば淘汰されていくのが「自然の理」でもある。
 
具体的にみれば、本人あるいは自らの会社が社会に役立つ貢献することをやっていても、その同業者(競合社)が当社以上の努力によって低価格あるいは高付加価値を生み出す。あるいは接客力やアフターサービスなどで上回り、総合力が勝っていれば当社は必要ないことになる。
 
我々を取り巻く自然界は川、海、山あるいは植物や動物、昆虫、微生物までも互いに協調・協力して生活している点に意義がある。
それが最近の状況をみると人間のエゴで二酸化炭素をばらまき自然界を破棄している。このような状態が続けば何れ自然界は消滅しても不自然ではない。 
一方、これを経営面からみると経済界という枠組みで考えられる。経済界においては日々の経済活動によって価値が生み出され、これを享受することで人間生活をより高次なものへと導いている。
特に価値を生み出しているのは、企業や個人が知恵や知識、技術等を用いて切磋琢磨しながら日々努力している結果である。
経営はこれらの価値を効果的、かつ大量に生み出すための手法の一つといえよう。しかし、これらの活動において経済界のルールに従うことが基本となり、このルールこそ経済界の「自然の理」なのである。
いくら価値を増大できたとしても、他の企業などの邪魔をしたり、あるいは社会に背くような行動をすれば「自然の理」に反することになる。
 
経営とは自らの努力によって価値を生み出し社会や経済界に役立つ役割を担い、同時に現在よりも未来に向かって少しでもよりよい社会を築く基礎の一部にならなくてはならない。企業のトップである社長は、常に「自然の理」に沿った経営や行動を行っていく必要があり、そこに売上高や利益のみの追及ではなく、社会に役立つことの重要性がある。
 
したがって、「儲けよう、儲けようとする・・・行動や考え方」、「自分の会社さえ良ければ・・・という考え方」、「他人や他社を犠牲にしたり陥れようとする行為・・・」などは、すべて「自然の理」に反した行動や考え方となる。
天風氏は、人間は何のために生まれてきたのかの問いに対し、明確に「進化と向上」と言っており、これは会社の存在目的も同意味と言える。また、「事業をしている人、世の中に貢献するという目的があるか。事業に成功するには、自分の欲望を離れて何かを考え、そのとおりに実行することである」とも話されている。
 
 

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