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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 20

将来に夢を持つ社長ほどその実現は早い(20)
私の経験で恐縮であるが、今から約40数年前にミニスーパーを経営していた当時、経営コンサルタントになりたいという強い願望を抱いた時がある。業界の人たちとの会話、あるいは新聞記事や雑誌の話題、本屋の陳列台でコンサルタントに関する本の前に立っている姿など…、自分に関心ある事柄には意識せず積極的に近づいていたことを振り返って思う。
 
要は自分の興味深い事柄、自分の希望、願望などには、自ら必然的にしかも積極的に近づいていたものだとつくづく感じるものである。ましてや社長が我が社の発展につながる大きな夢を描けば、その実現に向かって無意識の中で行動や思いが強く働くのも当然である。
 
しかも、この夢が大きければ大きいほど近づこうとする力も大きくなる。したがって将来の夢を描くことは夢の実現に一歩近づくことになる。特に重要なのは会社の盛衰についても同じようなことがいえるからである。
会社の将来が明るく希望に満ちていなければ働く意欲はわかない。見知らぬトンネルに入り、出口の明かりが見えなければ不安になるのと同じように、当社の向かうべき方向に夢も希望もなければ会社の将来に不安を抱くだろう。
 
社長の肩には従業員、その家族、そして取引先など多くの利害関係者が存在している。従業員が「この会社と一生を共にしたい」、「この社長と最後まで働き続けたい」など、このような思いを持たせるには社長には将来に対する夢と希望がなければならない。しかも、それが従業員に伝わらなければ実現しない。
 
企業経営において、理念やコンセプトの重要性は言うまでもないが、経営戦略といわれる長期展望(長期計画)についてしっかりと描き、思い入れを強くすれば実現に近づくことも当然であろう。しかし、中小規模会社の現実をみると、中長期計画を立てている企業は少なく、決算期が近づいた際や決算後に来年度の事業計画(短期計画)を作成する程度の企業が多いといえる。
 
重要なのは、当社の10年、20年後のあるべき姿を描くことであり、できればより詳細に具体的に、しかも文章の形で残すことが必要である。具体的には「〇〇社の長期計画書」などとし、全社員の前で発表会などを実施、全社員挙げて共有化することである。
企業の規模にもよるが、できれば全社員が参加して策定させることが望ましい。小規模会社の場合は社長自らが策定し社員に説明し、必要に応じ意見を取り組んで策定することも必要である。いずれにしても計画書の骨格となる部分は社長の考え方が中心となり、社長の思い入れが浸透していなければならない。また、時には会議中にこの計画書を再読し、社長自らが説明し、常に社長と社員が共有化していかねばならない。
 
「社員は社長の背中をみている」といわれているが、会社のトップである社長が何を考え、何に向かって、何をやろうとしているのかを興味深く観察しているものである。ゆえに従業員は、社長が会社の方向性や夢を描き常に語りかけてくれれば、将来への希望は膨らみこの会社に入社して良かったと思うのは当然である。逆に社長が将来に対する夢も希望もなければ会社の将来に対し不安を持つのは当然である。
 特にまじめで優秀な従業員ほど社長の言動などよくキャッチし、将来への不安を感じたなら真っ先に離れていくという現象が起こるのもこのことから言えるであろう。
 
長期計画に描く内容としては、10年先、20年先のあるべき姿を明確にしながら、それを達成しようとするアクションプランを加える。具体的には誰が、いつまでに、何を行うのか、そして実現のために必要な資金も合わせて準備する必要がある。このアクションプランはできるかぎり従業員の参加、意見や考え方を取り入れていくことである。
 
計画策定後に必ず実行すべきことは、計画と実際との差異を分析し、計画の修正や実行の仕方などを工夫していくことである。この結果を必ず次の計画に反映させてより実現の高い内容に修正していくことが基本となる。
 
天風氏は「初心一念を貫徹する強い心が成功させる」と言っている。まず、創業時や新たな年度を迎えるなど事業を開始する時こそ、新たな決意が必要なのである。
 
 


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