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[15]パイロットまで、あと2年。

寮の中にある当直室には
教官が常に1名待機している。
今回は航空力学を担当している教官だ。

「外出証の受領に参りました」
「はいよー」

基本的に階級のない防衛省雇用の教官は優しい。
というか、一般人の感覚を持っている。

ブン太と愉快な仲間たちで当直室に入る。
外出時間を記録して外出証を身分証明書に挟む。
これを基地の門を守る隊員に見せることで
基地の外に出ることができる。

行動計画を準備しているから
門限ギリギリの日曜20時まで。
たっぷり1泊2日間外出できる。

基地から最寄りの駅まで車だとおよそ20分。
車の免許も持っているが
運転を禁止されているので
移動手段は限られる。
今回は4人いることもあって
タクシーを割り勘することにした。
東川がタクシーを基地の隣に呼んでくれている。

俺たち航空自衛隊航空学生御用達の
「チャレンジタクシー」である。
お年寄りでも新しいタクシードライバーとして
「チャレンジ」できるという意味らしいが
たまにかなり酷い運転の老人もいる。
安いが値段相応の会社だ。

「防府駅までお願いします。」

東川が運転手に声をかけると車が動き出す。
今日のドライバーは50代の女性。
チャキチャキ喋る人でさっそく
助手席に座った詩音にしゃべりかける。

「あら〜。こんなに男を引き連れてどこ行くの?」
「福岡まで行くんです。
私の同級生を紹介しようと思って。」
「まぁ!楽しそうね〜。
今日は天気もいいから、デートにはぴったりね。」
「そうですね。」
「うちの息子はもう社会人になっちゃったけど、
孫がそろそろ生まれるのよ」
「そうなんですね。おめでとうございます」

といった感じで常に喋っている。
防府駅までは田舎道が続く。
喫茶店ルノワールを過ぎると
ちらほら人家が続いて、たまにコンビニ。
あとは一面、青空を反射して
キラキラ光る田んぼが続く。
空を赤い飛行機が飛ぶ。
大分にもあるファミレスを見つけた。
駅までスムーズだった。

出発まで時間がある。
基地で朝ごはんを抜いたのでパンを買う。

ウィンナーパンを食べる俺をブン太が見つめる。
「お前水分抜いとけよ」
「いや試合じゃあるまいし」
「これは戦だぞ」
「俺は食うからな、万全の体制で望まにゃならん」
「馬鹿馬鹿しい」
詩音も甘そうなパンを食べている。
「ところで詩音、どんな子が来るんだ?」
「同じ部活の同級生よ」
「ってこと水泳部か!かっはぁ!
いいねぇいいねぇ」
変態みたいなリアクションだ。
「いっとくけど全員いい子達だから、
下手なことしたら許さないから。」
「もちろんだとも。ご趣味はなんですか?
僕は飛行機を飛ばすことですかね、
あっはっはっは」
バカだ。
「バカね。みんな私の知り合いなんだから、
嘘ついたらバレるわよ。
おかしなことも笑い話として伝えてるし」
「おかしなこと?」
「そ、前橋が海で〇〇したこととかね」

うぉい!!それ言うか?普通?
そんな顔をすると詩音がほくそ笑む。
「ふふふ。楽しみね。大根役者さん」

今日の合コンは終わりだ。


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