天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 18
プラス思考で積極的であること(18)
私の経験から言うと、「ちょっと無茶かな」と思うほど積極的に行動している社長の方が経営はうまく行っている。また「石橋を叩いても渡らない」など慎重かつ消極的な社長は頭の中に考え方や案が浮かんでいても、いつまで経っても行動に移さないで足踏み状態でいる。しかも挙句の果てに、他人がうまく行ったと聞くとあれは自分が考えていたものだ…と後悔している。
天風氏は「肉体は心から神経系統を伝わって影響する、常に積極的であらねばならない」と、そして日本電産永守社長(現会長)は「運命は自分の言葉と行動で決まる、信じる通りになるのが人生」と言っている。
特に“ことば”や“態度”は「人を動かす力がある」と言われているが、言動が消極的か積極的かによって、その人の生き様や経営の良し悪しに影響することは間違いない。ましてや“ことば”は自ら発するもので、自分自身に“ことば”を通して確信や自信を植え付けているようなものでもある。
しかも日々の人生の中で常に言葉や態度を通して日常生活が行われているので、時間が経てば経つほど、その言葉や態度はより強固な結果として現れてくる。
また、自分の言葉によって自分自身が鼓舞され、奮い立って行動に移すようなことは良く起きるものである。もし、その時に「だめだ」、「できない」などのマイナスな言葉を発すれば、鼓舞されることはなく、できないとかあきらめ感が強まり言葉とおりの状態に陥ることは間違いないだろう。
逆に「できる」、「必ず成功する」などの積極的な言葉を発すれば、おのずと態度に現れそのような行動に向かおうとするものである。言葉は態度や行動の変化を促す原動力となることは間違いなく、自分の思うような方向に近づくきっかけとなる。
何か事を起こそうとするとき、失敗を恐れたり、あるいは躊躇し、いつまで経っても行動に移せないでいるケースがある。しかも、過去に「行動に移したら失敗した」などの経験があると、二度と行動を起こす気にはなれないものである。結局、消極的な考え方や行動が失敗を招く原因となったかもしれない。
一方、一度や二度の失敗では諦めず、果敢に挑戦した結果、成功をつかみ取ったという人も多く見かける。プラス思考は「イケイケどんどん」で無謀な行動と思われるが、計画的で裏づけのある行動はうまくいくものである。
それでは積極的であれば、すべてがうまくいくかといえば「ノー」である。経営における意思決定は慎重かつ確実性が重要となる。ただ、良いアイデァや素晴らしい戦略的な発想が浮かんだとしても、実行に移さなければ「宝の持ち腐れ」となる。ここで重要なのはある程度中身を検討し、十分に勝ち目があるとの判断を下せれば積極的に行動に移すべきである。
しかし、積極的な行動すべてが成功しているわけではなく、積極的であるが故に失敗も数も多く経験することになる。ただ、その多くの失敗が次の意思決定の判断の際に大いに役立つことも否定できない。失敗の経験が次の意思決定の重要な判断をもたらすものである。したがって、プラス思考で積極的な人は、マイナス思考で消極的な人と比べても成功する結果は数段に高くなる。
過去経験から判断する将来の見通しの意思決定の多くは失敗に終わっていることが多い。すなわち、経営は過去を振り返るのではなく、新たな未来に向かって動いている。まだ見ぬ明日への戦略は過去の経験からでは得られぬ時代になったといえよう。
また、「経営は意思決定の連続である」ともいえる。したがって意思決定を判断する機会を多く積むことで、判断基準の的確さを増幅させ、成功へと導くとも可能となる。その意味でも積極的な行動を心がけ、失敗してもひるまず恐れず、常にプラス思考で前に前に進むことが必要なのである。