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[18]パイロットまで、あと2年。

「わりぃ、遅れたわ」
「遅いわ!」
ブン太は愛想良く返してくれるが
詩音の目が痛い。
イタリアンの席にはすでに俺以外揃っている。

恥ずかしい。
へこへこ頭を下げると大丈夫ですよ〜とか、
気にしないで〜と言った声は聞こえるが
詩音以外の女性に目を向けることができない。
何とか自分の席に座って正面を向く。

詩音が目の前にくる。
睨んでいる。怖い。
綺麗な格好なのに台無しだ。

そういえば、俺はそのままだからTシャツだ。
隣に目をやる。
ブン太は紺色のジャケットを
かっちりしすぎない程度に着こなしている。
東川はどこにでもあるような
カレッジTシャツを着ている。

「バカも揃ったし自己紹介から始めよ♪」
詩音が聞いたことないトーンで喋る。
「じゃあまずは男性陣からよろしく」
こっちにバトンが回る。
隅っこの俺に視線が集まる。

「ええっと、あっと、さっきは遅れてすみません。
氏名前橋。大分出身。趣味は読書です。」
緊張で全く頭が回らない。
自衛隊式の淡白な挨拶になってしまった。
詩音の隣にいるロングヘアの子も苦笑いしてる。

「みなさんこんばんは。
今日は来てくれてありがとう。
僕は渡辺といいます。
最近の趣味はカフェ巡りかな。
福岡ははじめだから
オススメを教えてくれると嬉しいな」
続いてブン太が嘘を並べ立てる。
俺は吹き出しそうになって、
詩音は呆れた目を向けている。
しかし周囲からは
良い感じに拍手をもらっている。

「ぼ、ぼくは東川と申します。
東北出身でこ、今年19歳になりました。
趣味は飛行機です。
どうぞよろしくお願いいたします。」
ははは〜。女性陣の顔も引きつっている。

「まぁこんなもんね。
私の紹介は別に良いわよね。」
「えぇ〜。うっちゃんのこと教えてよ〜」
「そうだよ〜聞きたいよ〜」
女性陣がキャピキャピ話しているのを眺める。
うっちゃんって詩音のことか?

「そうだよ〜教えてよ〜うっちゃ〜ん」
ブン太がさっそく乗っかる。
「っっ!!」
すごい顔で詩音がブン太を睨む。
聞いてはいけない、
呼んではならない呼び方だったようだ。
「ま、そこまでいうんならね。
詩音で〜す。19歳、福岡出身。」
俺が「雑ぅ!」といつも通りのツッコミを返す。
まあこいつのことは知ってるしいいわ、次。

「こんばんは♪田宮です🎵
みんなからは
“たーちゃん”って呼ばれてます🎵
趣味はお菓子作りです。」
この子がキャピキャピした正体のようだ。
語尾が上がって音符が見える。
詩音が言うと爆笑ものだが
女子大生になると華がある。
もう一人は小林さんだった。
みんな同い年で彼女はライブ好き。
陽キャばかりだ。
一体どんな話題が好きなんだ?
ゲームも本も知っていても
会話が噛み合うとは到底思えない。

「みなさんパイロットなんですよね?
最近はどんな訓練したんですか?」
小林さんが気を利かせて話題を振ってくれる。
「ええそうなんですよ。
この間は、海で泳ぎましたね。
ええ、ざっと3時間ほど。」
えぇ〜すごい🎵かっこいい♪
なんて声が聞こえるが
俺たちはパイロットじゃないし
なんで海泳いでんだってなるだろ。
そんなこんなで自衛隊の話題で一山あった。
俺も何とか会話に
「あーたしかに!」
とか
「そうなんですよ」
みたいな感じで一応参加した。
基本はブン太と女子3名で進行して
ブン太と小林さんが何かと話題が合うみたく、
何だか良い感じ、、、な気がした。

そろそろ終わりという時間になって
ブン太が酒を注文しだした。
そういえばあいつ20歳だったな。

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