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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿(最終版1)

天風哲学と社長の心構え① 下線付き太字は天風著書からの引用部分)

経営者からの相談を受けて40年、その相談件数は約3万件以上になるのではないかと推測する。その間、見事に改善した企業、衰退していった企業、そして破産など廃業していった企業など…。それぞれの方向に進んだ企業にはそれなりの原因や要因があったはずである。

仮に窮境状態にある多くの社長は、その原因を自分自身以外にあると考えている方が多い。確かに現在に至った理由には企業内で起きた影響(内部環境)や競合や景気動向などの外部環境の影響によるものがあり、中でも外部環境の変化によるものは決して少なくない。 

しかし、40年の相談結果を踏まえて言えば、会社の動向に大きな影響を与えたのは社長自身の心構えや考え方、あるいは経営に対する哲学など、社長自身の資質が大きな要因となっていることが多いと感じる。そして、成功している企業、あるいは窮境状態にある企業と社長の資質(考え方や行動)には大きな関係があるともいえる。

この点を天風氏の哲学とその企業経営の良し悪しとの関係から述べてみたい。まず、はじめに事業がうまくいくかどうかは、社長自身の人間としての生き方や考え方に大きく影響されるということである。 

天風氏は、「人間は進化と向上に順応するために生まれてきた」、「生活目標にすべきことは、常に「人の世のためになることをする」である。人の喜びをわが喜ぶにするという心持が必要である」。さらに、「真の人生幸福というものは、自己を本位とする相対的意識の中から生ずるものではなく、つねに、正心誠意(本心良心)という調和享容の絶対意識の中からのみ生じる」…と。 

同じように「お互い人間の心が、自分以外の他の人々の幸福を望む気持ちで、一つに結ばれない限り、広い意味における、人々の共同幸福は望んでも事実化されないのである」
要は、人は「何のために」、「何をするために」、あるいは「生きる目的は何か」などを明確に自覚しなければならないことを意味している。 

同様に会社や事業体の根幹についても、その目的や意義を明確に自覚することが必要である。天風氏は、まず事業者に対しては、「自分の成功や幸福のことよりも、他人の成功や幸福を願い、かつそれに向けてまい進していけば、いつの間にか、自分も成功と幸福を掌中におさめることが出来るのです」…と。 

さらに、「事業をしている人、世の中に貢献するという目的があるか。事業に成功するには、自分の欲望を離れて何かを考え、そのとおりに実行することである」、そして「事業をしている人、利欲に迷ってはないか、名聞にとらわれていないか、何となしに、野心的な欲望にとらわれてはいないか、それらを当たり前だと思っていないか。自分のしている事業で、世のために貢献をするというのが、最後の目的なければならない」とも言っており、要は自身の利益や幸福よりも自分以外のことを優先しなければならないことを諭している。 

一般的に多くの経営者は、経営に関する管理、技術、手法、戦略などハウツーなどに対してはかなり熱心に取り組む傾向にあるが、社長自身の人としての心構えなどは希薄になっている。天風氏の次のような言葉からもこの点の重要性が伺える。「どんなに事業方針が確立していようと、また経営方針が完備していようと、一番のトップに立っている人々のパーソナリティーに多少なりとも欠陥があったらどうなるだろうか。健康、それから運命に対する扱いがしっかりできる人間でなかったら、会長だとか社長だとかいったところで、それぞれの名前だけにすぎない。それがために、「どこまでも人間をつくれ。それから後が経営であり、あるいはまた事業である」ということを私、しょっちゅう言ってるんです」と…。 

また、「自分の欲望のみでもって、しようとしたことは、そうめったに成功するものではない。事業に成功するのは、自分が欲望から離れて、何かを考えたときに、また、その考えたことを実行したときに成功するのだ。同じ事業家でも、欲の固まりでやる者と、「この仕事で、世の中の人のために、本当に役立つものを提供しよう」という気持ちでやるのとでは、その結果が全然違うのである」

要は自分や自社の利益や欲望を優先するのではなく、この点から離れ自分以外の幸福や成長、成功などを使命や目的にした時こそ真の事業となるのであろう。

 

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