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買い手の関心事の推移の本質

「プリセールスエンジニアにおすすめの営業本」記事のソリューションセリングのところでも紹介しましたが、私は「買い手の関心事の推移」のグラフはとても重要だと思っています。その一方で、本の記述は少々不正確だとも思っており、今回の記事ではその件について話したいと思います。

改めて買い手の関心事の推移のグラフを出します。「ソリューションセリング」「ニューソリューションセリング」の両方で提示されており、重要性がうかがえます。

「ソリューションセリング」P178
「ニューソリューションセリング」P29

書籍によると、顧客の関心はフェーズによって異なるので、それに応じた説明をしましょう、ということになっています。例えば、顧客がリスクに関心を寄せ始めたとすると、それはいよいよ決断の時が近いので、リスクに丁寧に対応することで購入に至る、といった具合です。

ただ、立ち止まって考えてみてください。自身が買い物をする時、本当にいつもこの順番で関心が推移するでしょうか。あるいは、お客様からの商談を考えても、ニーズの話をせずにいきなり価格を聞かれることもしばしばあるのではないでしょうか。

ではこの論は見当違いかと言うと、そうでもないと思います。私はこれは、「顧客が幸せな購入をする時の関心事の移り変わり」と考えると良いと思っています。

まず、物の購入を考える時の関心事に大きく下記の四つがあることは確かだと思います。

  • ニーズ

  • ソリューション

  • 価格

  • リスク

次に、この四つのうちどの順番で関心が高まるかを考えてみましょう。車でも、高額な家電でもスマホでも良いのですが、自身が何かを購入しようとする例で考えるとわかりやすいです(あまり安い物だと参考にならないと思います)。

その商品の購入を検討するにあたって、いきなり導入リスクのことが気になったとしたら、そのリスクが埋められたとしても、なかなか購入には至らないのです。リスクがちょっと気になったとしても、それを上回るニーズとソリューション(今の困っていることが解決するとか、今できていない良いことができるようになりそうだとか)が思い浮かんで、初めて購入に結びつくのです。

一方、リスクをまったく考えずに購入すると、購入後に不幸になる可能性がでてきてしまいます。長期的に満足感を持てる購入では、費用やリスクもちゃんと吟味した上で納得して購入する形が好ましいと思います。ただ、あくまで自分にニーズがあり、それをソリューションで満たすことができる、と思ってから、コストやリスクを吟味する、という順番です。

高級な洋服や自動車などを買う時にも、商品そのものの魅力を感じてから値段を確認できる流れになっています。安い物ほど、はじめから価格がわかるようになっており、高いものほど価格がわかりにくいようになっていることがありますが、妥当性があると考えられます。

ひるがえって、販売側に立った時、まずは顧客に自分が気づいていない潜在的なものを含め、ニーズがあることを実感してもらうのが第一優先なのです。

買う立場は価格を気にするかもしれませんが、潜在的なニーズが掘り起こされていない段階で価格の話になってしまうと、費用対効果が低く見えてしまい、うまく行かない可能性が高まるのです。

ニーズを確認、掘り起こしできてから、次のステップとして、そのニーズはこのソリューションで満たせますよ、と行くのです。B2Cだと同時タイミングの場合もありますが、ソリューションの魅力をアピールするタイミングが早すぎると押し売りととられる可能性があるので、ニーズ→ソリューション、の順が好ましいのです。

最後に、購入に際してお客さんの気になるリスクがないか確認し、そのリスクは致命的ではありませんよ、という説明をしていくのです。これは一般消費者向けの即決購入するような商品では不要な場合もありますが、企業向けソリューションでは通常稟議プロセスに何人もの人が絡んできますし、日数も即日で決まる物ではありません。稟議プロセスの中で、「こういうリスクはどう考えているのか」と突っ込まれて、担当者がうまく答えられなくて稟議が流れる、という展開を避けるために、担当者自身の気になる点や、稟議プロセス全体を含めて突っ込まれる可能性がありそうな点を洗い出しておくのです。

まとめますと、すべてのお客が最初からこの順に関心事を持っている訳ではありませんが、ニーズ→ソリューション→リスクの順に関心を持ってもらう形で営業活動を進めることができれば、順調に契約に近づいていると考えられます。一方、顧客側のニーズをあまり高められていないのにソリューションの説明をする形になっている、とか、顧客のリスクについての質問に答える防戦一方の展開になっている、と感じたら、その商談は黄色信号にあると考えられます。

皆さんもこの順番を意識して、幸せな営業活動を進めていきましょう。

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