シェイクスピアの『十二夜』を「聖闘士星矢」で脳内キャスティングしたら楽しかった話
※世に数多存在する『十二夜』に関する文章の中で最もしょうもない内容。そのくせ3700字越えと長い。やや腐り気味。
ネタバレだらけなので、「まっさらな気持ちで『十二夜』を読みたい!」という人は決して読まないでください。
間違っても卒論の参考にしようとしないでください。卒論で困っている人は今すぐ画面を閉じて指導教授のオフィスに走りましょう。
・なぜ『十二夜』と「聖闘士星矢」を混ぜてしまったのか
2006年。大学院生の私は暇を持て余していた。一応、英米文学を専攻していたため、シェイクスピアを読もうと思い立った。名高い小田島雄志訳で。(原文にトライしろよ)
当時、なんのきっかけだったのか、脳内が今日同様「聖闘士星矢祭り」だったらしい。定期的に来るものなのか。ていうかマンガ持ってなかったのにどういうわけで祭りを開催してしまっていたのか。
とにかく脳内を聖闘士星矢のキャラ、とりわけ黄金聖闘士たちが闊歩している状態だったため、手に取った『十二夜』も自然と(!?)彼らに演じてもらうことになった。
この遊びが非常に楽しかったため、今一度やってみた。その報告が本記事である。
学園ものマンガでよくあるじゃないですか? 学園祭とかで劇をやるの。定番は「白雪姫」「シンデレラ」。
惜しいことに「聖闘士星矢」に学園祭はない。しかし黄金聖闘士たちが住まうサンクチュアリは劇の本場・ギリシャにある。彼らが演劇にチャレンジすることになんの違和感もない。
また、シェイクスピアの時代には女性の役も少年俳優が演じていた。
……男ばかりでも行けるやろ!! 180センチ越えの大男ばっかだけどな!
さてシェイクスピアの『十二夜』である。深窓のご令嬢、公爵、男装の麗人、騎士、道化といった多彩なキャラクターがが織りなすドタバタラブコメ。
あなただったら(別に「星矢」じゃなくても)どの役に誰を当てますか……??
(!!!以下、ネタバレだらけ!!!
カップリングにこだわりがある人のために、誰と誰がくっつくのか、明記しています)
(引用は『十二夜』ウィリアム・シェイクスピア/小田島雄志訳 白水Uブックスから)
(こんな記事にリンクをつけてしまって申し訳ない)
・キャスト表
茶ぶどうによるキャスト表は以下である。個人的趣味によるものなので怒らないでほしい。
公爵:サガ
ヴァイオラ:ムウ
オリヴィア:カミュ
トービー:デスマスク
マライア:アフロディーテ
マルヴォーリオ:シュラ
アンドルー:ミロ
道化:貴鬼
セバスチャン:シオン
アントーニオ:童虎
・キャスティングの理由
(※個人の独断と偏見です)
【オーシーノー公爵:サガ】
「われわれ男は、いくらいばったところで気まぐれな浮気もの、惚れるのも早いが飽きるのも早い、…」(p.61-62)
オリヴィアお嬢様に求婚中の公爵。身分の高い人だし、とりあえずサガかな……と思って読んでいったら、ちゃんと滝涙を流してくれた。サガらしくて感動した。教皇の衣装を着ていただこう。
【ヴァイオラ:ムウ】
「まさか私の男ぶりに惑わされたのでは。」(p.47)
本作のヒロイン。男装の麗人、ということでムウ様一択。男でも女でも上手に演じてくれそう。
海難事故にあって兄と生き別れになった。性別を偽り、公爵の小姓として仕えるが、公爵に惚れてしまう。オリヴィアお嬢様と公爵の仲介役となるが、オリヴィアに惚れられてしまうというたいへん楽しい役。最後はきっちり公爵と結ばれる。
公爵とヴァイオラはメインカップルなので、ここのキャスティングで地雷を踏まないように注意だ。
(ちなみに私は別にサガムウ派でもサガカミュ派でもない)
【オリヴィア:カミュ】
「いかが、いまのところこれが私の肖像画。悪くないできばえでしょう?」(p.38)
亡くなったお兄様をしのんで喪に服し、お屋敷に引きこもっている深窓の令嬢。これはカミュしかいない。公爵の求婚を断り続ける気位の高さ・冷たさ・貞淑さは氷の聖闘士しか演じられない。下記noteでさんざんうざ語りした「女神・聖母」感あふれるカミュがいい。二の腕の素敵なわが師カミュだが、ここはぴっちり長袖をご着用いただく。スカートは床丈。
ついでにお兄様は思い出の中にしかいないので、絵面だけアイザックの写真を提供してもらう。
ヴァイオラとのシーンが多い。美形二人の図をたっぷり眺めたい。
https://note.com/tyabudou/n/n4edb939d3a26
【サー・トービー:デスマスク】
「地獄の入り口でもついていくぜ、悪知恵の魔女のあとなら。」(p.79)
オリヴィアの叔父。屋敷に居候している。昼間から飲んだくれている小悪党。快楽主義者。マライア、道化と結託して執事のマルヴォーリオをコケにする。
どうしてもデスマスクにしか見えない。はまり役だろう。でっちゃんはきっと演技もうまいし愉快にやってくれそう。
【マライア:アフロディーテ】
「とめどないばかよ。」(p.94)
オリヴィアの召使。お嬢様そっくりの筆跡でマルヴォーリオにいたずらを仕掛け、おおいにサー・トービーを喜ばせる。そのお手柄により(?)トービーの女房に。美人(?)でちゃきちゃきしていて悪知恵がはたらいて……デスマスクとの悪友関係的にもアフロディーテがぴったりだろう。ノリノリで悪ふざけしてほしい。
【マルヴォーリオ:シュラ】
オリヴィア邸の堅物執事。サー・トービー一味のせいでさんざんな目にあう、劇中でもっとも不憫な人。しかつめらしい顔をして登場するのが似合いそうなシュラにお願いする。本当にかわいそうな役なので申し訳ない。
【アンドルー:ミロ】
「お若えの、きさまがいかなる身分のものかは知らんけど、卑怯者だってことはたしかなり」(p.106)
一番キャスティングに苦労した。「聖闘士星矢」には脳筋は多数いるものの、ヘタレはいないのだ。ヘタレでアホの子だがイケメン騎士で、オリヴィアに惚れている。ここはカミュとの縁からミロに一肌脱いでもらうことにしよう。ミロも賢い感じはしないが(失礼)、アンドルーのお花畑かげんはさすがに地ではいけないだろうから、そこは演技してもらう。ミロは楽しいことが好きそうなのでやってくれるだろう。衣装は騎士なんだから黄金聖衣のままでよし。まぶしっ
どうしてもミロカミュが見たい方は、「セバスチャン:ミロ」「アンドルー:アイオリア」にする手もあるだろう。ただ、アイオリアはなぜか演技がうまい気がしない(失礼)。
【道化:貴鬼】
「雨は毎日降るものさ。」(p.161)
これも難しかった。王侯貴族を楽しませる道化は、「阿呆」であると同時にたいした利口者なのだ。このタイプも「聖闘士星矢」には乏しい。ヒロイン・ムウ様との縁で、かわいい貴鬼を召喚。いたずらっ子だしちょうどいいだろう。師弟そろって大活躍だ。
本来大人の役だろうが、子どもが演じることで独特の味が出そう。(このままではキャスト全員が180センチ越えになってしまうし……)
【セバスチャン:シオン】
「やる気があるなら相手になるぞ、剣を抜け。」(p.123)
ヴァイオラそっくりの双子の兄、とくればムウ様とセットでシオンしかいないだろう。オリヴィアお嬢様は最終的にこのお兄ちゃんと結婚することになる。シオンとカミュのカップリングはレアだろうが、これは劇なので……シオン様もノリノリで演じてくださるでしょう。アンドルーをやっつけるアクションシーンも楽しんでくださるでしょう。カーテンコールではムウ様と二人で貴鬼を挟んでご挨拶してほしい。
なお、「双子」だからといって「セバスチャン/ヴァイオラ」を「サガ/カノン」のセットにすると絵面的に厳しい(個人の意見です)。
【アントーニオ:童虎】
「いや、かまうものか、おれはすっかり惚れたんだ。」(p.46)
遭難していたセバスチャンを救出した男。セバスチャンに熱烈な友情を捧げる。武勇の士でもある。ときたら童虎しかいない。
・終わりに 脳内キャスティングのすすめ
前述したように、シェイクスピアの生きていた時代は女性役も男の子が演じていた。彼らはどのくらい美人に化けたのだろうか。ヴァイオラとオリヴィアの初対面のやり取りなどから想像するに、けっこう厚化粧だったのかもしれない。ヴァイオラがオリヴィアを「並ぶものなき美人」とたたえるくだりも、当時は笑いどころだった可能性がある。
男性を女役に当ててみることで、少し当時の観客の気分になることができるかもしれない(何をもっともらしいことを言おうとしているのか)。
「シェイクスピアなんて小難しい古典でしょ?」と思われるかもしれない。が、『十二夜』を開けばすぐにそれがただの思い込みでしかなかったとわかるだろう。
話は単純明快(少なくとも表面上は)、すぐ読める長さ。そして怒涛のダジャレ。翻訳は何種類もある。比較して好きなものを探すのもおもしろいだろう。
好きなキャラで脳内キャスティングして自分だけの『十二夜』を読むのは間違いなく楽しい。マンガでも、小説でも、映画でも、あるいはジャニーズグループでもできる遊びだ。(現実の人間の場合、個人の脳内にとどめておく必要があるだろうが。)ぜひ皆さんもやってみてください。