「聖闘士星矢」のジャンプコミックスと文庫版はどう違うのか?~白羊宮のムウを巡る冒険~
「聖闘士星矢」原作を買いなおす、と決めた際、2022年現在で最も手軽な選択肢は「文庫版(全15巻)」であった。これは近所のBook Offで速攻手に入った。ちょっぴり小さいが、紙の質もいいし、物語を楽しむには必要十分……そう思っていた。「ムウ様 vs パピヨンの絵がない!!」ということに気づくまでは。
私が初めて全巻そろえたマンガ「聖闘士星矢」。小学校1~2年生のときだった。親もこんな血なまぐさいのをよく許していたものである。アニメは十二宮編には間に合わず、ポセイドン編を見た覚えがある。
あの頃ダントツいちばん好きだったのがアリエスのムウだった。ムウ様。今でも「様」をつけてお呼びしたくなる。「麗人」「雅やか」「たおやか」「色っぽい」……言葉で言い尽くせないほどお美しいムウ様に、当時の私はただただ見とれていた。なんて素敵なお方なの……?
ハーデス十二宮編の始まり、それまで傍観者だったムウ様がにわかに戦いはじめたときは夢を見ているのかと思った。シュラのエクスカリバーがムウ様を危うく一太刀……の一連のシーンに「はわわ…」と顔を赤くしていた。(前から切ってるのに後ろでくくった髪紐がほどける、あのミラクルなシーン。)いわゆる「性癖を狂わされた」というヤツだ。
そうやって飽かずムウ様を眺め続けていたためか。文庫版にて削除されているページに気づいてしまった。
「ムウ vs パピヨン」。左上にパピヨン、右下にムウ様。ちょーかっこいい1枚絵。これが、どこにもない!
そこにないものに気づくとは我ながらあっぱれ。もう30年以上前のことなのに……「3つ子の魂百まで」とはよく言ったものである(たぶん違う)。まあ、注意深いファンならその前に気づける箇所が他にもあっただろうが。
ハーデス十二宮編はムウ様のためにめちゃくちゃ読み返したせいか、ぽろぽろ、「違う!」が見つかった。デスマスクの「P!」が抹消されている。「マンモスあわれな~」の箇所も変えられている。老師が「やっピー」とか言ってたのも消されている! 私が思っていたより、文庫版は単行本と違うのかもしれない……
こうなっては仕方がない。失われた青春の〇〇ページを取り戻すには、ジャンプコミックス(以下JC)を入手するしかない……!
こうして私はJC全28巻を紙でそろえたのだった。もちろん中古。北の大地からのお取り寄せとなった。
目的の絵はすぐに見つかった。JC20巻冒頭、「パピヨン vs アリエス」。なんと、目次と本編の間の1枚だった。パピヨン登場前にこのページがあるとか、ネタバレもいいとこである。最初はさなぎスタートなのに。現代なら許されないな。
登場人物紹介の前にある巻頭ページも文庫版には収録されていないようだ。つまり、JC1冊につき1~2枚(構成による?)、文庫版から落ちている。「vs パピヨン」の他にも、単行本のみ収録の美麗なムウ様に再会することができた。思い切って買ってよかった。
しかし残念なこともあった。もしかしたらあったかも?と期待した各話のサブタイトルはJCの時点で落とされていた。すなわち、ジャンプ本誌の扉絵の多くが未収録となっている、ということだ。少年ジャンプの存在すら知らなかった小学生の私は、単行本に載っている話数なんてものに全く無頓着だったから、サブタイトルが少ないことに気づきもしなかったが……
識者によれば、ジャンプ連載時とJCではこんなもんじゃないレベルの差異がいくつもあるという。生き馬の目を抜く過酷さで知られる少年ジャンプ、読者人気最優先でその場その場のノリを重視して毎週突っ走れば、つじつまの合わない部分が多々出てくるのはむしろ当然だろう。それらはきっちりJCで修正されてしまった。(根本的なツッコミどころの数々はそのままに……)
「連載時そのままを読みたい」。原典過激派の私はそんな遠大な野望を抱きかけた。しかし冷静に考えれば今の私にはほぼ不可能だろう。当時のジャンプはとんでもないプレミア価格で取引されているし、たとえお金がどうにかなったとて、少年ジャンプ数百冊??をどこに保管できるというのか。これを本気で完遂しようとするなら常人としての生活を諦めるくらいの覚悟がいるだろう。仏典を求めて天竺へ旅立つくらいの。
ということで、まずは穏当に、文庫版とJCを並べて開き、読み始めてみた。
まともな研究者なら、JC1巻~28巻/文庫版1巻~15巻をすべて同じ熱意で隈なく調査するだろう。しかし私のコレは趣味でしかない。どこかに報告するわけでもない。(結局noteに書いているけれども。)なので、1巻と、あとは好きな場面をじっくり比較しようと思う。ムウ様とわが師カミュが活躍する巻はマストだ。わーい並べると壮観だね!!
(比較結果の一部は近日発表……かも? 全然網羅的ではないので誰もしないと思うけど期待しないでくださいね☆)