知らない人んち(仮)第2話noteクリエイター脚本
お疲れ様です。「知らない人んち(仮)」演出・Pの太田です。表題の件を掲載いたします。第3話以降の脚本作りのヒントになれば、と思っております。
今回の演出をしたのは片山監督。僕がステキだと思った演出は、シーン11の回想シーンへの流し方です。TVerなどでご覧頂けます。僕はバラエティ番組が長く、ドラマの演出はまだまだ勉強中なので大変勉強になりました。
脚本はこの長さで18分です。
0 (回想)リビング(一週間前)※シーン14の最後だけみせる
PCモニターを見るアク・キャン・ジェミ
きいろの声「えー来週は、『知らない人んち泊まってみた!』という企画をやってみたいと思いまーす!」
3 人「(食い入るように動画を見て)……」
ア ク「たしかめないと…」
1. 男子部屋
アク、モニターを見つめている。
モニター内では引き続き、きいろとキャンが和やかに話している。
ジェミの声「……どう?」
アク、振り向くとジェミが立っている。
ア ク「キャンに言わせたセリフ…信じきってるように見える」
ジェミ「やっぱり、きいろは覚えてないんじゃない?…事件のこと」
ア ク「……」
× × ×
フラッシュ。
花瓶がスローモーションで割れる。
× × ×
アクの顔、割れた花瓶とフェードして、事件を思い出しているような鬼気迫る表情。
ア ク「いや、計画は最後まで実行する…」
モニターには女子部屋が。
2. 女子部屋
きいろとキャンが雑談している。
と、きいろが何かに気がつく。
きいろ「ん? なんか聞こえません?」
キャン「……えっ、なに聞こえないけど」
かすかに、引っ掻くような音が聞こえる。
きいろ「ほら、絶対してますって」
とスマホのカメラを回し、部屋を出ていくきいろ。
慌ててキャンも立ち上がる。
3. 2階・廊下
きいろ、廊下にゆっくり出てくる。
きいろ「……」
あたりを見回している。
カリカリと音がして思わず、アイフォンを暗室の方にふる。
きいろ「! こっちだ……」
キャン「いや、そっちは…」
きいろ「アクさんが何か連れてきて、暗室に入れちゃったのかも…」
キャン「…え…?」
きいろが意を決して暗室の方へ進もうとしたところで、目の前に扉が!
男子部屋から、アクとジェミが出てきた。
アク「どうしました…?」
きいろ「!あっ、いや(アクの後ろのジェミが気になり)あの、なんか、音が…」
一 同「・・・・」
カリカリと言う音は下から聞こえる
きいろ「あれ? …ここじゃない…」
きいろ、急いで階段を下っていく。
4. 1階・階段下〜廊下
降りてくるきいろ、後ろから3人。
音は玄関の方から鳴っている。
きいろ「あそこです……」
ドアに近づくきいろ。おそるおそるドアを開けると…
そこには、一人の男(竹田)が立っていた!
きいろ「うわあああ!」
竹 田「あ。あの、インターホンこわれてるみたいで」
きいろ「ぎゃあああ!!!」
聞かずに、ドアを閉めようとするきいろ。
竹 田「ちょ…(指をさしてドアを持ち)ドアは閉めないっ!」
5. リビング
4人と竹田がテーブルを囲んでいる。キャリーケースがそばにある。無言の時間。アクたちは竹田が話すのを待っているが、竹田は時おり懐かしそうにきいろを見る。きいろ待ちきれず
きいろ「すいません、この方は……?」
竹 田「(急に思い出し)僕はたけ…」
ア ク「入居希望者の、たけちんですか?」
竹 田「あ……たけちんです。シェアハウス入居希望です」
きいろ「えっ、入居希望者!?」
竹 田「ええ……いい仲間といい恋を探しにきました」
きいろ「テラスハウスみたいですね…」
竹 田「みんなと過ごして、本当の自分を見つけたいと思います」
きいろ「結構な年齢ですよね」
竹 田「……」
竹田、きいろに顔を近づけて。
竹 田「……僕のこと覚えてます?」
きいろ「えっ……」
アク・ジェミ・キャン「……」
竹 田「ほら……」
きいろ「ええっ……」
竹 田「ほんとに覚えてない?」
きいろ「はい……すみません」
竹 田「ほんとに?」
きいろ「……はい、どちらさま」
竹 田「いやだなー、タイタニック観てないの?僕出てたじゃん。どうも。ディカプリオでございます。……はっはは」
きいろ「はい…?」
竹 田「笑わないんだなぁ。……じゃあこれは?」
竹田、変顔をする。
きいろ「ちょっと……なんなんですか」
竹 田「(関心して)笑わないんだなぁ……へ〜。(しみじみして)きれいだなぁ」
きいろ「は?」
竹 田「それに、大きいんだなあ」
竹田、頭をさわろうとするも、きいろ手を振り払う。
きいろ「ちょっとやめてください! みなさん、変な人には帰ってもらいましょう」
ジェミ「今夜はカレーね」
キャン「材料あったかな〜」
とスパイスを色々出し始めるキャン。
きいろ「えっ!受け入れるんですか!絶対キャンちゃんのお風呂とか、のぞきますよ?ジェミさんの使った食器とか舐め回しますよ!」
ア ク「(だけは終始、真剣にきいろを見ている)」
竹田、キャンが並べた調味料やスパイスを眺めて。(その中にニゲラがある)
竹 田「おお、いっぱいスパイスがありますね〜(いくつか手に取り)ほら、ほら、ほら。どれ入れます?」
きいろ「知らないですよ!」
竹 田「とりあえずこれ全部入れちゃおうか」
と、ドロップの缶を持ち上げてきいろに差し出す。(手で握っていてドロップの缶だとは見せない)
きいろ、缶をとりあげて。
きいろ「辛すぎて食べれませんって」
竹田、また変顔をしている。
きいろ「……」
竹 田「笑わないんだなぁ〜、そうかそうか……」
と、納得して、急に両手を広げる。
竹 田「ほら……おいで」
と急に真顔になる竹田。
きいろ「?」
かと思えば、今度は泣き顔になる竹田。
きいろ「感情どうなってるんですか!?」
竹 田「ほら!いいから!な!?」
きいろ「(ひく)」
ア ク「落ち着きましょう、部屋案内します」
キャン「(きいろに)ちょっとお部屋で、のんびりしといてくれる?」
と、半ば強引に竹田をつれて2階へ。
きいろ「…」
6. アクの部屋
扉を閉めるアク。中には竹田、ジェミ、キャン。
ア ク「…やり過ぎですよ」
竹 田「すまん…つい…」
ア ク「すぐ感情的になる、あなたの悪い癖です…竹田先生」
竹 田「……」
ジェミ「でもあの子、本当に覚えてないみたいね…私たちの事も、先生の事も、それにここが……」
× × × ×
フラッシュ。
看板のない玄関(現在)。
それが、「児童擁護施設ひまわりの家」の看板がかかった玄関(過去)に変わる。
ジェミ「自分がいた施設だってことも…」
× × × ×
竹 田「…だから言ったじゃないか」
7. キッチン(または和室。撮影スケ的に良き方で)
所在無さげにうろつくきいろ。
竹田N「あの子はまだ小さかったし、すぐに里親が見つかって出て行ったんだから、何も覚えてないって」
8. もとのアクの部屋
竹 田「当然、あの事だって…そもそも、本当に目撃してたかも分からないんだ」
一 同「……」
竹 田「だからもう…こんな事やめよう!? な!? いつまでも過去に縛られてるお前たち、俺、見てらんないんだよ! もう大丈夫だから、頼むから前に進んでくれよ!? な!?」
ア ク「大きい声出さないでくださいよ」
キャン「…縛られてるのは先生じゃん。だから施設閉所した後も、ここ住み続けてるんでしょ?」
竹 田「俺はいいんだよ…それだけの事をしたんだから。でもお前たちは…まだ子供だったんだ。何も背負う必要はないんだよ! なのに俺が隠したせいで…俺が…俺が間違ってたんだ…」
キャン・ジェミ「……」
ア ク「きいろの件が片づいたら、明日にはこの家、先生に返しますから。そうしたらもう僕らは会わない。この家は『知らない人んち』になる」
竹 田「……」
9. 和室
PCで何やら作業をしていたようなきいろ(YouTubeへアップロード)
きいろ、廊下の足音を聞き出て行く。
10. 玄関
きいろ出てきて、竹田が帰ろうとしているのを発見。アクもいて。
きいろ「あれ?」
竹 田「…さっきはすいません」
きいろ「いえ、あの、入居は?」
竹 田「なんか…不合格みたいです」
きいろ「え残念…」
竹 田「いえ、当然なんです、不合格で…」
きいろ「……?」
ドアの内鍵を見つめる竹田。
振り返り、再びきいろを見つめる竹田。
竹 田「(アクを気にしつつ)きいろさん、あの…」
きいろ「はい…?」
竹田、きいろの顔をみて、顔色が変わる。(きいろの表情はアクからもカメラからも見えない)
竹 田「(驚いたような顔で)……」
ア ク「じゃあ、お気をつけて」
竹 田「…はい、それでは…」
きいろ「(いつもの表情で)お気をつけてー」
出て行く竹田。ドアが閉まる。
11. 道端
号泣しながら歩いていく竹田。
竹 田「…ごめんな……ごめんな……!」
(※時間経過)
12. 風呂場
中から、シャーっというシャワー音と、きいろの鼻歌。
脱衣所には畳まれたきいろの服。(※可能なら、足元だけでもシャワーシーン)
キャンN「じゃあ、決まりでいいんだよね?」
13. リビング
アクとキャンが話している。
ア ク「ああ。まったく覚えていないみたいだ」
× × × ×
フラッシュ。
きいろと3人の対面。
アクN「俺たちに会っても」
× × × ×
家に来たきいろ。
アクN「この家にきても」
× × × ×
三輪車、うさぎ、カバンなど。
アクN「いつも使っていた物を見ても」
× × × ×
竹田とのシーン。
アクN「先生を前にしても」
× × × ×
ア ク「それらしい反応はまったくなかった」
ジェミが来て、
ジェミ「それに、これも」
と「ニゲテ」の紙を見せる。
キャン「普通に『ニゲテ』って読んでたもんね。この家でこれ見たら、私だったら絶対『ニゲラ』って読んじゃう」
× × × ×
回想(18年前)
キッチンにいる竹田。(子供の目線)
竹 田「よーし、今日はカレーにするぞ! あれ? あ、あったあった! ニゲラ! これ入れなきゃ始まんないからな!」
(いろんな香料の名前が手書きのラベルで貼ってある)
× × × ×
キャン、ニゲラを手に。
キャン「先生のお得意だったもんね、ニゲラカレー」
ア ク「…」
キャン「じゃあ、とりあえずきいろちゃんは…このまま帰すってことで?」
ア ク「そうだな」
ジェミ「出る頃かな。一応様子見てくる」
とジェミは出ていく。
キャン「…やっぱり、アクの考えすぎだったんだよ」
14. 回想(一週間前)
リビングに、アク、ジェミ、キャン。
キャン「久しぶりだねー。何年ぶり?」
ジェミ「なんでこんなとこで…。ここ今先生んちなんでしょ?」
ア ク「しばらく借りたんだ。これ見て」
とアク、パソコンを操作。
きいろの声「どうもー、人生いつも黄信号、ユーチューバーのきいろでーす」
キャン、ジェミ、驚く。
キャン「これ……!」
ア ク「ああ」
キャン「元気、だったんだ…」
ジェミ「……たしかに驚いたけど、今の時代ならありえるんじゃない? こんな再会も」
ア ク「…これ、いくつか動画がアップされてるんだけど、全部同じ場所から始まるんだ。どこだと思う?」
キャン、ジェミ「…?」
ア ク「(外を指指し)@@公園」
キャン、ジェミ「!」
ア ク「当時のことを覚えてない奴が、たまたまこんな近所で動画を撮るかな?」
きいろの声「えー来週は、『知らない人んち泊まってみた!』という企画をやってみたいと思いまーす!」
3 人「(食い入るように動画を見て)……」
ア ク「たしかめないと…」
15. もとのリビング
キャン「色々手間かけたけど、やっぱり、ただの偶然だったんだね。あそこ、結構メジャーな公園だし」
ア ク「…いや、偶然じゃないよ」
キャン「え?」
ア ク「でも、必然でもない。呼ぶとしたら、無意識、帰巣本能……運命」
キャン「…なんにしてもよかったよね。あの部屋、使わずに済んでさ」
アク「…」
とアクは部屋を出ていく。
16. 和室
髪を拭いているきいろ。
ジェミ「いいお湯だった?」
きいろのすぐ背後に立っているジェミ。
きいろ「!(驚いて)」
17. キッチン
片付けているキャン。香辛料の缶を手にした時、ある違和感を感じる。
キャン「…?」
× × × ×
フラッシュ。
きいろ、竹田から缶をとりあげて。
きいろ「辛すぎて食べれませんって」
× × × ×
キャン「なんで、これが辛いってわかったの…?」
その缶は、ドロップスの缶で。
蓋を開けて振ると、中からコショウが出てくる。
キャン「…」
18. アクの部屋
PCで、きいろのチャンネルに動画一覧にアクセスするアク。
ア ク「もうアップしてる…(少し笑って)いつのまに…」
再生する。
(♯0冒頭の映像)
ア ク「(微笑みながら)」
きいろ「@@@@…ちょっともう一回やっていいですか?@@@@」
ア ク「…?」
違和感を感じ、動画を停止。カーソルを戻してまた再生する。
きいろ「@@…ちょっともう一回やっていいですか」
また戻して再生。
きいろ「ちょっともう一回やっていいですか」
ア ク「誰か…いた…?」
19. ♯0冒頭の撮影現場(時間戻り)
きいろの自撮り映像。
きいろ「@@@…ちょっともう一回やっていいですか」
ときいろが腕を降ろした時、スマホにジェミが映り込む。
以降は客観カメラで。
ジェミ「…何回でもどうぞ」
きいろ「(微笑む)」
ジェミ「わたし、先に行ってるね」
きいろ「じゃあ…あとで」
去っていくジェミ。
その背を見送るきいろ。
20. アクの部屋
ア ク「誰が…?」
キャンがきて、
キャン「アク…!」
ア ク「…?」
21. 和室のカメラ映像
見つめ合うきいろとジェミ。
ジェミが何か囁くときいろはカメラ目線になり、カメラに向かって手を伸ばす。
スイッチが切られ、画面が黒味に。
続く