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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿14-2
社長の備えるべき要件(14-2)
(※ 中小企業の社長が備えるべき人格とスキル、そして行動力)
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上図をみていただきたい。自転車を動かすためには運転する人が必要で、その運転者がどこに行くかの方向を決め、ペダルを踏み動かす。そして動き出せば転ばないように前輪と後輪のバランスをとる。
これではじめて安定感が生まれ、順調に目的に向かうことができる。しかし、無風で晴れの日ばかりではない。雨に日も風の日もあり、道路がデコボコの場所もあり、パンクすることもあり、重い荷物を積むときも、また時には転倒するときもあるかもしれない。これらの判断と行動はすべて運転者が行わなければならない。
これを経営に置きかえてみると、自転車が会社、運転者は社長、前輪が社長の「人格」(人間力)、後輪が社長の「スキル」(経営力)、そしてペタルを踏む力が社長の「行動力」、ハンドルが「判断力」といえる。運転者たる社長は目的に到着するまですべての責任と権限を持つことになる。
そして車体フレームや各部品などは強固で安心・安全、それに耐久性に優れ、デコボコの道や風、雨に耐えられる構造でなければならない。
企業に例えれば、いわゆる景気の良い時も、悪い時も安定的に走れる構造になっていること。そして、社長の運転技術である経営力や管理力が重要となり、さらに商品や従業員が優秀で設備投資なども盤石で、しかも借り入れもなく内部留保も十分な状態にあることが安定運転の条件となる。
まず前輪は「人格」(人間力)であるが、これは運転者である社長の資質の問題である。後輪と違い前輪の大きな役割は方向性を決定づけることができることである。前輪でこれから向かう方向を明確にすることで後輪も続き、車体全体がその方向に向かうことになる。
会社に例えれば、第一に何のためにどこに行こうとしているかを明確にしなければならない。すなわち、当社の目的・目標は何か、誰を相手に、何を提供しようとしているのか、そのための社長の考え方や会社の方向性が何か、さらに目的地まで幾日かかるのかの日程計画、さらには装備や人(人材)、そして金(資金)も準備しなければならない。
具体的には、社長が考えるべき理念・コンセプト、方針、目標、ターゲット、市場、そして事業計画の策定などが挙げられる。
第二に必要なのは後輪を担う「スキル」(経営力)である。後輪は駆動を担う役割を持ち、運転者(社長)が自らの力でペタル漕いで力を伝達しなければならない。いわゆる社長の力である意思決定、判断力、行動力を伝え、内外経営環境である会社の特徴、人材力、財務力、組織、そして強みや弱みを把握する。
そのうえで社長の知識や経営技術、経営ノウハウなどを駆使して経営力、管理力を発揮していくのである。運転が始まれば、舵取りがうまく、少々の悪天候や障害物にも負けない気力や知識、技術が必要となる。
第三が「行動力」や「判断力」である。理屈ではわかっているが、行動に移せない社長はかなり多い。「事業計画を立てる」、「資金繰り管理を行う」、「営業に出かける」、「今日までに仕事をやる」・・・など、実行しなければならないことが山ほどあるが、面倒とか、明日があるからなど何らかの理由をつけて後回しする傾向である。
今、すぐに実行する行動力こそが社長に必要な力なのである。そして予期せぬ方向に向かっていると判断したなら、すみやかに方向転換をしなければならない。これが判断力である。